動乱のインテリジェンス (新潮新書 493)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104930

作品紹介・あらすじ

著者の預言どおり、世界はにわかに動乱の季節を迎えた。日本周辺海域の波はことさら高い。「北」のミサイル、空母を持った中国、混迷の中東、通貨危機とTPP、そして黄昏れゆく日米同盟-。報道レベルを数段超えたインテリジェンスで「今そこにある危機」を分析しつつ、縮みゆく日本を毅然として回復させる道筋を示す黙示録的一冊。日本最強の外交的知性がぶつかり合った、高カロリー対談。

感想・レビュー・書評

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  • 佐藤優さんと手嶋龍一さんの、袈裟の下に鎧を隠した感じの対談集、でしょうか。

    いや、非常に読み応えがありました、まさしく今の世界状況を読み解く道標かと。
    少なくとも年内から来年夏くらいまでの状況は対応できる気に、なりました。

     「国家を真剣に守ろうと思えば、情報収集の手段は自前で構築する必要がある。」

    これをベースに、自分なりの肌感と軸となる価値観を交えて、意見を確立しておきたいところ。
    同じくお二人の対談である『インテリジェンス 武器なき戦争』も読み返してみようかな。

    言われてみれば、なんだか妙に違和感を感じる昨今のTPP反対論ですが、
    お二人の仰る「経済ではなく安全保障の視座での検討が肝要」とは納得です。

     「アメリカは「日本なきTPP」などあり得ないと考えています。
      ですから「日米豪」枢軸の安全保障・経済同盟に育てようと構想している」

    地政学的にも、海洋国家と大陸国家の衝突はある意味宿命的だと思います。
    それが故に、大陸国家が海洋権益を求めて外に出てきているのは、危険な兆候かと。

     「帝国主義の本質は、「搾取」と「収奪」にあります。」

    ここ数年で「ゲームのルール」がガラリと変わっている(回帰している?)とも思います。
    ホント、70年前の第二次大戦前夜に似てきたなぁ、、と改めて感じてしまいました。

     「国家の根幹が揺らいでいるいまこそ、近未来を見通して国益を守ることができる指導者に
      この国の外交と安全保障を委ねる時だと考えます。」

    このタイミングでの〆のこの言葉、さて両氏が示している「指導者」とは、、気になります。

    安倍政権の時の日豪安保共同宣言や、麻生さんの「自由と繁栄の弧」を鑑みると、
    どう読み解いていくのかが、非常に鮮明に思い浮かべることができました、なんて。

    あと個人的には、既存メディアの色眼鏡を通した内容ではなく、
    真っ直ぐな視点からの、沖縄と北海道の現況を知りたいですが、うーん。

    ん、来月の選挙を前にもう一度読み返しておくべきかと、感じました。

  • ☆2(付箋3枚/P221→割合1.36)※文字加算+1(付箋平均340字)

    ・佐藤:仮にウクライナがNATO・北大西洋条約機構に加盟することが決定したとしましょう。ロシアは必ず軍事侵攻します。もしくは内部からクーデターを起こさせます。理由は簡単、ロシアの宇宙産業、兵器産業はいまだにウクライナと一体化したままなのです。
    兵器の秘密が全部NATOに握られたら、ロシアは軍事関連のマーケットを失うことになる。NATOもそこは分かっているから、常にウクライナへの歩留まりはつけている。

    ・手嶋:イラン当局が発表した会見の写真ですが、アフマディネジャド大統領がいて、鳩山さんがいて、通訳がひとり真ん中にいる。あの写真がすべてを物語っています。ちょっと見には当たり前の構図に見えるかもしれませんが。
    佐藤:ふつうは誰が写っているかに注目しますよね。
    手嶋:でも佐藤さんのようなプロフェッショナルはそうじゃない。
    佐藤:そう、誰が写っていないか。それが非常に重要なんですよ。
    手嶋:大切な外交交渉では、たとえば、佐藤栄作とリチャード・ニクソン会談では、日米の双方からの通訳がいます。
    外交交渉で相手側が用意した通訳に頼ってしまえば、正確さもさることながら、相手のペースになってしまう。ですから、英語が母国語と同じほどに出来る日本の外交官も対米交渉では英語は使わない。自前の通訳を用意するんです。相手の言葉を使えば不利な交渉になりますから。
    …佐藤:悪い二元外交とは何か、それは相手側の眼で見ればいいのです。これを学ぶには、鳩山イラン訪問を振り返れば論より証拠、すべてが分かる。
    手嶋:悪い二元外交の問題点は、交渉の相手国が日本を容易く操れる、その一点に尽きます。

