日本人のための世界史入門 (新潮新書 506)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105067

作品紹介・あらすじ

いつから日本人は世界史が“苦手”になったのだろう。“コツ”さえつかめば、世界史ほど面白いものはないのに―。「物語のない歴史は退屈である」「日本人にキリスト教がわからないのは当然」「中世とルネッサンスは何が違うのか」「フランス革命の楽しみ方」…。歴史の“流れ”を大づかみするための補助線を引きながら、古代ギリシアから現代までを一気呵成に論じる。一冊で苦手意識を克服できる、便利な世界史入門。

感想・レビュー・書評

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  • 氏の「このミステリーがひどい」の印象が良くなかったので、はてさてどんなものかと読み始めたが意外に面白く同調できる所も多かった。

    氏が最後の結論として「歴史はだいたいでいいのである」と述べているが、これには大いに同調できる。多くの人は試験などで細かい重箱をつつくような問題をやらされるのでイヤになるのである。歴史の専門家でないので、必要以上に細かい知識は確かに必要ないと思う。

    ただこの人はわざとだろうが、書き方が斜に構えて尊大なところがあり、上から目線のところがある。いらぬ反感を買って損をしている所もあるのではないだろうか。

    新書1冊で古代ギリシャから現代までの世界史を俯瞰しているので、なぞっているだけ感は拭えないが、参考図書を豊富に上げていてブックガイドの機能もあるので、気になる時代のものは少し読んでみたいと思う。

    巻末にブックガイドの一覧表をつけておいてくれると助かると思った。

  • 西洋では古代ギリシャ、東洋では三皇五帝、といった紀元前の時代から現代までを一気呵成に通貫した世界史読本。

    著者の印象は、いわゆる「むずかしい人」とされるタイプなのではないのかなあ、と読み始めからちょっと感じました。これはダメ、あれは良い、と端々で仕訳が始まるのですが、その判断基準の統一性がよくわからず「むずかしい」のでした。それでも歴史の要約の仕方が巧みで、語り口もおもしろいので、著者のクセさえ認められたならばあれよあれよと読めてしまうでしょう。

    世界史のアウトラインを辿っていくような感覚です。270ページに世界史を詰めこんでいるぶん、かなりのスピードで一時代が過ぎ去っていきます。でも要諦をつかんで書かれていますし、生煮えの知識を出してくるわけではありませんから、かゆいところに手が届くような心地よいわかりやすさがあり、そして面白みがある。

    歴史の流れを追っていく中で、たびたびの豆知識やちょこちょこ脱線する箇所がでてきます。しかしそれが、ただただ歴史の流れを追っていくならばずっと平面図を見ているような感覚でいるだろうところを、世界史勉強に起伏のようなものを感じることができる仕掛けになっている。といっても、著者にそういった意図があったかどうかはわからないですが。しかしながら、ほんとうに博識だからこそ成せる書き方ではあります。

    英国の王家ってドイツやフランスなど各国から連れてきていて、現在の王家はドイツ系なんだなあだとか、モンゴル帝国の版図の広げ方のすさまじさを改めて感じたりだとか、フランスの死刑執行人は代々サンソン家だった(漫画作品がありましたね)などのフランス革命の周辺知識だとか、京都を米軍が空襲しなかったのは、文化遺産を尊重したというのは日本人の誤解をGHQが利用しただけで、原爆投下の候補地のひとつだったからその効果を後で検証するべくそのままにしておいただとか、この本ひとつでも、雑談を咲かせるネタが豊富です。

    こうやってまず概観してから世界史の気になるところを知っていくのは方法として良さそう。著者は最後に述べています。学者でもない一般人は、「だいだい」知っていればいいのだ、と。何も知らないのでは困るけれど、でも「だいたい」でいい、ほどほどでいいんだよ、と言ってくれていました。気張らずに学べることって、ふつうの人には良いことです。

  • 「歴史は偶然の連続である」なんで時代の必要性とか小難しいことを考えずに面白おかしく読んでればいいのだ
    といった感じで、おおまかな時代の流れの中に、興味を引く小咄を散りばめ、興味を引くような作りになっていて楽しめた

