陰謀史観 (新潮新書)

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著者 : 秦郁彦
  • 新潮社 (2012年4月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104657

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陰謀史観 (新潮新書)の感想・レビュー・書評

  • 「陰謀」、というと映画や小説でしかなじみがないし、そういうフィクションは大好物だったりします。

    しかし、「陰謀論」となると・・・。
    最近では「東日本大震災はアメリカの引き起こした人口地震だ!」とか、
    「NYの9.11の自爆テロはアメリカの自作自演だ!」とか、
    胡散臭い、愚にもつかない話ばかりだなと感じていました。
    しかし、そんなバカげた暴論がときに力をもつこともあるとなると、笑ってばかりもいられません。

    本書の著者の秦さんは、太平洋戦争の歴史を軸に近・現代史を振りかえりつつ、『陰謀史観』の論者たちを厳しく批判しています。
    「ルーズベルト大統領は真珠湾が攻撃されるのを知っていて、わざと日本に攻撃させたのだ」という話もどこかで聞いたことのある話ですが、それにたいする秦さんの論旨は明快。「前もって知っていたなら全艦隊を出港させておけばよかったではないか。被害は抑えられるし、戦争する口実だって与えられるのだから」
    もはや正しい歴史の知識をもっているかどうかよりも、ありえそうにないことを見分ける分別と見識の問題のように思えます。

    歴史は相対的なものだという考え方もありますが、やはり真実はたった一つなのだと思います(コナン君ではありませんが)。しかし、右左を問わず政治的なキャンペーンやアジテーションに利用されやすい学問であることも事実です。
    陰謀物のフィクションと歴史を混同しないように、偏見に惑わされない鑑識眼をぜひ養いたいものです。

  •  張作霖爆殺はソ連の仕業,ルーズベルトは真珠湾攻撃を知っていた,世界はユダヤ人やフリーメーソンに操られている…。こういった近現代史を捻じ曲げる臆説の数々を紹介し論駁を加えた好著。世に陰謀論の種は尽きない…。
     著者の定義によると,陰謀史観とは,「特定の個人ないし組織による秘密謀議で合意された筋書の通りに歴史は進行したし、進行するだろうという見方」(p.8)。なんとも不自然な視点だが,単純明快で結構受け入れられてしまう。政治的敗者によって考案され,社会的弱者によって支持される。
     田中上奏文,シオン議定書など,偽書であることがほぼ証明されている文書や,なかばでっち上げられた史料に(そうとは知らず/それを信じず)基づいて,陰謀史観に陥る人は後を絶たない。田母上史観がそんなにやばいとは,知らなかった。かなり体系的に自身の陰謀史観を固めている様子。それを広める藤原正彦氏…。
     こういう人々に,陰謀組織としてあげつらわれるものには2タイプある。コミンテルン,ナチ,CIA,MI6,モサドのような国家機関と,ユダヤ,フリーメーソン,国際金融資本,カルト教団などの秘密結社。後者は活動内容が事後的にも見えづらく,論者の妄想力はますますたくましくなっていく…。
     真珠湾奇襲はプロの軍人にはあまりにも投機的に見えて,意表を突かれたというのが真相のよう。哨戒飛行もしていない。相当な戦果を挙げたのだし,ほんとに察知してたなら前日に艦隊を移動していたはずという秦氏の意見はもっともだなぁ。

  • 秦郁彦は実績ある学者である。
    彼の最大の功績は従軍慰安婦に関する嘘を暴き出したことにあるだろう。
    政治的にはともかくとして、学術的に従軍慰安婦問題はケリのついた話になっている現況は、秦郁彦等の研究者たちの地道な努力の結果だと考える。   

    その秦郁彦による陰謀史観の本。

    さて、読後感だが、研究者としての秦郁彦が集めたデータ・資料が本著にもふんだんに盛り込まれているが、これは大いに参考になる。しかしながら、全体的に著者の史観がバイアスとなって読みにくいことこの上なかった。このあたりを割り引いて読まねばならぬと感じた次第。
       

    もうひとつの読後感は、『陰謀史観そのものは排除すべき』だが、『すべてを陰謀史観として排除してもならない』ことである。

    例えば、「ユダヤ資本が日本を支配している」という史観がある。これを否定するだけの材料もないが、さりとて俄かに肯定しがたいところもある。だから、私としてはYesともNoとも言えない。こういった史観をフレームワークにすることは、正直、できない。


