公安は誰をマークしているか (新潮新書 433)

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104336

感想・レビュー・書評

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  • 聞いたことはあるけど、知らなかった世界。
    昔話かと思ってたけど、今もしっかり存在する団体。
    「過激派」「赤軍」などの思想は今もあり、公安は密かに戦ってるんだなあ。
    日本人として、も少し危機感持っていかないとなあ

  • 公安組織とその実状がバランスよく記述されている。
    逆に言えば,内容が表面的で深みがあまりない。

    公安の導入本として読むといいと思う。

    公安に関する本は,本書が初めてなので,
    個人的には面白かった。

  • ・公安は、警視庁(東京都)の公安部・警備部と、警察本部警備部公安課・その直下の各警察署公安担当をまとめた総称である
    ・それとは別に、警察庁警備局があるり、表向きは警視庁公安部や全国道府県の警察本部公安課の予算配分や指揮系統を統率しているが、実態は警視庁公安部の力量が大きすぎて、彼らの発言権・決定権が強く、調整役といったほうが適している。
    ・刑事部が個人や組織の犯罪を取り締まる役割を担うのに対し、公安は国家を脅かす犯罪を取り締まることが主務とされる。テロ、スパイ、左翼の違法行為など。
    ・両者は時として捜査対象が重複することがあり、刑事部が完全な上下の指揮系統で動くものの、公安は同じ警察本部・警察署に包括されていながらも、本部長・所長の指示を無視して公安独自のダイレクトな指示を受けて動いている。
    ・そのため、情報や捜査方法が共有されず、刑事部とは犬猿の仲。刑事たちは、公安のことをハムと蔑称。
    ・警視庁公安部には、9つの課があるが、中でも公安総務課(公総)の課長は、公安部長・参次(二人)に次ぐナンバー4のポジションであり、他課の決裁権をも持つ。もちろんキャリア組。
    ・警視庁には、公安部とは別に警備局が独立してあるが、要人警備が主務。警衛課が天皇・皇族担当、警護課が政府要人や国賓担当。映画SPの岡田准一は警護課。道府県の県警本部や警察署では、警備部の中に公安課が内含。
    ・捜査対象の基本的情報を調べることを基調、日時の行動を監視することを行確、徹底監視することを視察、盗聴は秘聴、盗撮は秘撮、捜査は作業や業務、基調や視察で不審者の実態解明をする捜査を総称して解明作業という。
    ・対象の組織にスパイ協力者を養成するのが作業班・指導班と呼ばれるエリート秘密部隊。四係とか、ナカノ・サクラ・チヨダ・ゼロなどが隠語。実際の逮捕・摘発を行うのが事件班。
    ・スパイとまではいかないが、情報提供者を見つけ、感触を確かめることを面接、協力者にスパイ活動させることを運営、協力者と密会することを接触、予算上、面接費・運営費・接触費用などが割り当てられる。要は、協力者への報酬。
    ・公総は、もともとは共産党を取り締まる課。最近は、共産党の活動自体が下火になっていることから、組織維持のためにも様々な相手を操作対象としている。カルト宗教団体(アレフ、統一教会、パナウェーブ)、過激環境団体(グリーンピース、シーシェパード)、NHKや政財界・法曹界・マスコミまでマーク。選挙時には、刑事ニ課が不正取締にあたるが、公総でもマーク。実際に公総が共産党の公職選挙法違反を検挙したこともある。
    ・オウム事件では、公安一課と公総が解明・追跡作業に当たる。
    ・公安一課は、革労協(主流派/反主流派)・中核派・革マル派三大セクトを中心とする極左暴力集団(社会主義・共産主義革命を標榜して暴力活動を展開する集団)を担当。反米・反皇室・反戦のほか、成田空港反対など、過激な行為を繰り広げる。
    ・日本トロツキスト連盟+学生運動=日米安保全共闘運動。共産同は学生紛争の中心セクト。中でも最過激派だったのが赤軍派。公安から逃れようと、北朝鮮に渡ったのがよど号事件(日航機ハイジャック)。中東に渡ってパレスチナのテロ組織と国際テロ事件を繰り広げたのが日本赤軍。国内残党が京浜安保共闘に合流したのが、連合赤軍。あさま山荘事件は、彼らが実行。ダッカ事件(インドの日航機ハイジャック)も日本赤軍が赤軍メンバーの人質解放を目的として起こした事件。六人が解放され、海外逃亡。
    ・どのセクトも、高齢化や共産思想の後退化によって縮小傾向。公安一課も人員削減。
    ・公安二課は小規模過激派(諸派)と革マル担当。革マルは、警察無線の暗号読解と傍受・警察手帳の偽造などで、一時は警察最大の敵に。JR東日本や早稲田大学を拠点としていた。その他、反天皇制団体などもマークの対象・公安の公務執行妨害という名目での不当逮捕が近年露呈化してきている(YouTubeなどネット投稿などで一般市民に知れ渡り始めている)。
    ・公安三課は右翼(民族主義・国家主義団体)を担当。政治テロに関わることが多く、暴力団との関係も深い(任侠右翼)。特定の企業に対して街宣車で誹謗中傷の攻撃を仕掛けるのも右翼が多い。情報を得るために、三課と右翼が癒着しているケースもあり、組織犯罪対策四課(刑事部四課)と対象が重複することも多々ある。
    ・外交問題が生じるたびに、右翼の活動は活発化し、近年では自爆テロや上京右翼も問題化。それ以上に脅威になっているのは潜在右翼。ネットの普及で水面下で組織化されているグループも数多い。公安の捜査方法が縁故(スパイ)協力に基づく情報収集であるのに対し、刑事警察は現場の物証や目撃情報をもとに点と点をつないでいく捜査方法。よって、潜在右翼のような場合には、公安より刑事のほうが検挙にたけている。
    ・公安外事一課は、アジア以外の国の諜報活動を取り締まる。主に対象はロシア。旧KGBの流れをくむSVR(政治・産業スパイ)やGRU(軍事スパイ)をマーク。彼らは、大使館員や通商代表部員として、オモテの顔を使って堂々と活動するケースと、背乗りやイリーガル工作員のようにウラで活動するケースがあるため、外一もオモテ作業班とウラ作業班があり、前者では公然視察や強制追尾することで防諜、後者では内部協力者を獲得して摘発。東芝もロシアスパイに狙われた。
    ・日米同盟のもと、日本の自衛隊や米軍基地からアメリカの情報をスパイするケースもあり、外一には基地班も置かれている。
    ・同時多発テロ以降は、イスラム系国家(とくにイラン)への不正輸出をマーク。経産省と連携し、武器や破壊兵器に転用の恐れがある製品・部品・技術の輸出を防ぐ。
    ・外ニは、アジア担当。特にマークしているのは北朝鮮と中国。北朝鮮は、在日や土台人のネットワークを使って諜報活動を展開。ロシアやイランなどへの不正輸出が企業の利益狙いであるのに対し、北朝鮮の場合は国家への忠誠もあるだけに、活動が草の根的。
    ・現在、北朝鮮への輸出は全面禁止されているが、不正ルートでの輸出は跡を絶たず、ミサイルや核兵器などの軍事技術の拡大につながっている。サイバー能力の育成もかなりすごい。北の工作員は土台人が経営するネットカフェなどを使って、本国と情報共有。外ニは、大久保のコリアタウンにあるネットカフェをマークしている。
    ・中国の諜報活動は、民間に広く在日中国人を介在させ、広範囲から情報を掻き集める。古典的なハニートラップもよく使われる。今後の外ニの最重要ターゲットは中国スパイ。
    ・ミャンマーの民主化で在日ミャンマー人がどうなるかを分析する担当者もいる。
    ・外事三課は、国際テロの捜査を担当。外事の中では最も新しく、もともとは外一のなかで日本赤軍とパレスチナテロ活動をマークするP班が母体。919以降、アルカイダを始めとするイスラム原理主義が主なマーク先となり、実際に、アルカイダメンバーを検挙した際には、919で日本も標的になっていたこと、以降もサッカーW杯日韓大会でテロ計画があったことなどが明らかになっている。ただ、日本の情報網は非常に弱く、アメリカに頼らないといけない状態。アメリカに情報操作されないように注意も必要。
    ・公安四課は、後方部隊。ファイリング事務のほか、地域警察(警備部)と連携してアパート対策(アパートローラー作戦)や国賓警備の特別実態把握(周辺エリアの警備・管理)なども行っている。
    ・その他、公安特捜機動隊があり、テロの最前線で鑑識・捜査にあたる。中でもNBC班は、理系研究者の頭脳集団。
    ・また、警視庁ではないが、公安外事・刑事部・鑑識など、横串のテロ対策チームがあり、TRZ2と呼ばれる国際テロ緊急対策チームも近年重要視されている。

