日本の宿命 (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105029

作品紹介・あらすじ

何かがおかしい。「嫌な感じ」がどうにも消えない。カリスマが現れても新政府ができても高邁な理想を掲げられても、絶望的いらだちが治まらないのは、なぜなのか?橋下現象、政権交代、国境騒乱等混沌の真因はどこにあるのか?維新、大戦、高度成長期等の転機から自由、平等、民主、経済成長、ヒューマニズムの追求こそが幸福であるという、この国が負わされた近代主義を徹底的に懐疑する。稀代の思想家からの鋭い一撃。

感想・レビュー・書評

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  • 現在の日本の抱える問題を「精神の無脊椎症」と批判し、日本は自らが立つ拠りどころ、揺るぎない考え方を得る必要があると主張する。
    現象として批判されるものが「アメリカ化」や「政治のポピュリズム」。
    なぜ、そのような状況に陥ったのか、黒船来航から遡り検証する。
    ひとつの解として明治維新に植民地化を避け、「一国独立」を志した際の志士たちの精神構造を振り返る。福澤諭吉も登場。

    政治家としてあるべき姿を論じる箇所では、現代の政治家であればトニーブレアを思い浮かべた。


    以下引用~
    ・ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」、、、ショックによって社会を活性化しようというのです。
    ・最初に政治学という学問を生み出したプラトンがもっとも警戒したのが民主政治だったということは改めて注意しておいてよいことでしょう。政治学は民主政治への警戒から始まったといっても過言ではありません。
    ・政治とは、私見では、三つの重要な要素をもっています。
    第一に、国や社会の長期的なあり方を国民に提示する。そして、そのための方策をある程度実現する。
    第二に、緊急事態など何か大きな事態が生じた時に、決定的に重要な決断をする。
    そして第三に、今日の民主政治は多様な利害のからみあいですから、多様な利害を調整する。
    それぞれ『構想の政治』、『決断の政治』、『調整の政治』といってよいでしょうが、今日の政治家に求められるのはこの三つの能力です。そしてもうひとつ付け加えれば、以上のことを国民に訴え、説得する能力です。
    ・少なくとも、戦後、われわれが「世界」といった時に「世界」とは何かというと、実は「アメリカ」なのです。「世界標準」とはアメリカの示したルールなのです。
    ・すでに、「開国」への強力なバイアスがかかってしまうのです。ではそのバイアスを生み出したものは何か。それはいうまでもなく明治の「開国」でしょう。
    ・「一身独立」しなければ「一国独立」もありえない。そのためには人は「報国心」をもって自分の「国」を引き受け、各人が「おのおのその国人たるの分」を果たすことが肝要だ、というのです。
    ・福沢がもっともきらったものは安直な便宜主義であり、簡単に「利」につく性癖であり、義を失っても恥じない奴隷根性でした。
    (痩我慢)

  • この国が負わされた近代民主主義を徹底的に懐疑する

  • 「日本の宿命」佐伯啓思著、新潮新書、2013.01.20
    223p ¥756 C0210 (2023.05.08読了)(2014.07.14購入)(2013.02.10/3刷)

    【目次】
    まえがき
    第一章 「橋下現象」のイヤな感じ
    第二章 総理の品格は、国民の品格
    第三章 無脊椎の国、ニッポン
    第四章 日本は本当に独立国か
    第五章 真珠湾攻撃から70年
    第六章 開国という強迫観念
    第七章 開国と維新の精神
    第八章 福沢諭吉と近代日本の矛盾
    第九章 1980年代論
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「体制維新-大阪都」橋下徹・堺屋太一著、文春新書、2011.10.31
    「大臣 増補版」菅直人著、岩波新書、2009.12.18
    「秘録 東京裁判」清瀬一郎著、読売新聞社、1967..
    「東京裁判(上)」児島襄著、中公新書、1971.03.25
    「東京裁判(下)」児島襄著、中公新書、1971.04.25
    「TPP亡国論」中野剛志著、集英社新書、2011.03.22
    「間違いだらけのTPP」東谷暁著、朝日新書、2011.05.30
    「大東亜戦争肯定論」林房雄著、番町書房、1965..
    「続・大東亜戦争肯定論」林房雄著、番町書房、1965..
    「代表的日本人」内村鑑三著・鈴木範久訳、岩波文庫、1995.07.17
    「福沢諭吉「学問のすすめ」」福沢諭吉著・佐藤きむ訳、角川ソフィア文庫、2006.02.25
    「学問のすすめ」福沢諭吉著・伊藤正雄訳、現代教養文庫、1977.06.15
    「文明論之概略」福沢諭吉著、岩波文庫、1931.05.30
    「「文明論之概略」を読む(上)」丸山真男著、岩波新書、1986.01.20
    「「文明論之概略」を読む(中)」丸山真男著、岩波新書、1986.03.27
    「「文明論之概略」を読む(下)」丸山真男著、岩波新書、1986.11.20
    「戦艦大和」吉田満著、角川文庫、1968.07.20
    「「欲望」と資本主義」佐伯啓思著、講談社現代新書、1993.06.20
    「「市民」とは誰か」佐伯啓思著、PHP新書、1997.07.04
    「アダム・スミスの誤算 幻想のグローバル資本主義(上)」佐伯啓思著、PHP新書、1999.06.04
    「総理の資質とは何か」佐伯啓思著、小学館文庫、2002.06.01
    「新「帝国」アメリカを解剖する」佐伯啓思著、ちくま新書、2003.05.10
    「自由と民主主義をもうやめる」佐伯啓思著、幻冬舎新書、2008.11.30
    「反・幸福論」佐伯啓思著、新潮新書、2012.01.20
    (「BOOK」データベースより)
    何かがおかしい。「嫌な感じ」がどうにも消えない。カリスマが現れても新政府ができても高邁な理想を掲げられても、絶望的いらだちが治まらないのは、なぜなのか?橋下現象、政権交代、国境騒乱等混沌の真因はどこにあるのか?維新、大戦、高度成長期等の転機から自由、平等、民主、経済成長、ヒューマニズムの追求こそが幸福であるという、この国が負わされた近代主義を徹底的に懐疑する。稀代の思想家からの鋭い一撃。