    ならば、こういう「ものの見方」はどうだろう。

    「中国は対日戦略として日本のマスコミを手中にしている」
    これを否定するだけの材料は、市井の私たちは持ちえない。しかし、これは何となくありそうな気がする。つまり、「自分が中国首脳部であった場合、手っ取り早く日本の世論を手中に置きたかったら何をするのか?」といった視点で考えれば良いだけのことだ。この程度のことは、『戦国策』を紐解くまでもなく、彼の国では常識の範疇だろう。

    私はここで「中国が日本のマスコミを手中にしているか否か」ということを問題にしているのではない。何でもかんでも「それは陰謀史観というやつですね」と切り捨ててしまうのも、戦略眼を曇らせてしまうことになると言いたいのだ。
       
    その兼ね合いは実に難しいのだが…

  • 江藤淳 ウォーギルト論の紹介が良かった。

    実際、米国は終戦直後の一時期、検閲をしているし、思想統制をしている。

    オバマ大統領の広島訪問は、ある意味、米国側からの太平洋戦争総決算だったかもしれない。

  • 多分第4章の田母神史観(←日本は陰謀によって戦争に巻き込まれたとする)批判が一番の肝かな。それ以外は近代史のおさらいを兼ねた雑駁な内容だった。陰謀論/史観は規模が大きすぎて具体的に反証するのが難しいという点は納得。

  • 2016年3月28日読了

  • 陰謀史観の発生と変遷を日米関係を機軸に分析した良著。その線上で、中西・藤原・田母上あたりの論考を陰謀史観に基づくものと、簡潔な論考で一蹴。
    愛国史観が好きな方は一読しておくとよろしいかと。

  • 秦氏の余技の範疇のテーマだと思ったけれどやはり読めば面白い。イデオロギー全般に対する醒めた態度と好事家的なスタンスである。

  • 太平洋戦争の歴史を中心に近現代史を検証し『陰謀史観』の論者たちを厳しく批判した本。

  • 書いてあることは至極真っ当なことばかりで、ワクワクすることが何もないのは致し方ない。

    ただ、せめて結びではそういったことが喧伝される仕組みや背景を総括したものを入れてほしかった。

    これだけのタイトルで出版するのだから。

    これでは各種陰謀史観の不合理さを指摘しただけで満足したように映って、陰謀史観論者たちと結局同じところを目指しているのかなと邪推されてしまう。

  • こういうの相手にするには秦先生は真面目すぎて面白くない。山本弘に書いて欲しいと思いつつ、飛躍力と想像力がいまいちなのでネタにはなりにくいのかもしれない。
    田母神論文は評判になったときに読んだが、中ニ過ぎて逆に面白かった。歴史の分野で結論を先に決めて、都合のよい根拠(らしきもの)や主張だけ集めていけば、たいていのことはそれらしく説明できる。9.11はCIAの陰謀とか、人類はホントは月に行ってないとか、ピラミッドを作ったのは宇宙人だという「証明」だってさほど難しくはあるまい。そういえばほかならぬ秦郁彦の本が田母神論文に引用されていたが、一緒にされてはかなわん、と思ったのかもしれない。それ以上に問題だったのは、大東亜戦争は間違ってはいない、という主張をする人は、もう一度やっていい? と言い出してもおかしくないし、そもそもそのおっさんが航空自衛隊を束ねる人物だったということなんだけど。その人が都知事選で10%も得票があったことを知った時には、けっこうマジで落ち込んだ。世も末だ。

  • 正しい話というのはえてして面白くないものである。
    正しいとか言っちゃって大丈夫なの?偏ってない?まあ敵が田母神他なので相対的に偏りが少ないのも事実だけどさ。

  • 陰謀には否定的。まぁそりゃそうなんだが。。。

  • 前半は普通の明治以降の歴史でしたが、後半が面白い。フリーメイソンとか、ユダヤ謀略とか謀略ものは面白い読み物であって、本気にしている人が結構いることの方がびっくりですよね。

  • ●:引用、無印・→:感想
    コミンテルンの陰謀説に興味を持って読んだのだが、当たり前のように否定されている。まあ、こちらも読む前から、それは常識的には否定されることを予想しているのだが。
    ただ、陳立夫の発言や、終戦時のソ連への和平交渉のことを考えると・・・

     ●「陰謀説の嘘」の著者であるアーロノビッチは、陰謀説が「政治的敗者によって考案され、社会的弱者によって支持され」てきたと観察する。敗者や弱者の挫折は自己の失敗のせいではなく、邪悪な陰謀者の悪だくみにうっかり乗せられてしまったせいにすれば、気が晴れるというもの。敗戦後の日本でアメリカ、コミンテルン、ユダヤ=メーソンの陰謀論が歓迎されたのは好例だが(後略)

    →事実、というよりはある事柄を、素直に受け入れられない、納得できない時、それを受け入れる納得させるシステムとして発動するのが陰謀史観ということ。イソップ?のキツネ。
     タモガミや中西などの著書を読まないと肯定的には書かれていないのだろうが、あえて読んでみる必要はあるのか?

