冤罪の軌跡―弘前大学教授夫人殺害事件 (新潮新書)

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著者 : 井上安正
  • 新潮社 (2011年1月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104022

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冤罪の軌跡―弘前大学教授夫人殺害事件 (新潮新書)の感想・レビュー・書評

  •  
    ── 井上 安正《冤罪の軌跡 ~ 弘前大学教授夫人殺害事件 20110115 新潮新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4106104024
     
     井上 安正 新聞記者 1944‥‥ 栃木          /菊池寛賞/報知新聞社顧問
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19490806
     弘前大学教授夫人殺し ~ 弘前事件・松永事件・那須事件 ~
     
    (20141030)
     

  • ルポとして非常によく書かれた新書だった。事実は小説よりもってことを実感できる作品で、司法の問題点を赤裸々に綴った、渾身の内容だと思う。冤罪と言えば、『それでも僕はやってない』って映画が頭に浮かぶけど、本当にやるせない気分でいっぱいになる。ただ、紙面の都合もあると思うけど、被害者の目線という部分がほとんど無いのが気にはなりました。

  •  戦後の混乱期に起きた殺人事件。真犯人は別にいたが,与市ゆかりの那須家の跡取り息子が逮捕され,冤罪で懲役刑を受ける。苦難に満ちた雪冤の経緯をたどる。
     冤罪被害者の那須隆は逮捕時25歳。再審により雪冤を果たしたのは53歳。ひどい話だ。警官志望だった隆は,近所で起こった殺人事件を知ると,捜査に協力しようといろいろ動くが,それで目をつけられてしまった。せつない…。
     否認事件だったようだが,鑑定結果がまずかった。鑑定人が曲者。「法医学の天皇」こと古畑種基博士が血痕鑑定をするのだが,当時の法医学は裁く側に協力する「国家学」。法医学の力で犯人を挙げることを誇りとしている鑑定人では,どうしてもバイアスがかかる。
     古畑の鑑定は,財田川事件,島田事件,松山事件など,多くの冤罪事件で死刑確定させている。いづれも再審で無罪。すごい天皇もいるものだ。昭和50年に白鳥決定が出るまで,再審開始への道はほとんど閉ざされていた。冤罪の証明ができずに終った事件も少なくないだろう。再審がいかに難しいかを表すには,「針の穴に駱駝を通すより難しい」という比喩が有名。なんでラクダ?聖書だろうか。「鼻の穴に大根」との関係はあるのかないのか。
     再審のきっかけは,真犯人が名乗り出たこと。別事件で何度も刑務所入ってる男で,出所後に元同囚に説得された。殺人事件はすでに時効が完成している。三島由紀夫の割腹が,真犯人の告白につながったというのは数奇。

  • 壇の浦で船上の敵の扇を弓で打ち落としたことで有名な那須与一の子孫が冤罪で14年も服役し仮出所後に再審で無実を勝ち取る。
    読んでて今回も警察のやらせじゃないかと証拠改ざんの話が出てくる。
    以前付いてなかったシャツにいきなり血痕が出てくるんだから一度警察に狙われたら逃げられないと思った。

    白鳥判決が出て再審請求が通りやすくなったと知った。
    「疑わしきは罰せず」を判決の主因にして欲しい。

  • この事件のことは知らなかった。

  • 殺人事件の犯人とされ、懲役刑が確定。刑を終えて、出所後、真犯人が自首。間違いなく冤罪だ。

    しかし、真犯人が名乗り出たのに、再審査が行われるのに3年近くかかる。国家システムの杜撰さが冤罪を助長している。

  • 私は犯罪マニアであるが、にもかかわらず(だからこそ、と言うべきか)冤罪なるものには懐疑的だった。
    というのも、いったいに冤罪被害者には前科前歴のある人が多く(捜査が暗礁に乗り上げた時、警察がまず行なうのが管内の不審者および前科者の洗い出しである以上、これはある意味当然の帰結ではある)、なまじそんな事例をさんざん読んでいたために、「冤罪」と聞いただけでどこか眉に唾をつけるようになってしまっていたのだ。くだんの事件はやっていないのかもしれないけど、でも「私たち一般市民」と同じ人種でもないんでしょ、と。
    その不明を、今深く恥じ入るものである。本件こそ、一点の曇りもなき無辜の人が、にもかかわらず謂れのない嫌疑を受けた空前絶後の——と信じたい——冤罪事件であった。

    期せずして本件の主人公となった青年は、かくて未曾有の悲劇に巻き込まれる。だが真に胸を打つのは悲劇そのものではなく、これに立ち向かう彼の魂の気高さである。
    一審無罪が控訴審で覆された絶望のどん底にあって、彼は「自暴自棄は何も生まない」「かくなる上は態度で示し、『こんな真面目な人が殺人などするはずがない』とわかってもらうのみだ」と思い決める。まったくの無実の罪で収監された刑務所での精勤ぶりは、異例の早さで仮釈放審査の対象となるほどだった。
    しかし彼はいつも、最後の最後でその審査に落第する。合格には不可欠な「改悛の情」の表明を、かたくなに拒み続けたからだ——「ここを出たさに、やってもいないことを『やった』とは言えない」とくり返して。
    現世利益(といっても、ムショ内なのでたかが知れている)が欲しい一心で、口先だけの「反省の弁」を弄する者などいくらでもいる。そんな今なおの現実を知ればこそ、この一節が重く響いた。

    しかもこの気高さは、ひとり彼のみにとどまらない。彼の家族は終始一貫して息子・同胞の無実を確信し、我が身を削って長い闘いを物心両面で支え続け、かつ理性と節度と団結を保って、針の筵の世間を毅然と生き抜いた。
    無実の罪で繋がれた檻と、「塀のない牢獄」の間で交わされた膨大な書簡は、互いを案じ、励まし鼓舞し合う言葉に満ちている。抑えた愛情と静かな闘志が格調高く綴られた父君からの手紙を読んで、逆説的な「この親にしてこの子あり」「血は争えぬ」と深い感慨を覚えた。

    最高裁までもつれた裁判。十有余年の服役生活。困難を極めた再審闘争に、結局は却下された国家賠償訴訟。傘寿を超えて長命し、巡り逢った良き伴侶にも先立たれた果て、妹さんの「あっぱれな人生でした」という呼びかけに一つ大きくうなずいて逝ったという彼。
    最期までのその気高さに尽きせぬ敬意を払うとともに、そう生きる以外の運命を彼から奪ってしまったことを、この国の民の一人として謝りたいと思う。

    2011/2/16読了

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冤罪の軌跡―弘前大学教授夫人殺害事件 (新潮新書)の作品紹介

警察のストーリー通りの調書と、疑惑の証拠鑑定によって、二五歳の青年は殺人犯にされてしまった。判決が確定し、服役も終えた後、真犯人が名乗り出てきたことで、時計の針は再び動き始めたのだが…司法の不条理に青年と家族はどのように立ち向かったのか。過ちはいつまで繰り返されるのか。戦後日本の冤罪事件の原点、弘前大学教授夫人殺害事件の顛末を新資料を盛り込んで描き出す。迫真のノンフィクション。

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