    まあ、つまるところ、結局は、一般読書人の歴史の知識はだいたいでいいのである

    ただ、入門かというとちょっと違う、それなりにヘヴィーな内容でした
    あいかわらず小谷野敦の本は推薦図書が多すぎて大変だ。

    【なるほどな点】
    ・スポーツや藝術といった課外活動は「健全」で、普通科の「受験」のための強化は不健全だという、不思議な「差別」が働いていると、まことに深々と感じられるのです。(P10)
    ・歴史は単にあった事実だけを確定すればいいので、それ以外はただの「感想文」に過ぎにないのである。(P14)
    ・主に左翼的な知識人がいうように、どうせ人間は中立的になどなれない、だから自分のイデオロギーで書いちゃっていいんだ、というのはまったくの間違いで、中立的であろうと努力するということはできるはずなのである。(P25)
    ・「役に立つから勉強しろ」という及び腰はもうやめようではないか。面白いから勉強する、でいいではないか。(P33)
    ・(プラトンなどが説いた)「プラトニック・ラブ」というのは、もともと少年愛のことを言っていたのである。(中略)これを男女間の恋愛に当てはめたため、(性的交わりはなしにせよとか)おかしなことになったのである。(P79)
    ・第二次世界大戦以後、大国間の戦争はなくなったと言ってもいいが、それが果たして、平和思想が浸透したとか、諸国の政治家が懸命になったからかどうかは疑わしい。これは単に核兵器が発明されて、大国同士で戦争をやったら核兵器が飛び交って人類滅亡に至るからという、核抑止力のためであろう。仮に反核運動家が唱えるように、核を本当に廃絶したら、通常兵器による戦争が頻発することになるだろう。(P191)
    ・なんでこんなに戦争をするかというと、人間は退屈する動物だからである。(P191)
    ・「人権」という語は、政府に対する権利の意味であるが、現在では濫用されるに至っている。「言論の自由」にしても、本来は国家=政府に対する自由の意味だが、今では右翼の脅迫や襲撃に対しても使われる。(P204)

  • 歴史を語るにあたって著者の主観が大いに入っていてかえってわかりやすくなっている。
    宣教師たちはヨーロッパでは磔刑にされないので秀吉によって磔刑に処されてさぞ喜んでいただろうとか笑える。

    各章でさまざまな歴史本がさらさらと紹介されていて、ガイド本としても優れた一冊。巻末にまとめてほしかったなぁ!
    しかし日本の若者は歴史を知らなすぎるという指摘は耳が痛い。大学生でも中学生レベルと言っていて、はい、その通りですね…。私も知らないことだらけ。
    暗記重視の受験勉強スタイルへの批判はずっと続いているけれど、歴史のようにそもそも覚えなくてはいけないものもあるのでやっぱり一概に批判はできないよなぁ。

  • 「読書で知る世界歴史」みたいな感じ。
    歴史学的アプローチにはつながりにくいかもしれない。
    雑学書としての価値かな

  • 著者は比較文学者・小説家。高校で習うような世界史の内容を新書250ページで大雑把に書く。事実を淡々と書くのではなく、ちょっとした小ネタを挟む。例えばキリスト教の宗教改革については以下のよう。
    通説:ローマ教皇が免罪符を売るなどして堕落していた。
    解釈:カトリックでは、姦通を犯しても聴罪司祭に打ち明けて懺悔してしまえば許されるので、みなやりたい放題だった。
    旅行で訪れた後などにちょっとその国の歴史を振り返りたいときに手に取ってみるのがよさそう。

  • 歴史

  • ・夏殷周秦前漢新後漢三国西晋東晋南北朝隋唐五代北宋南宋元明清中華民国中華人民共和国「かいんしゅうしん、ぜんかんしん、ごかんさんごく、せいしんとうしんなんぼくちょう、ずいとうごだい、ほくそうなんそう、げんみんしん」
    ・イベリア半島はイスラムのウマイヤ朝が支配し、コルドバを首都として栄えたが、十世紀末から、キリスト教徒による領土の奪回の動きが始まる(レコンキスタ)
    ・シェイクスピアは、1564年生まれ、1616年死去「ひとごろしをしていろいろやった」

  •  小谷野センセは「全てをお見通し」らしい。だったら、他者を批判する時はもう少し丁寧に根拠を示して欲しい。でないと、単なる「ドヤ顔」としか見られませんよ。
     編集者の責任も重い。せめて主語と述語がきちんと呼応していない文章をチェックくらいはしてあげないと。
     感心した箇所がないとは言わないけど、余命が短いのでそれほど付き合ってもおられんから、中途ギブアップ。

  •  読む前にアマゾンのカスタマーレビューを見てみたら、ほとんどが酷評だったのでビックリ。しかし、読んでみたらけっこういい本だった。

     たしかに、記述がしばしば横道にそれて、ストレートな世界史入門というよりは世界史四方山話、世界史雑学集になってしまっているうらみはある。しかし、脱線話の中にも面白い指摘が多いし、私は大いに楽しんで読んだ。

     取り上げている事柄についてさらに知りたいときに読むべき本や、その事柄が描かれた映画やマンガなどが随所で紹介される。ゆえに、世界史を学ぶためのブックガイド/映画ガイドとしても読むことができる。

     アマゾンの酷評を見ると、「著者の、人を見下した“上から目線”がケシカラン」という批判が多いのだが、小谷野の「上から目線」は彼の持ち芸みたいなもので、ファンはそこまで「込み」で彼の著書を楽しんでいるのだ。
     小谷野敦に「上から目線になるな」と言うのは、イチローに「バットを振るな」と言うようなものである。

     世界史の随所に“補助線”を引き、理解を深めるきっかけを読者に提供するという意味では、優れた入門書だと思った。

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著者プロフィール

小谷野 敦(こやの・あつし):1962年茨城県生まれ。東京大学文学部大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士。大阪大学助教授、東大非常勤講師などを経て、作家、文筆家。著書に『もてない男』『宗教に関心がなければいけないのか』『大相撲40年史』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『現代文学論争』(筑摩選書)、『谷崎潤一郎伝』『里見弴伝』『久米正雄伝』『川端康成伝』(以上、中央公論新社)ほか多数。小説に『悲望』(幻冬舎文庫)、『母子寮前』(文藝春秋)など。

「2023年 『直木賞をとれなかった名作たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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