  • 【由来】
    ・amazonでたまたま

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • 80年代のアンソロジー的な懐古はあまりに秀逸。
    滲み居るように胸に刻み込んで来ます。
    自分たちはこの時代の人間なんだと思うのですが。
    最近大学の大掛かりなOB会で名簿を作りたい旨述べて来たのです。
    そこに平成の表記はありませんでした。
    自分たちこそ「平成」を実際に名乗り、この御代の終焉の
    総括というか、まあなんかあるんじゃないのかなって。
    西暦要求されている時点で「こいつ等とはなんか違う」そう感じました。
    東京或は関東で豊かな都市文明を浴びていたのでしょう。
    実家に帰りUターン就職でまさしく田舎モノになりきり意識の面で決定的な違いがある(上下ではないですよ)だろうと
    彼処(都心)に居ると見喪うものがあるのでしょう。おそらくは、見喪ったことすらも忘れてしまっているようなもの。

  • 林房雄まで来ておいて、結局福沢諭吉か、、、という印象。数少ない「良心的保守派」、良心的故にこれが限界かとも思わせる。残念。

  • 「反・幸福論」の続編。橋下現象=ポピュラーリズム(第一章)から始まり、アメリカに自発的に従属する「部族社会」日本の精神構造の解明へと論が展開される。ともすると大東亜戦争を必然的=肯定的に捉えているかのような論調に多少の違和感は感ずるが、江戸末期から明治維新にかけて生じた日本人の(攘夷と文明開化という矛盾を孕んだ)精神から、敗戦を経て「アメリカ模倣」へと宗旨変えするに至る日本人の精神構造の変化とその無脊椎性の指摘には説得力がある。また、他の本でもそうだが、著者はとにかく表現が巧みで文章が上手いと思う。

  • グローバル競争の中で日本経済は大停滞から抜け出すことができず、仕事も不安定で、将来への見通しも立たない。誰もが殺伐としたものを感じている。大衆の不満や不安は、毒には毒をもって制する指導者、橋下氏を求めた。橋下現象を支えているのは薄く広く引き延ばされたルサンティマン。敵対者を悪者にしたてあげ大衆の不満の矛先と仕向ける。橋下氏を強引で自己中心的でとんでもないという人もいるが、残念ながら筋違い。我々が問題とすべきは橋下現象を生み出してしまうこの日本社会の現状そのもの。ネットなるものをほとんど見ない、橋下氏を全く知らないという著者が橋下現象の核心を突く。2章以降、総理の品格、独立論など、興味をそそるコンテンツが第9章まで続く。資料やデータは一切ない。著者の見識のみをもって思想的な観点で論じられているが、どれも読みごたえがある。自分の思想の遠近を正し軸もしっかり据えてもらえた。

  • 4章以降の、日本の歴史的考察の部分は、内容としては理解できるが、あまり興味を持てなかった。

    ただ、3章までの政治に関する部分は、激しく同意できるし、「そうそう、それが言いたかった」というところばかり。

    こういうふうに、自分の考えを文章なり言葉なりにして表現できるようになりたい、と思わされた。

  • 江戸幕府最後からの歴史を勉強しないといけないと思った。大東亜戦争への宿命、必然。
    アメリカへの従属。それに、満足というか知らない内に、取り込まれている。それも気づかないまま。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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