- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106104336
感想・レビュー・書評
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【筆者が知る限りでは、公安警察に身を置く人たちには「誰かがやらなければ」という強い正義感を持っている人が多い。一方で、汚れ役を自任するあまり、国と国民を守るためには場合によって手段を選ばなくてもいいという独善に陥る危険性を孕んでいるようにも思う】(文中より引用)
外目からはなかなか何をやっているかわからない警察の公安部門。警視庁公安部を例に取り過去の担当事件も紹介しながら、その内実に迫った作品です。著者は、産経新聞で警視庁公安部・警備部の担当も務めた大島真生。
警察ドラマなどを見ていると役職に漢字がやたら並ぶキャラクターが出てきて「実際のところどんな役割を担っているんだろう」と思うこともあったのですが、その疑問の一端をすっきりと明らかにしてくれた一冊。取り上げるものの性質故に一部断片的と思われる箇所もありますが、公安の窓口としてオススメできます。
新書という手に取りやすい媒体だけど、一体どんな人がこれを読んでいるんだろう☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者は産経新聞入社後、警視庁公安部・警備部担当の記者になったキャリアの持ち主で、本書はその経験をもとに書かれたものです。
著者の手による後書きによれば、本書は
公安警察はテロやスパイ行為を防止するため様々な活動を行なっているが、その活動を国民の適切な管理下に留めるため、国民は公安警察に関する正確な情報を知る必要がある
との観点から書かれており、警視庁公安部を中心とした警察庁、各都道府県の公安警察についての解説が載っています。
冒頭、公安という言葉の意味についての解説から始まり、序章で
・刑事警察は殺人犯、強盗犯などの一般的な刑事犯罪を専門とする一方、公安警察は国家体制防衛を目的に行動している。
・第2次大戦敗戦後、GHQにより自治体ごとに分離させられた警察組織だがそれは刑事警察のみで、公安警察に関しては全国の公安警察が警察庁警備局から直接指揮を受けるシステムがある。
・警視庁公安部門の人員は約2千数百名にのぼり、全国トップの陣容を誇り、その力ゆえ、警察庁も警視庁の意向を無視できない。
・公安警察と刑事警察の仲の悪さは本物。
と言った公安警察に関する概説が行われています。
序章の後は、1章から8章まで警視庁公安部の各部門(公安総務部、公安一課、公安二課、公安三課等々)の組織とそれぞれの部門がどの様な相手(左翼、右翼、北朝鮮、中国、アルカイーダ等)を専門としているかを、公安部が検挙した事件の解説を通して読者に伝えています。
昭和の時代には日本共産党やそこから分離した過激派の取り締まりがメインだった公安部が、共産勢力の弱体化・高齢化に伴い、組織の存在意義の確保を目的に、調査範囲を公明党の情報、政治家のスキャンダル、NHKの次期会長候補の身辺調査、シーシェパードなど過激な抗議活動を行う民間団体等に広げて行っている事や
2003年に摘発された「征伐隊事件」の捜査において、現場の物証や目撃証言を下に捜査をすすめた刑事警察が犯人グループを逮捕した一方、既存の右翼団体などから集めた情報を下に捜査をすすめた公安警察は犯人逮捕が出来なかった事などが印象的な内容でした。
#ただし現在では、本書の8章でも取り上げられている公安機動捜査隊が拡充され、公安独自の鑑識活動を行なっているとの事。
尚、各章で取り上げている部門は以下のとおりです。
1章:公安総務部
相手:日本共産党、過激な抗議活動を行う民間団体、カルト教団等
2章:公安一課
相手:左翼過激派
3章:公安二課
相手:公安一課が扱っていない比較的小規模な過激派、メインは革マル派
4章:公安三課
相手:右翼
5章:外事一課
相手:非アジア圏内の外国スパイ、メインはロシアのスパイ
6章:外事二課
相手:アジア圏内の外国スパイ、メインは北朝鮮と中国
7章:外事三課
相手:アルカイーダなどのイスラム過激派
8章:公安機動捜査隊
相手:公安事件の初動対応及び公安専門の鑑識等、
理系の頭脳集団(2003年には天然痘ウイルス感染判別キットを開発)
9章:公安調査庁
相手:オウムなどのカルト教団、権限なし、実力なし。現状、ただの書類仕事専門の役所。
刑事ドラマの悪役として登場することが多い公安部。
彼らについて網羅的に書かれた邦書は現在、私の知っている範囲では本書のみです。
#まあ、公安に関する本を読みあさっている訳ではありませんが・・・
とは言え、新書形式で読みやすくまとまっているので、日本の公安について知りたければお勧めです。
興味のある方はぜひ。 -
公安は警視庁が大きな力を持ってるのが分かった。
人権には注意を払って欲しい。