  • コミンテルンだのフリーメーソンだの胡散臭い陰謀論についての本

  • 陰謀史観ちゅーのはね、と・・・
    著者は・・・
    『身のまわりに不思議な出来事が起きる。
    もしかしたら、それは偶然ではなくて、何かの陰謀、<彼ら>の企みではないだろうか。このような考えを陰謀史観という。
    この、見えない<彼ら>は、神であるかもしれず、悪魔であるかもしれない。
    <彼ら>として、ユダヤ人、フリーメーソン、ナチ、共産主義者、さらには宇宙人までもが名指しされてきた。』との解説を紹介し、
    これに著者は、『特定の個人ないし組織による秘密謀議で合意された筋書の通りに歴史は進行したし、進行するだろうと信じる見方』とも付け加える・・・

    世の中にはたくさんの陰謀史観がありますが・・・
    この本では、主に日本の近現代に絡むメジャーな陰謀論、陰謀史観を取り上げ、ヨユーで各個撃破していく・・・
    そして様々な陰謀史観の内容と共に、日米戦争を巡る歴史講義のような形になっているので、歴史本としてもgooというお得スタイル・・・
    ちなみにメジャーな陰謀論というと・・・
    田中上奏文
    ルーズベルト陰謀説
    コミンテルン陰謀説
    等々・・・
    陰謀史観をクールに分解していくのも面白いし、歴史講義としてもなかなかに面白い・・・
    good

    さて、陰謀って・・・
    何だか面白そうで興味惹かれちゃうし・・・
    ストーリーも至ってシンプルで分かりやすいし・・・
    実はこうだ、って言うのを知ってると何だか通っぽくなれるし・・・
    非常に魅力的なモノなんだけど・・・
    実際、世の中に陰謀はいっぱいあるんだろうけど・・・
    陰謀通りにコトが進むなんて・・・
    この複雑怪奇な世の中じゃほとんどないんじゃない?と思うよね・・・
    いろんな思惑、それこそいろんな陰謀がめちゃくちゃ絡まり合うんだからね・・・
    そうそう陰謀なんて上手くいかない・・・

    ということで・・・
    この本のラストは・・・
    CIAやMI6・・・
    ナチスやコミンテルン・・・
    ユダヤやフリーメーソン・・・
    三百人委員会など・・・
    実態、実績をザックリ総ざらいし・・・
    陰謀史観の手口を確認し、単純なそれに引っかからないよう学べるようになっている・・・

    でも・・・
    例えば・・・
    日本がこんなになってしまったのは、とか自分がこうなったのは・・・
    きっと誰々(どこどこ)の陰謀のせいに違いない・・・
    と誰か(どこか)の陰謀のせいにすれば・・・
    それはそれで少しは楽になれる、スッキリするから・・・
    今後とも・・・
    陰謀史観ってーのは・・・
    廃れはしないんだろうなぁ、と思うよね・・・

  • いつの時代も疑心暗鬼になると、歴史上に陰謀史観がでてくることが多い。本書は特に近代以降のアメリカとの戦争前後の関係、コミンテルンなどの陰謀と言われることについて検討し、述べている。

    著者によると、「特定の個人ないし組織による秘密謀議で合意された筋書の通りに歴史は進行したし、進行するだろうという見方」という定義になるが、いろいろな歴史上のことを確認すると勘違い等や特定の人間の恣意によって事実が曲げられていることも多い。

    CIAなどの大きな組織や、ユダヤ人や秘密結社のような小さいものまでの団体はあるが、やはりそれらを見抜く力が必要だと感じさせられた。

  • よく原因の分からない出来事が起きると何かの陰謀によると考える陰謀史観を、第2次大戦前に欧米で流布した田中上奏文から現代の田母神史観まで様々な実例を挙げて解説している。冷静になれば簡単に見抜けるような陰謀史観も疑心暗鬼な土壌が有ると容易に浸透するようで、荒唐無稽と甘く見ていると危険である。この本の内容は、これからの世の中で、的確な判断をしていくために最低限必要なリテラシーであろう。