    ・手嶋:日本は戦後長く、牙は持たない戦略できた。ウサギはオオカミのように牙はないわけですけれども、長い耳という武器がある。しかしその耳も、GPSがない現状では長いとは言えないわけですね。
    佐藤:ウサギほど耳が長くなくてもいいと思うのですよ。ただし準天頂衛星ぐらいは欲しい。牙に関しては、オオカミの牙を持つ必要はないんですけれでも、猫ぐらいの耳と牙は持った方がいいと思うんですよね。それから、いろいろなパイプをもって、鼻を利かせる必要もある。ただこれも、犬ほどよくなくていいと思うんです。
    つまるところ、猫ぐらいのインテリジェンス・モードは持った方がいいということです。猫ぐらいの牙と耳と鼻を持つ。日本の場合は、それぐらいのサイズでいいと思うんですよ。

  • 2012/10/27 Amazonより届く。
    2012/11/11~11/14

    当代名うてのインテリジェンスの大家二人の対談本。現在の日本を取り巻く状況は非常に厳しく、後の歴史家によって、日本の大きな節目であったと総括されるかもしれないこの時期、平和ボケした日本人が最も日本の状況を把握していないというこの恐ろしい状況。読めば背筋が寒くなること必至。

  • やはり外交は表面を見ているだけではダメで、その裏や中について本質を理解して考えなければならないと再認識させれた
    また、着眼点や切り口が、これまでの書籍と大分違っているが、目からウロコ的な感心させられる点も多かった
    たとえば、アイヌ民族・琉球民族を日本における亜民族という捉え方も、確かにそう考えれば合点がいく部分もあるな〜と感心させられた。

  • インテリジェンスに詳しい二人が2012年民主党政権当時の世界情勢について語る。対談を文字に起こしているので、話題があちこちに飛ぶのはやや読みづらい。
    悪い二元外交の例として、鳩山元首相のイラン訪問を挙げている。イランのインテリジェンスが、鳩山氏の「NPTが不公平、ダブルスタンダードだ」という言葉を引き出している。

  • ・「インテリジェンス」というキーワードの周辺での存在感が抜群に強い佐藤優と手嶋隆一の対談。とても読みやすいが、それに付いていくだけで、国際政治、外交に関する視座を少し分けてもらえる。最近の日本を取り巻く国際情勢が題材のため、必然的に内容はきな臭くなる。それが「動乱」というタイトルのニュアンス。

    ・本書で扱っている話題は
      竹島、尖閣、中国と沖縄の独立、鳩山のイラン訪問の裏側、トモダチ作戦、日米、日ロ関係

    ・「(手嶋)<span style="color:#ff0000;"><b>日本の国境はいま、縮み始めている</b></span>ー。国力に陰りが生じ、政治的指導力が衰弱すれば、周辺諸国はその隙に乗じて攻勢に転じ、国土は萎んでしまう。(P7)」そして、縮んでいるボーダーは国境だけではなく人間界と動物界との境界も、そうなのかも知れない。

    ・例えば、2012年4月の北朝鮮のミサイル発射時、韓国よりも日本の発表が遅れるということがあり、日本の国防情報の不備が指摘されたが、実はこれ、長期的に見たら「サードパーティー・ルール」が守られたため、長期的にはアメリカからの信頼は勝ち得た、政治的判断に拠るものだったのかも知れないと。

