- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106104190
作品紹介・あらすじ
天下取りの野望を胸に秘め、将軍を女色で籠絡するなど、小説やドラマで典型的な悪役に描かれる柳沢吉保。しかし、史料を丹念に読み込むと、見えてくるのは意外な実像だった。将軍という最高権力者の周囲に絶えず渦巻く、追従、羨望、嫉妬、憎悪…。将軍の最も側近くで仕えた吉保にとっては、悪名は宿命だったのか。将軍とその側近の実像に迫りながら、「武」から「文」への転換期の政治と権力の姿を鮮やかに描き出す。
感想・レビュー・書評
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先日観た大河ドラマ「元禄太平記」総集編で柳沢吉保が気になり、その延長線で購入。(笑)
「悪役」イメージの「側用人」柳沢吉保の実像を、限られた史料の中からわかりやすく再現を試みる。
まず、「側用人」という制度としての役職は綱吉期にはまだなく、綱吉の側近として、綱吉の政治的意思を尊重し、また綱吉の日常空間を管轄する存在であったということである。時には綱吉へ何度も諫言したということだが、その権勢は綱吉との個人的関係のものであるため幕府政治への直接関与はできず、むしろ、「新興大名」として驕らないようにし、「慎み」をモットーとしたということである。
悪役イメージは、すでに綱吉亡き後から形作られ、現政権(家宣)が前政権(綱吉)を批判したのが、庶民向けの本や演劇も加わって後世にまで伝えられたということ。息子吉里のご落胤伝説もそうした創作世界での話ということだが、そうした史料は伝えられるものではなく、そこは少々歯切れが悪いように感じた。(笑)
綱吉小姓530石から、破格の15万余石の大名にまで上り詰めた吉保がいかに慎み深く、文武両道の藩構築を目指そうとも、所詮、綱吉最側近が故に、やっかみ半分、政治的宣伝半分として綱吉政権時の負の側面を全て背負い込む結果となったのであろうか。
公的な立場でないがため綱吉政権内部の関与のほどを知る詳しい史料は残されていないようで、柳沢家家老の薮田が遺した史料に大きく依拠している本書でもあり、いかに本人が慎み深くしていようとも、実際問題として「悪」の存在であったのかは今後気になるところだ。(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本当は悪いことばかりしていた人物ではないのに、後世に作られた悪いイメージがいかに影響力が大きいかを知る。
コントロールできないものの存在について、考えるべし。 -
いかにして悪名は作られたか。奸臣か忠臣か、資料を駆使してその実像に迫る。
側用人柳沢吉保のイメージは決して良いものではない。むしろダーティなイメージが強い。本書は、史料を駆使し、実像に迫ろうとした、新進気鋭の学者による意欲作である。
慎み深く「自らの出世のために、主人に媚びへつらい、良くないことを勧める者が多い」と語っていたというが、後世、自らがその様な悪名をつけられたのは皮肉な事である。
田沼意次もそうであるが、誤解に基づく批判が少なくない。また、一旦定着したイメージを払拭する事がいかに困難かが分かる。 -
やっぱり新潮新書ですよね!
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まず「柳沢吉保は側用人ではなかった?」でジャブを打ち、悪役伝説がどれだけ裏が取れないものばかりなのかを示す。
「行動を律する柳沢吉保」なフィクションが出てくる日はいつだろう。 -
(欲しい!)/新書