中国のジレンマ日米のリスク (新潮新書 432)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104329

作品紹介・あらすじ

中国の成長がいつまで続くかを読み解く鍵は70年代の日本にある。環境破壊、格差拡大、資源不足…急激な経済成長が生み出した歪みは、その国に確実に影を落とすからだ。成長ゆえの破綻-彼らはこのジレンマを解消することはできるのか。その趨勢で日米はいかなるリスクを抱え、それをどう乗り切るのか。反中でも媚中でもないスタンスから、データに基づいて冷静に日米中・GDPトップ3の近未来を大胆に予測する。

感想・レビュー・書評

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  • 中国は民主主義の国ではない。
    日本でのバター不足やチーズの高騰は中国、ロシアなど新興国において乳製品に対する需要が急速に拡大したことが要因。

  • 中国は果たして日本と同じ道を歩むのか・・
    政治体制が違うからと言って、別の道を選んでも自爆する恐れはずっと残るはず。

  • 今後中国は、覇権国化/分裂化。どちらでも対応できる、柔軟な通商・外交戦略を持つべし。米国とは緊密な関係を維持すべし。

    感情ではなく、冷静に今後を読む。それが外交なんですね。

  • 日本やアメリカについての分析はわかりやすかったですし、高度成長期の日本と現在の中国を比較してい論じている部分も興味深く読みやすかったです。ただタイトルにある「中国のジレンマ」についてはあまり伝わってこない気がします。13億の人口を抱えていること、多民族国家であること、民主主義の政治体制でないことなどを不安定要素として挙げていますが、それだけではあまりにも立脚点として不十分ではないでしょうか。現在の中国を語るときには、やはり軍の存在、都市と農村、都市内部の格差の問題なども考慮すべき大きな問題だと思います。ただ、多くのチャイナ・ウォッチャーがそういった細かいことにとらわれすぎて結局何を言いたいのかわからない論著が多い中、これくらいすっきりと単純化してしまった方が、かえって本質をあぶり出すことができるのかも知れません。

  •  現在も世界経済の混迷は続いているし、国際政治においては日米中は三国志さながらのせめぎあいが続いているが、その背景を理解するのに本書は役に立つ良い本であると思った。
     本書は「なぜ中国は金融危機に強かったのか」において、中国が金融危機を早い段階で切り抜けられた理由について考察している。本書によれば、中国の「強さ」を決定づけている重要な要素は、大胆な政策発動への意思決定が一党独裁の元で迅速に行われていることであるとする。また経済的特徴として、巨額の対外純資産(1兆8219㌦)があり、家計の貯蓄率が高水準(28.6㌫)、健全な政府債務残高(GDP比18.6㌫)があるために金融危機に対するリスクが高くないことがあると指摘している。本書の中国の政治経済の分析は、専門的ではあるがわかりやすく納得がいくものであると感じた。
     また、本書では中国が陥りかけているジレンマとして、高成長を支えてきた膨大な資源の需給を指摘する。石油などのエネルギーをはじめ多くの資源の供給確保ができるかどうかの詳細な考察は説得力がある。
     本書では「世界経済が失速した最大の理由は、各国・地域の金融問題ではなく、米国が世界に対して創出している需要が落ち込んだからである」と主張している。米国が借金をして米国民は旺盛な消費と豊かな生活水準を維持している。中国をはじめとする各国は、多くの商品を輸出しながら、受け取ったドルを米国財務省証券で運用せざるを得ない。金融危機でこの歯車がうまく回らなくなったという世界経済の姿は現在の危機が一過性のものではない構造的なものであることを示している。基軸通貨をめぐる中国の布石として、本書は中国人民銀行の保有する金が2009年に従来の600㌧から1054㌧に増えたと指摘する。これからの世界は政治経済の覇権をめぐる米中の争いとなるのだろうか。
     本書では「5年後の中国、日本の行く道」として「シナリオ1、覇権国家への道」と「シナリオ2、分裂化への道」を予想しているが、中国指導部は分裂化に追い込まれるほどおろかではないと信じたい。しかし、中国が覇権国家となるまで進むとも思えない。世界は多極化するのではないだろうか。米中の狭間に地理的にも政治・経済的にも存在する日本としては、ぜひソフトランディングを期待したいものである。
     本書の「おわりに」で著者は2008年末の「年越し派遣村」を取り上げて「あの派遣村にいた人たちは・・・飲食業、介護、農業、観光業から少なからぬ求人があったにもかかわらず応募する人はほとんどいなかった・・・違和感を禁じえなかったのは筆者だけだろうか」と記載している。まったく評価できない意見だと思う。著者は明治大学卒業後証券会社に勤務し、現在はクレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジストだそうである。もし、日本で金融危機により著者が失業した場合に肉体労働へ転職ができるだろうか。著者は有能であろうからそういう選択肢以外の選択は容易だろうが、社会的弱者はそうはいかない。いくら困窮しても製造業の派遣をやっていたものがサービス業への転職はハードルが高いというのが一般的な認識である。思うに著者は知識はあるが人間に対する理解が弱いのだろうと感じた。やはり社会人たるものは「タフでなければ生きてはいけない、やさしくなれなければ生きている資格がない」(フィリップ・マーロウ)との価値観を持って欲しいものだと思う。著者のように本を出版するような社会的エリートである場合は特に。本書が良い本であるだけに、非情に残念な思いをもった。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、開架図書(1階) 請求記号:332//I14

  • 北京オリンピック後または上海万博後中国の不動産・株バブルは崩壊すると誰もが思っていた。しかし、かなりの偽りがあるとしても、リーマンショック以後、先進諸国が苦悩する中、中国では世界で唯一といっていいほどの高い経済成長率を実現した。
    後付でもかまわない。これに対して説明が必要があるだろう。中国がこれから直面する問題は、明確である。輸出頼みで稼いでいるGDPを消費するのは誰なのか。10億を越える人々の作った工業製品を誰が消費し、豊かになった10億人以上の人々の食料を誰が生産するのか。
    環境問題、労働争議、エネルギー需要の拡大とその価格の高騰、変動相場制への移行など1970年代の日本と正に同じ矛盾が中国を襲う。しかもそれは日本の10倍の規模で。
    共産党独裁の政権があと何年現在の中国を保てるのかをじっくり見てみよう。分裂か覇権国化か。この2つのビジョンを持つとき、明確に目の前に立っている大国がある。それは、アメリカである。
    アメリカとの歴史を日本と違う方法で解決できるかどうかに注目しよう。
    軍事か経済か文化か。いや全ての国力に注目しよう。
    日本はそこでどう振舞うのか。私は、すべての答えはやはり日本にあると思う。

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著者プロフィール

クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジスト。
1987年明治大学卒。和光証券、クレディ・リヨネ証券調査部長兼ストラテジストを経て、2000年12月、クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券(現クレディ・スイス証券)へ。
構造改革特区評価委員、規制・制度改革委員会委員などを歴任。WBS(テレビ東京系の報道番組ワールドビジネスサテライト)コメンテーターなども務める。
著書に『政策論争のデタラメ』(2009年9月、新潮新書)、『中国のジレンマ 日米のリスク』(2011年8月、同)、共著に『国際的マネーフローの研究』(2012年11月、中央経済社)。

「2017年 『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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