宮沢賢治のちから: 新書で入門 (新潮新書 280)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102806

感想・レビュー・書評

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  • 宮澤賢治本。五感・六感の持ち主。めっちゃストイック。お金持ちで、父との確執があって。妹が大好きで。作品の幻想的な世界観とはまた別の姿が知れて面白かった。弟の清六さんが売り出していたのは知らなかった。宮澤賢治のこと、いろいろ読んでみたい。

  • 学校の先輩から余った食料を送ってもらって、それをちびちびいただきながら生活をしているのですが、その箱の中に入っていた本です。読んでください、ということなのでしょう。ありがたく拝読させていただきました。

    持ち上げるでもなく、また単にdisるのでもなく、等身大の宮沢賢治と死後の賢治研究史を過不足なくコンパクトにまとめつつ、賢治の魅力を考察した新書です。思った以上に面白かったです。

    「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」という壮大で深い平和思想の持ち主であると同時に、徴兵検査に落ちたことをコンプレックスとして抱え続け、また国柱会に心酔して在京中は熱心に布教活動もしていたことは、やはり忘れてはならないなと読んでいて改めて思いました。賢治の中では矛盾しなかったんですね。そういう時代だったということも言えるでしょう。

    賢治の弟・清六が「生前はほとんど無名であった賢治の名を日本中に知らしめた名プロデューサー」(p.34)として「いつしか、賢治について発表するときは清六の許可を得なければならない、という暗黙のルールができていった」(p.36)程賢治研究に影響を与えていたことなど、私が初めて知ったことも沢山ありました。

  • この夏、花巻で羅須地人協会を訪れたことで手にした一冊。薄い新書に濃い宮澤賢治の一生が早送りで繰り広げられています。それがコマ落としの映像のようなユーモアを感じさせるのは常に熱狂し常に困惑し常に失敗をし続けたその動きの多動性にあるのかも。そう、圧倒的に現実に向き合うことを求め続かながらも一度も現実と噛み合うことのなかった「非現実的な現実志向」の矛盾。それは可笑しみでもあり哀しみでもあり苦しみでもあります。そんなイートーブのピーターパンの物語だからこそ時代を超え世代を超えファンタジーに成り得ているのだと思いました。そういう意味では同世代のウォルトディズニーとのシンクロニシティを指摘しているのには衝撃を覚えました。死後評価されるという点でヘンリーダーガーのアウトサイダーアートとの類似も個人的には感じました。

  • 農業への思い入れ、父親との関係、賢治の死後に弟がプロデューサー的役割を果たしたことなど、宮沢賢治の生涯が簡潔にまとめられている。

    中学卒業後は家業を手伝っていたが、父親に上級学校の受験を許可され、盛岡高等農林学校に合格した。口頭試問では、「日本の人口はますます増えて米が足りなくなる。よい米をたくさんとれるようにして国民生活を安定させたい」と答えた。

    農林学校を卒業後、7ヶ月間東京で過ごしたが、妹トシの病気を機に帰郷し、翌年春から農学校の教師として働き始めた。この4年間に「春と修羅」「注文の多い料理店」も出版している。

    30歳で教師を辞めると、トシが療養していた別宅を改装して羅須地人協会を大正15年に発足した。賢治はここで畑を耕したり、農業指導や肥料相談に出かけたりしながら、音楽の練習をしたり、子供たちに童話を聴かせたりした。

    32歳になった昭和3年、肺結核を発病したが、小康状態になった昭和6年春から化学肥料のセールスマンとして働き始めた。同年9月に東京に向かった際、両親に宛てた遺書をしたためたほど激しく発熱したが、かろうじて花巻の戻ると療養生活に入った。この間に「グスコーブドリの伝記」を発表。昭和8年9月に37歳で急性肺炎のため逝去した。

    賢治の死後、弟清六が原稿用紙や手帳、ノート類を整理・保管し、プロデューサー的役割を果たした。トランクの中から発見された「雨ニモマケズ」は、昭和9年に岩手日報に遺作として掲載された後、名作選などで活字化され、第二次大戦中の昭和17年には大政翼賛会の「詩歌翼賛」に、戦後は教科書に掲載され、日本人の心に刻まれるようになった。

  •  教科書で呼んだ「永訣の朝」が忘れられません。妹トシとの別れが、全世界へと押し広げられます。「わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ」という自己犠牲の果てにあるこの最後の1行に、幼いながらに震えたものでした。

     この本は宮沢賢治の入門書になっています。今書いた自己犠牲の精神の話から、超越した感覚、いわゆる「共感覚」について、それに「ほんとう」の探究についてなど、改めて宮沢賢治について知ることのできる内容です。

     原作を知らずとも、だれもが銀河を走る汽車の姿を浮かべることができる・・・それってすごいことですね。時代を経ても読み継がれる普遍性・・・他の作品も味わいたいと思います。

  • 269.2010.9.10

  • 宮沢賢治という人を知るための入門書として最適だろう。
    また、既に詳しく知っている人でもきっと新しい発見に出会える本だとも思える。

  • 読了後、なんだか一気に宮沢賢治に詳しくなったような気がしました。
    おもしろかった。


    >「ほんたう」に行きつくための「迷いの跡」こそが、彼の歩んだ道であった。

    なるほど。
    でもみんなそうじゃないかなあ。


    >猥談は大人の童話みたいなもので頭を休めるもの誰を憎むというわけでも、人を傷つけるというものでもなく、悪いものではない。性は自然の花だ 草や木や自然を書くようにエロのことを書きたい

    これ、いいですね。

  • [ 内容 ]
    愛すべきデクノボーの謎多き作品と生涯。
    フリーター、自分探し、パラサイトシングル、「シスコン」-。
    「雨ニモマケズ」や「銀河鉄道の夜」、あるいは絵本や教科書で出会った童話や詩を通じて、日本人にもっとも親しまれてきた作家の一人、宮沢賢治。
    その人生には、現代のこんなキーワードがあてはまる。
    この「愛すべきデクノボー」の謎多き人物像と作品世界を、若手女性研究者が、数々の意外なエピソードと特異な感覚のちからに注目しながら読み解いていく。

    [ 目次 ]
    1章 神童誕生-幼少時代(明治二十九~四十一年)
    2章 思春期の葛藤-盛岡中学校時代(明治四十二~大正三年)
    3章 光と影の青春-盛岡高等農林学校時代(大正四~九年)
    4章 奇跡の七ヶ月-家出、上京時代(大正十年)
    5章 変人か、天才か-花巻農学校教師時代(大正十一~十四年)
    6章 理想と現実に揺れて-羅須地人協会時代(大正十五~昭和三年)
    7章 死への助走-東北砕石工場技師時代(昭和四~八年)

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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 宮沢賢治の詩や童話はたいていの人が知っているが、その全体像はなかなか摑みにくい。

    新潮新書の「新書で入門」シリーズは初めて読んだが、簡潔で要を得ている。

    五感が鋭い人でしばしば共感覚をも思わせる。また第六感も優れていた。エピソードとしたら賢治の理想の女性像が妖精のような慈母のような人というところが興味深かった。

    賢治作品を改めて読んでみようかという気になった。

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