アメリカが劣化した本当の理由 (新潮新書 498)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104985

作品紹介・あらすじ

「アメリカは自由と平等と民主主義の国」なんて幻想だ。合衆国憲法には民主主義という言葉も出てこなければ、国民の投票権も幸福追求権も謳われていない。奴隷制度と人種差別を正当化してきた法律は今なお暗い影を落とし、一票の格差など問題にすらならない。そのうえ大統領や連邦政府の権力は増す一方で、個人の自由は狭まるばかり-。アメリカ出身の法学者が、超大国をおかしくした制度疲労の真相に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 「自由の女神」がシンボルのアメリカ合衆国は世界が憧れる「自由の国」。ところが現実のアメリカは自由でなければ平等でもなく、ましてや「民主主義」などは幻想に過ぎない!と切り捨てるのはアメリカの法学者で日本の大学でも教鞭を執るジョーンズ博士。欠陥だらけの合衆国憲法、巨大な権力が集中するあまりに暴走を止められなくなったアメリカ大統領、そして今でも蔓延している人種差別・女性に対する暴力・銃による乱射事件... この国が抱える根本的な問題が生み出す今の状況を分析し、真の民主主義とは何かを問い質(ただ)す。

  • ●アメリカ=民主主義 というのは虚像
    ●独立前、代表なき課税というスローガンから独立へと進んだが、そもそもその当時のイギリスは一般的に参政権があったのは3%程度だった。よって厳密には、一般人ではなくコロニーの支配層からの苦情だったと考えられる。
    ●州ではないアメリカ領。ワシントンDC、プエルトリコ、グアム、ヴァージン諸島、サモア、北マリアナ諸島。これらの地域には参政権が無い事になる。
    ●アメリカに弁護士が多い理由。司法書士や行政書士の資格がない。憲法訴訟や行政訴訟が多い。何故か?憲法は240年前から、ほとんど修正がない。
    ●最高裁判事は政治家集団の一人。法の番人、専門家ではない。

  • タイトルはアレだが、内容はアメリカの歴史を振り返りながら、日本人からはやや不思議に思える、かの国の法や倫理や正義観を解く本。なぜ大統領にあんなに権力が集中しているのか?なぜ銃規制ができないか?なぜあんなに訴訟が多いのか?この一冊で様々な答えが見えてくる。連邦政府と州政府の関係も勉強し直せたし、とにかく、いろんな発見があって面白かった。著者はアメリカ人法学者で、書かれたのはオバマ時代半ばだが、トランプになってのアレヤコレヤというニュースを読み解くヒントが満載である。

  • アメリカ合(州)国の生誕から引きずる根源的な問題、いまだに引きずっていることがよく理解できました。
    要は、寄り合い所帯で、本国のイギリス法を借用しながら、利害が絡み合いながら打算で出来た憲法、そして、奴隷制度を持っているゆえの、打算。
    ピューリタンの独善的な考え方が根幹にあり、また、たまたま、第一次世界大戦で経済大国になってしまったが、歴史と伝統がない国、アメリカの限界性がよく解りました。
    そんなアメリカから押し付けられたGHQ史観に騙され続けるエセ日本政府、マスゴミ、許せないと思います(怒)。

  • 書名に正面から向き合う内容ではなかったが、アメリカという国を知る上でこれはこれで一つの参考になった。

  • 共産主義の旗手ソ連が崩壊し、民主主義、資本主義の旗手アメリカが唯一の超大国になれたのは、民主主義、資本主義が優れていたというより、共産主義よりは少しだけマシで現実的だったから、という気がならない。
    どんな制度も老化し劣化するが、民主主義、資本主義に変わるシステムを生み出せない私たちは不幸であり、そんなことをしなくてはならないほど切羽詰まっていないと言う意味で、幸福な時代の幸福な国で生きているんだとわが身を振り見て思う。

  • アメリカの成り立ちを憲法などの観点から見ている。漠然としか理解していなかった彼の国について理解を深めるにはよい本。現状起こっている様々な事柄の背景も憲法や国の成り立ちに依存しているというのも興味深い。

  • 合衆国憲法には民主主義も投票権も幸福追求権も謳われていない。社会の深層にある理念や理想こそが本当の“憲法”だった。

    ことあるごとに日本のお手本になってきた、すばらしきアメリカ。それは憲法ではなくアイデアだったと。

  • 米国憲法は奴隷制度を巡る各州の妥協の産物であり、米国は実質的には国家主義であり、本質的には非民主主義である。

  • 「アメリカに押しつけられた」憲法の改正が叫ばれる昨今、一読の価値がある。合衆国憲法は日本国憲法が模範とするようなものではまったく無く、不完全で不平等で問題だらけの憲法であった。もともと各州がそれぞれ独立した国家の性質を持っていた彼の国では、合衆国政府というものに対する各州の不信感が大きく、その権力を制限するのが憲法であった。したがって基本的人権などの国民の権利、選挙制度の1票の平等などにはまったく配慮されていない。最高裁の判例によってその不備を補いながら今日まで生き存えているような存在である。先進国と呼んでいいのか疑問になるほどの不平等と不公平が一部ではまかり通っているのがこの超大国の現実なのだ。

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