    ・「(佐藤)ギリシャの危機が一層深刻化していけば、EUは事実上の「為替ダンピング」に踏み出さざるを得なくなると指摘しておきましょう。これは帝国主義を絵に描いたような図式なんです。震災で弱っている日本の円が、なぜこれほど強くなるのか。それは<span style="color:#ff0000;"><b>「帝国としてのアメリカ」が基軸通貨たるドルをダンピング</b></span>させ、さらにいは「帝国としてのEU」も共通通貨「ユーロ」をダンピングさせているのが原因だと言っていい。(P208)」

    ・「(手嶋)(TPPについて)僕たちは、短絡的に、賛成・反対という議論をしているのではありません。二十一世紀のいま、新たに姿を現したTPPの本質とは何かを考えてみることが必要だと言っているのです。いまや新たな自由貿易の枠組みが、東アジア・環太平洋地域の安全保障と表裏一体になっているという視点は欠かせません。TPPの盟主たるアメリカは、世界経済の推進エンジンとなった東アジア・環太平洋地域をがっちりと囲い込み、ここを基盤に新たな安全保障の枠組みを構築して、海洋へせり出しつつある中国に対抗しようとしています。
    (佐藤)アメリカは、大統領選の政治の季節を迎えて、日本の傘下にあれこれ注文をつけていますが、日本の要求を削ぎ落とす交渉のテクニックです。<span style="color:#ff0000;"><b>日本の参加なきTPPなど考えてもいません</b></span>から、日本にとって「TPP不参加」という選択肢など実際はあり得ません。(P211)」
     ちなみに大前研一はTPPなどアメリカ国内では全く問題ではなく、騒いでいるのは日本人だけで、締結したとしても実効性はなく、気にするほどのものではないと判断していたな。

    ・「(佐藤)(日米豪の同盟を敵視するのではなく)バランス・オブ・パワーによって、<span style="color:#ff0000;"><b>台頭する中国を牽制していくというのが、プーチン政権の基本戦略</b></span>といっていい。(P219)」

    ・MediaMarkerの新着紹介で知った。

    ・・2012/12/26で図書館25人待ち。2013/06/19で待ちゼロ。

  • 民主党政権時代の国際情勢を、2人の独特なジャーナリストが分析した対話本です。
    5年前の著作ですが、現在に通じる話題が多く、原発事故、領土問題、中国、北朝鮮、イランなどのトピックに対して、報道されない細部や背景を分析されています。
    中国が初の空母を購入する際は、はじめにマカオのビジネスマンが洋上カジノを作るためと偽ったとか、鳩山元総理がイランを電撃訪問したのは、イランの諜報部門の成果だとか、興味深い情報が多く楽しめました。
    2人の著者は、この本で日本の政治力、外交力の低下を憂いていましたが、この本に書かれている民主党政権時代の施策と比較すると、安倍総理は随分挽回していると思いました。

  • この二人の対談集は2冊目ですが、今回も面白い内容盛り沢山です。
    いま衆議院選挙真っ盛りですが、TPP参加の是非に関しては、このような安全保障からの切り口があるのかと、あらためて思い知らされました。
    近視眼になりがちですが、戦略的思考で長いスパンでみることの重要性を感じる一冊です。

  • 「インテリジェンス」
    自分まで客観視できるくらい考え抜いて答えを出さないとこのレベルに至ることは無いのだと思います。
    民主党政権時に書かれてるのですが鳩菅がいかに無能な政権やったかがわかります。
    さすがに野田さんはかなりマシやったようですがσ^_^;
    あの頃の悪夢に戻るのは嫌ですが現政権で再現されるのももっと嫌です。
    まあネットの監視が効く時代ですからあそこまで酷いことにはならないのでしょうがσ^_^;

  • 日本の周辺の安全保障関連トピック、中国のインテリジェンス、イランと鳩山由紀夫、イランと北朝鮮の核、アジアの政治経済について、インテリジェンス関係に造詣のある2人が対談。この2人の対談本は中身濃ゆいな。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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