- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106104244
作品紹介・あらすじ
有色人種と弱者の期待を一身に背負って大統領となったオバマ。しかし底辺の人々は救われないままだ。「あそこの住民は簡単に人を殺す」「黒人はいつだって虫けらのように扱われる」「オバマは現実が見えていない」-物乞い、失業者、移民から元世界チャンプ、メジャーリーガーまで、筆者は丹念に、重苦しい現実と格闘する人々の声を拾って歩く。世界最大の階層社会で苦しむアメリカ人を描ききった渾身のルポ。
感想・レビュー・書評
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「チェンジ!」と叫んで2009年に黒人初のアメリカ大統領となったオバマさん。その2年後に現地を訪ね歩き、労働者や貧困層などの「庶民」への取材を重ねた著者が、彼らの不平不満を反映したルポルタージュ。つい最近まで「自由の国」「豊かな国」などと讃えられていたアメリカだが、新自由主義という経済原理に基づいた「金融工学」というイカサマが引き起こしたサブプライムローン問題やリーマンショックが庶民の生活を直撃、格差はますます拡大した。「何もしなかった大統領」は2017年に任期を終えたが、次に「何をするか分からない」トランプさんが大統領となったアメリカは一体どこに向かうのか? 元プロボクサーで、アメリカの高校教師の職歴も持つジャーナリストが、オバマ氏の遺した「負の遺産」を現地からレポートする。
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アメリカの格差社会。希望を託したオバマ政権もなかなか実りを上げられずに、本書タイトルのような状態。それでもなお、歴史が進歩したこと自体を肯定的に捉えるコメントが多いのは、その国の力なのかなと感じました。
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渡米前にアメリカを知ろう1思った以上にアメリカの状態は厳しい。産業構造の転換により、街の空洞化がすすみ、貧困とスラム化に拍車がかかり、ますます二極化が進んでいるように見えた。日本と比べると格差は間違いなく大きそうだ。
オバマに期待したのも、日本人が民主党に期待したフィーバーと同じ様ですね。時間がかかると分かっていても、短期的な結果を求めちゃうよね。 -
2008年に民主党候補から大統領に当選したオバマ。日本でも話題になり、大統領選挙中継から、翌年の就任演説まで同時通訳で見た。
彼の主張で特筆すべきなのが二点。
・国民皆保険制度の創設。
・全てのアメリカンに大学教育を。
つい先日、米最高裁にて国民皆保険制度、通称オバマケアが5:4の僅差にて合憲判決が出た。アメリカでは常に共和党が自由を、民主党が平等をという、民主主義における最も重要な価値観のどちらを優先させるべきか?というバランスの命題の中で政権交代が行われてきた。
前共和党出身大統領の子ブッシュはネオコンサバティブを推進し、その象徴であり帰結がリーマン・ショックと言われている。
その揺り戻しで、初の黒人大統領が誕生した時には遠くアメリカの事なのに、日本でも何かが起こるのではないか、世界が変わるような感動があった。
大学の卒論では「アメリカ合衆国憲法の分析における禁酒法の意義について」というタイトルで書いた。自由の制限に対して、世界の近代民主主義の旗手を標榜してるアメリカが憲法に自由を制限する条文を盛り込んだ事に大変興味があったからだ。 執筆過程で、アメリカ史の勉強もした。まさかそのアメリカが、大学卒業後4年程度で黒人大統領を自分たちのリーダーに選ぶとは思ってなかった。
そうして就任したオバマが、就任時と比べれば2%弱低いものの、現在アメリカでは8.2%もの高い失業率から抜けだせずに居る。各種経済指標では、どうも煮え切られない経済回復の中、ダウ平均はリーマン・ショック移行の高値を超えた。
どうも株を持っているような富裕層と、オバマが平等へと是正しようとした貧困層との乖離がまだまだ埋められずに居るらしい。 その貧困層にスポットを当てたルポ本がこの本だ。アメリカで記者をやっていた著者がスラム街やデンジャラススポットを訪問し、アメリカの現状を様々な人種や年齢の人にインタビューしたものだ。
オバマへの期待、オバマへの不安、ブッシュよりはまだマシ。様々な意見を、滞米生活の過去と交えて評論しつつ、アメリカ社会の現状がよく書けていて大変面白かった。是非興味のある方はオススメです。 -
アメリカのゲットーに住む人や移民に焦点を当てたルポ。
格差の激しい地域が多数存在し、どんな状況であるかを知った。と同時に行政はなにができるかと考えさせられた。
貧困→教育が受けられない→ギャング、犯罪…と単純化して考えても、最初に改善しなきゃならないのは貧困で、やはり景気をよくして仕事をできる人を増やしていくことが必要なのかなぁ。
事が根深く、根本的な解決にはまだまだ時間がかかる問題だ。 -
政権交代しても、日本もアメリカも、先行きの暗さは変わらないか
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アメリカの格差社会は日本の比ではないなと感じた。
エピローグで日本の画一教育の弊害をなげきつつも医療制度の充実さに安堵もし、それでもやっぱり子供にはアメリカンになって欲しいと願う筆者の矛盾する思いが綴られているのが興味深い。
単純には言えないがハイリスク・ハイリターンをとるかローリスク・ローリターンかの選択ということか。