  • 東京裁判、コミンテルン、CIA、フリーメーソン・・・疑心が疑心を呼ぶ。
    第一人者が現代史に潜む魔性に迫る。
    「何かあるに、ちがいない」陰謀論と秘密組織の謎
    誰が史実を曲解し、歴史を歪めるのか。
     第1章 陰謀史観の誕生
     第2章 日米対立の史的構図(上)
     第3章 日米対立の史的構図(下)
     第4章 コミンテルン陰謀説と田母神史観
     第5章 陰謀史観の決算

    世の中には、陰謀史観というものがある。本書では現代史研究の第一人者
    である著者が徹底検証している。陰謀史観には、根拠の不明確なものや論
    証の粗いものが多い。自分の主張ありきで、資料の都合の良い部分だけを
    引用する牽強付会な感がある。

    東京裁判史観を批判する人たちには、歴史の専門家は少なく他分野(英語学、
    ドイツ文学、国文学、数学)やアマチュアの論客が多いという。
    いずれも読者の情緒に訴えるレトリックの功者であることから、支持する人
    も多いようである。

    陰謀史観がはびこる背景には、あえて異を唱え名を売るという側面もあるよ
    うだ。「歴史学では大小の論争がつきものである。そして問題提起、推論、
    仮説が出つくす過程を経ておのずと通説や定説が固まってくるのだが、それ
    にあえて異を唱える主張と論者は修正主義、修正論者と呼ばれる。新人が名
    を売る早道なので、アメリカには「修正主義者は事件の数ほどいる」と皮肉
    る声もある。」

    本書は、現代史をテーマに取り扱った本であるが、歴史とどう向き合うのか
    考えることが出来る内容である。

  • どんなに愉快な陰謀論でも、本当に信じちゃう人が出てきた途端に興醒めなので、そういう人を根絶する具体的方法を示してほしかった。

  • 陰謀論というのは実に便利な論法だと思う。
    なぜなら加害者であっても被害者のふりができるから。

    しかも証拠は、ほとんどいらない。

    いや、証拠が全くないケースでも
    「これに関する証拠が全くない事が逆に証拠となっている」
    などと言う事ができる。

    最近、逮捕された指名手配犯がかつて所属していた某宗教団体が強制捜査を受けているとき
    「自分達を陥れようとしている何者かの罠だ」
    と主張していたことを覚えている人もいるだろう。

    本書は、そんな陰謀論を一刀両断にするもの、と思ったが、さにあらず。
    ジャンルも日米関係、それも第二次世界大戦前後に絞っている。
    しかも日米関係の歴史に全体の半分近いページ数を割いて説明している。

    一番、興味を持ったのは、一つの章を使って、元自衛隊幕僚長の某氏の論文を批判している部分。
    過去に出てきた陰謀論を体系的にまとめているという功績はあるものの目新しい内容はなく、事実誤認も多いらしい。

    以前、ニコラ・テスラ(エジソンのライバルと言われた人物)の伝記を読んだことがある。
    本自体、古本屋で買ったものだったのだが、オカルトに近い事になるとあちこちに赤線が引いてあるが、電気についてなどの業績に関わる部分には1本の赤線もなかった。

    人は何かを見たり、読んだりしても、ありのままでなく、無意識に自分が望んでいるものに合うもの以外は切り捨てているのだな、とつくづく思う。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:210.7//H41

  • 第二次大戦はコミンテルンやユダヤが仕組んだものだ、などという世間に流布する陰謀史観を検証。スケールの大きい話で反証しきれないことが、説がいつまでも生き続けることの背景にあるらしい。国際理解の妨げになるのでは問題だが、わかったうえで珍説を楽しむのならばよいのだろう。そのためにも騙されないようにしないと。。

  • あの事件は、「実は・・」という陰謀だったという説を取り上げ、その内容を分析する。
    太平洋戦争の1番目の戦犯はペリーだなんて説はさすがに笑ってしまうが、真面目に唱えた人間がいて、それを信じる人間がいたことに驚く。

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陰謀史観 (新潮新書)の作品紹介

誰が史実を曲解し、歴史を歪めるのか?そのトリックは?動機は?明治維新から日露戦争、田中義一上奏文、張作霖爆殺、第二次世界大戦、東京裁判や占領政策、9・11テロまで、あらゆる場面で顔を出す「陰謀史観」を徹底検証。またナチス、コミンテルン、CIAの諜報や、ユダヤなどの秘密結社、フリーメーソンと日本の関係も解明する。日本史に潜む「からくり」の謎に、現代史研究の第一人者が迫る渾身の論考。

陰謀史観 (新潮新書)のKindle版

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