「新型うつ病」のデタラメ (新潮新書 474)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104749

感想・レビュー・書評

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  • 新型うつについて知りたくて読書。

    タイトル通り著者は新型うつに懐疑的な意見を持っている。新型うつという名称を変更するべきだと提言しており私も賛成。本来、治療するべきうつ病が埋もれてしまうように思うからだ。

    新型うつは分からないが、うつ病だと診断されると保険加入に支障が出るなどのデメリットが生じる。新型や自称うつの人はどこまで理解しているのか。。

    新型うつは他罰的で自己愛的性格が強いので、本人よりも関わる周りが迷惑する傾向がある。精神的な被害を受ける周りの人たちへのフォローについても考える必要があるし、新型うつの人たちよりも仕事がしっかりとしている迷惑を被る周りの人へのフォローの方へもっと注目するべきではないか。

    さらに知りたいのは、他国の情況。成熟国家や先進国特有の現象であるならアメリカやイギリス、フランス、ドイツではどうなのか。途上国ではどうなのか。

    また、診断書を出す医者へ罰則など法的責任はどうなっているのか。本書の事例でも紹介されいるような面倒な患者が多いと思われる。対応に苦慮して事実でもないことを書いて渡してしまうケースもあると思われる。どうやってそれを防ごうとしているのか。心ある医者が1人でも他の医者が違ったら、そちらで発行されてしまうこともあると思うので、1人の努力ではどうしようもない。

    新型うつに必要なのは診察や薬物療法ではなく、習慣や認知を改めさせるような一種の訓練が有効だと思われる。

    〇〇病や〇〇症候群と称する人は私が関わった人にもいる。そうすると自分が認められると錯覚しており、ある種の回避、予防線を張っているとも言える。

    精神力の低下(p89~)が興味深い。

    経営者や部下を管理するピープルマネージャーには今後ますます必要性を増す知識だと思う。新型うつの人が増えてくると、本来の解決するべき問題の発見が遅れてしまうことが企業リスクとなるので、しっかりと費用と時間をかけて対策を講じる必要がある。

    参考文献も多く、手元に置いておき再読する予定の本。

    読書時間:約1時間15分

  • 精神科医がこれぐらいの物言いを言ってくれるとすっきりする。
    特に、「うつ病の不連続性と新型うつ病の了解可能性」については、非常に分かりやすく説明されており、一番ためになった箇所です。
    「徳」とか何とかいう所は余計だったけれど、全体的に良。
    内容については賛否両論あると思うけれど、こういう物言いをする精神科医がもっと増えて欲しいと思いました。

    「精神病理学は、伝統的に、それが内因性かどうかという問題にこだわってきました。内因性であれば、それは本格的な病気です。(中略)しかし内因性でなければ、それは病気ではあっても正常心理と連続したものであり、そんなに深刻に捉える必要がありません。」(p82)

  • 最近ではしばしば話題に上り、知名度も増してきている「新型うつ病」似ついての解説書。
    「うつ病」についての理解を通して、この「新型うつ病」を理解しようとする試みの書。

    「うつ病」に関する説明は、歴史的経緯を中心に、かなり分かりやすくなっていた。それ故に、「新型うつ病」が、どういったものなのか、どういった経緯で現れ、そして広まったのか・・・などが分かりやすく解説されている。

    また、それのみにとどまらず、著者からの生き方・考え方に対する提言も非常に興味深く、共感を覚えるものだった。

    とかく、努力やストレスというものを”ないほうがいい”という価値観で物事が考えられるようになってきている。が、本来、人間にはストレスは必要なものだと、改めて考えさせられる。

    一方向的に語るおしつけ書ではなくて、両論併記的な部分も多くあり、そのなかで著者の考える者が採用されている背景がよくわかり、もっと他の本を読みたくなった。

    著者の思想に触れるには、特に第三章「精神科診療から見た現代社会」の一節「ストレスが成長を促す」からでも読んでみたらいいかもしれない。たった4ページ(p.179~183)だが、非常に気持ちのよい文章になっている。

    曰く『一体、無理しないで一人前になった人などいるのでしょうか。それは一部の天才だけではないでしょうか。どのような分野にせよ、高いパフォーマンスを示す人をみると、賛嘆と敬意を禁じ得ませんが、それはつまるところ、表にはみえはしないが確実に重ねたに違いない、彼らの人知れぬ努力に対する賛嘆と敬意だと思います。現状に満足せず、むしろあらゆる程度の障壁(ストレス)を自ら求める心と、それを乗り越える力、それがある人だけが、どの分野にしろ、一人前と言われるレベルに達するのだと思います。』

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    【内容(「BOOK」データベースより)】
    「上司に叱られ、やる気ゼロ」「彼女に浮気されたので休職したい」…。この十年、そんな理由で精神科を訪れる人が急増。従来のうつ病とは明らかに異なる病態をもつそれは、「新型うつ病」と総称されるようになった。診断書を手に堂々と会社を休む人々、手厚すぎる社会保障、肥大化する自己愛と精神力の低下。はたして「新型うつ病」は本当に“病気”なのだろうか。もはや社会問題。そのまやかしを、現役精神科医が暴く。
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    【目次】
    第1章 「新型うつ病」とは何か
    「新型うつ病」とはどのような病気か
    うつ病概念の歴史
    「新型うつ病」の位置づけ
    「新型うつ病」はなぜ生まれたか―その三つの要因)

    第2章 「新型うつ病」がもたらした社会的弊害
    休職をめぐる問題
    簡単にもらえる傷病手当金
    しばしばもらえる障害年金
    公費医療・サラ金・奨学金返済
    給食費免除
    その他の保障や利益
    労働紛争の不思議な結末―富士通四国システムズ事件

    第3章 精神科診療からみる現代社会
    「何でも人のせい」という風潮
    「何でも病気」という風潮
    「『知らない私』のせい」という風潮
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