  • 公安関連の入門書としては良書かと。具体的な捜査方法などが知りたいのであれば(外事課に限られるが)、「秘匿捜査(竹内明)」の方がそこそこ詳しいですが。

  • 入門書

  • 基本的(法的・建前的)には自治体警察機構である日本の警察の中で、公安警察は国家警察の体をなす。その職務故に、秘密のベールに包まれている部分も多いようだ。そんな「公安」のベールを剥がす内容を期待したが、あまりその実態は詳らかにされていなかった。比較的最近に公安が関わった事件、過激派、ゲリラ、テロ、スパイ・・・を具体的に振り返って紹介しているが、その捜査や行動の有様は記されていのがちょっと残念。面白そうな趣向だったのに、ちょいと消化不良。

  • 2012年8月24日に、P154まで読んだ。

  • 反社会性団体や公安そのものに興味ある人には良い資料だと思うが、私には興味が持てなかったので、途中で読むのを放棄してしまった。

  •  本書は、普段一般に知られていない「公安警察」についての書である。本書の冒頭においても「わかりにくい組織」との書き出しから始まっているが、読んでみてもわかりにくい組織であると思った。
     警視庁に「公安部」があり、46都道府県の警察本部の警備部に「公安課」がある。警察庁にも「公安課」があり、最高検察庁・高等検察庁にも「公安課」がある。このように公安組織が分かれているには、それなりの歴史と任務内容の分担があるのだろうと推察はできるが、これは官僚組織の肥大化そのものではないのかと思った。
     国家の危険を未然に防ぐ公安組織のそれなりの意義は、本書を読んで理解できないわけではないと思った。確かにかつては「70年安保」や「全共闘運動」、「連合赤軍事件」等々が激烈な社会活動・事件等があった。最近でも「オウム真理教」事件や、「アルカイダ」のテロ等々、様々な事件がある。
     しかし、1991年のソビエト崩壊・冷戦終結以降、アメリカにおいても「平和の配当」として軍事費は大幅に削減された歴史がある。現在の日本において、日本共産党が暴力革命を目指す危険な組織と見るものは一般にはほとんどいないと思われるし、いわゆる過激派も社会的影響力はほとんどないようにも思える。
     「公安組織」はその特性上、活動内容がほとんど明らかにされていない。それを理由にもう必要でなくなった巨大組織が延命をはかってきたのが日本の公安組織の現状でないかとの危惧を本書を読んで思った。
     やはり、国民の目線を意識しなくなる国家組織は腐敗するのではないだろうか。本書はほとんど知られていない公安組織に光を当てたと言う意味で、価値があると思った。

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