「地球のからくり」に挑む (新潮新書)

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著者 : 大河内直彦
  • 新潮社 (2012年6月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104725

「地球のからくり」に挑む (新潮新書)の感想・レビュー・書評

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  • 石油・石炭・天然ガス・原子力と、今では多くのエネルギー源を使っている人間ですが、これらはすべて地球が誕生してから長い年月を経て生成されたことをどれほど意識しているでしょうか。少なくとも日本では昨年(2011)の震災以来、原子力以外の発電方法が見直されてきている中で、石油・石炭・天然ガスの重要性が増してくることでしょう。

    この本では、化石燃料がどのように形成されたか、及び日本近海に多くあると言われている「メタンハイドレード」や、原子力エネルギー等が詳しく解説されています。類書を読んできたつもりですが、この本が一番わかりやすかったです。

    また、この本で「赤潮」の発生の仕組み、なぜ赤潮が問題なのか(p139)がわかりました。更には、窒素固定技術や黒船来航の原因について歴史の事件も踏まえて解説してあり歴史好きの私には興味深い内容でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・現在一人の日本人が1日に消費する総エネルギー量は30万キロジュール、毎日口にする食物はおよそ1万キロジュール(2400Kcal)なので、その30倍以上のエネルギーを使って生活している(p13)

    ・植物が光合成によって固定化する太陽エネルギーは、0.1%にすぎないが 1000億キロワット(1000億キロジュール毎秒)という莫大な量である(p20)

    ・人口が増えることになった転機は、1万年程前に人類が発明した「農耕」にある、人類が太地の一部を切り分けて自分たちのみの食糧を育てることを発明した(p27)

    ・植物の化学組成を多い順にあげると、炭素・水素・酸素・窒素・硫黄・リンとなる、4番目以降の元素は、土に含まれていたものを吸収している(p29)

    ・窒素こそが地球の定員を決めている元素である、以前はグアノ(鳥の糞や死骸が変質したもの)と呼ばれる肥料を欧州はペルーから輸入していた(p31、32)

    ・19世紀後半になると、グアノは肥料ではなく火薬(硝酸カリウム、ニトログリセリン)を合成する原料として消費されるようになった、グアノがなくなると、チリ硝石(硝酸ナトリウム)が19世紀前半に見つけられた(p35)

    ・ハーバーは高温高圧でオスミウムという触媒とともに反応させるとアンモニアが固定化されることを確立し、それをBASFへ売り込んだ、それを若いエンジニアのボッシュが3年後に工業化させた(p42)

    ・1913年に窒素肥料である硫安(硫酸アンモニウム)をビジネス化したが、第一次世界大戦勃発により、火薬原料の硝酸の合成プラントに変更した(p43)

    ・ドイツは講和会議にて、BASF社の工場閉鎖を免れる代わりに、アンモニア工業生産技術は開示することになった(p45)

    ・電気エネルギーに変身する第一次エネルギーは全体の40%、原子力は100%変更されるが、天然ガスは60%、石油は10%程度(p57)

    ・最初のオイルショックがくるまで、1リットルの石油が1セント、当時のコカコーラが1ドル(p67)

    ・シュメール人は多くの立像を残したが、接着剤としてアスファルトを用いた、水と混じらない性質や熱すると溶ける性質を利用(p70)

    ・コークスとは石炭を蒸し焼きにしたもので、硫黄などの臭いや煙の元になる成分が少ないうえ、燃焼温度が高いという長所がある、中華料理はコークスの火力により発達した(p73)

    ・イギリスでコークスが独自に発明されるのは17世紀、13世紀後半からは石炭の燃焼によって排出される煤煙が人類による初めての大気汚染をもたらした(p73)

    ・ペリーは日本人を威嚇するために、黒煙を大量に発生する質の低い石炭を燃やした(p84)

    ・三池炭田を購入したのは、三井財閥の一角の三井物産、落札価格は455万円、三菱に払い下げられた長崎造船所(9万円)比較でも高値(p92)

    ・ドイツ各地に建設された合成燃料の工場はピーク時(1944初頭)には650万トン(年間)を生産し、戦争で使用する航空燃料の9割以上を賄っていたが、その後に空爆を受けて壊滅的となった(p104)

    ・陸軍は府中市、海軍は大船・四日市・徳山に人造石油工場を作ったが殆どが破壊された(p107)

    ・新潟から秋田に点在する油田から噴出するガスのヘリウム同位体比の測定結果は、明らかに地球深部から漏れ出てくるガスを含んでいることを示した(p126)

    ・19世紀中ごろにスコットランドで開発された方法である黒色頁岩(海底にたまったヘドロ)を乾留してできた油(イギリス:パラフィン、アメリカ:ケロシン)は高価だった鯨油の代替品としてランプ用に使われた(p138)

    ・栄養分が流れ込んだ海はプランクトンが異常に発生する、その死骸が腐るとバクテリアによって分解されるので海水中の酸素が消費されるのが問題となる、他の生き物が生きていけなくなる(p139)

    ・赤潮により海が広範囲にわたって酸欠状態になりヘドロが溜まった、その一部が石油へ変質した(p144)

    ・和親条約により開放された函館では、釧路の西隣の白糠で採炭されたものが使われ、後に積丹半島の茅沼で採掘されたものが使われた(p152)

    ・三池炭田は当初はおもに囚人や外国人の強制労働で支えられて安価で石炭が供給された(p157)

    ・有機物が高温にさらされると、酸素ガスが十分にあれば二酸化炭素と水になるが、そうでない場合はメタンとなる(p167)

    ・日本近海では、静岡県から高知県沖に広がる「南海トラフ」において、ハイドレードが大量に存在していることを確認、新潟沖では海底にまで顔をだしてそこから溶け出したメタン泡が海底から立ちあがている(p175)

    ・当初天然ガスは水分を取り除かないままパイプラインで送られていたので、圧力の高いパイプライン内でハイドレートが形成され、目詰まりを起こして爆発につながった(p180)

    ・東京都、埼玉県南部、千葉県ほぼ全域に、大量の天然ガスが存在している、埋蔵量は日本の天然ガス消費量の5年分に相当、地盤沈下のためガス採掘は禁じられている(p183)

    ・毎年0.4%分の炭素が減っていく(炭素サイクル参照)が、そのを補うのが火山活動(p199)

    ・ウラン238とウラン235の平均寿命は、それぞれ65億年と10億年(半減期:45,7億年)もある(p205)

    ・陽子を繋ぎ止めていた莫大なエネルギーを放出する場合、瞬時に運動エネルギーに変えるのが原子爆弾、ゆっくりと電気エネルギーに変えるのが原子力発電(p209)

    ・核分裂によって生じる中性子の一部を核分裂しない原子に吸収させ、生成される中性子数を一定に保つことを「臨界」という(p210)

    ・広島に投下された原爆は50キロのウラン235が用いられて、1キロが爆発、その時に800億キロジュール(=石油換算で1000トン)が放出された(p211)

    ・1963年に核実験の舞台が地下に移るまでに原水爆あわせて2000発が世界中で爆破された(p212)

    2012年6月17日作成

  • 地質学の見地から地球のエネルギーについて書いた一冊。

    海洋無酸素事変、炭素の地球深部循環、メタンハイドレートの成因など最新の地質学の知見を解説しており、とても勉強になった。

  • エネルギーを軸に、地球史・人類史を説明した本です。

    著者の専門からはちょっとはずれた内容のようですが、すさまじいほどの博識ぶりを遺憾なく発揮していると思います。
    エネルギーという一貫したテーマで、ここまで大きなことから小さなことまで広く語れる人は、なかなかいないんじゃないでしょうか。

    とくに、石油・石炭などの化石燃料については、いい勉強になりました。

  • 地球温暖化問題を科学的に分析した『チェンジング・ブルー』を書いた大河内さんの本。各章の前におかれた引用が著者の知識の広さと深さを示している。「地球のからくり」というタイトルだが、そこからイメージされるものとは少し違っていて、化石燃料などを中心とした「エネルギー」の話がメインである。

    あとがきに「改めて実感したことは、科学的な知識を伝えることの難しさと、考えが活字になることの重さである。正直なところ「象牙の塔」に閉じこもっていたい私にとって、気が重い現実を突きつけられた感じだった」と書かれている。「私はエネルギー工学の専門家ではないので、本書に具体的な政策提言があるわけではない。しかし、あまりにも極端な政策が叫ばれる今日この頃、私の専門とする地球科学に歴史科学的な視点をブレンドし、私なりの義務を果たそうとした次第である」と続く。どこかしら、著者のためらいが感じられる。

    『チェンジング・ブルー 』は名作である。一通りエネルギーについて知ることはできて悪い本ではない(よい本だと思う)のだが、前著には熱量含めておよばないという印象はぬぐえない。その前に、義務を果たすというふうには思わなくてもよいのでは、とも思う。



    ---
    『チェンジングブルー』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4006032803

  • 文系の僕には難しかったが、知ることも多かった。
    植物の成長には窒素が必要で、窒素を取り出すためにアンモニアを作るとか、メタン・ハイドレートがメタンガスが凍ったものだとか。
    「宇宙全体で見ると物質は増えておらず、形を変えて存在しているだけ、つまり我々の体も元は別の物質だった」という話を過去に聞いて「なるほど。そういう意味では輪廻転生もありか」と考えたことがあったが、本書を読んで地球レベルでも物質は回転していることを改めて考えさせられた。

  • 新書文庫

  • この地球上で人類が生きていく上で、エネルギーの確保について再考させられる本。大河内直彦の本は読みやすく分かりやすく楽しい。

  • 「いいから、読んでみろ」と言いたくなる、圧巻の語り口。エネルギーに関する史実、科学的事実を興味深いエピソードを交えながら書き上げた本書は、今年読んだ中ではいまのところ、最も面白かった。特にエネルギーの変遷について、大きな流れ以外について、一応は専門である私も知らなかったことも紹介されており、網羅的に、しかも、楽しく知ることができる(私もこういう授業や執筆ができるようになりたい…)。同じ著者の「チェンジング・ブルー」も評判がよいのでこれから読むのが楽しみだ。

  • 地球物理学のようなタイトルだが、中身は地球上(地球内部も含む)のエネルギー収支のからくりにフォーカスしている。実質的にはエネルギー問題、環境問題の本であろう。最終章を除けば、歴史的・科学的な事実を淡々と散文的に----ただし問題の存在はきちんと指摘している ---- 述べているだけだが、非常に理解しやすい。ありがちな政策提言などはなく、ニュートラルな立場だ。これらを読み、原発再稼働やホルムズ海峡封鎖等の諸問題をどう捉えるかは読者次第である。

  • 読了。

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「地球のからくり」に挑む (新潮新書)の作品紹介

地球は謎の塊である。その塊からエネルギーを次々に獲得し、万物の長となった人間は、今やエネルギー中毒に罹っている。なぜこんなことになったのか?そもそも地球の定員は何人か?宇宙から飛来した石油の源、毒ガス開発学者が生み出した新肥料、未来の新エネルギー…第一線の地球科学者が工学、文化人類学、文学などの広範な最新知見を縦横に駆使し、壮大な物語を綴る。科学と文明史が見事に融合した快作。

「地球のからくり」に挑む (新潮新書)はこんな本です

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