日本人のための「集団的自衛権」入門 (新潮新書 558)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105586

作品紹介・あらすじ

あらゆる疑問に正面から答える。冷静な議論のために――。その成り立ちや憲法との関係等、基礎知識を解説した上で、「戦争に巻き込まれる危険が増す」といった誤解、俗説の問題点を冷静かつ徹底的に検討した渾身の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 石破さんの本
    Q&Aが分かりやすい。
    この本を読むと集団的自衛権が行使できるようにいろいろと議論を深めていくことが必要だと感じたが、逆の立場からの本を読んだら自分がどう感じるか興味があるので、別の本も読んでみたい。

  • 石破さんによる集団的自衛権について書かれた本。
    メディアだけを見て、集団的自衛権についてわかった気になっていたが、実際に読んでみると非常に納得させられた。一方で批判もあるだろうが、論理としては非常にわかりやすく書かれた本であった。

    友達に「僕が誰かにいじめられたら助けてよ。でも、君がいじめられても助けられないんだ。だって憲法で決まってるから。そのかわりに支援はするよ。お金とかね」これでまかり通る世の中でしょうか

    さて、これを読んで知ったことによって考えることが大事であろうと思う。

  • 集団安全保障、集団的自衛権、個別的自衛権などなどニュースなんかで耳にするけど、あまり深く考えずにきてしまったので、わかりやすく書いてあって理解が進んでよかった。

    軍事・安全保障といえば石破さん!というイメージは自分も持っている。こういうまったく知識が欠如している事柄への導入には、こうした専門家の書いた本を読むに限る。そして新書はサイズも価格もお手ごろで丁度いい。タイトルどおり、素人にもわかりやすい。第一章で一通り述べられ、第二章では個別の疑問や反論に応えていて、それぞれわかりやすい。本書でも触れているが、テレビでは視聴率優先、時間的制約などの問題があって不十分。逆は成り立つかもしれなくて、こうした書籍で基本知識を身につけておけば、テレビの報道や討論も有益なものになりえる。

    偏りを避けるために、石破さんの意見に反対するようなちょうどいい本があれば読んでみたい。

  • 来週初めに安保法制懇の報告が出て、安倍首相が集団的自衛権の解釈改憲を行うのかが、焦点になっています(5月10日段階)。そんな中で最も近著の自民党幹部による集団的自衛権解説本である。

    「あらゆる疑問、懸念に正面から答える。冷静な議論のために」と帯にある。その通りで、わりと正直に答えているように思える。

    「必要であれば、地球の裏側にも行く」「アメリカに飛んでいく弾道ミサイルを撃ち落とすことは現状出来ない」「ホルムズ海峡の地雷除去も警察権的行使で出来る」など、従来の自民党の主張をアッサリ覆しているところもある。しかし、多くは突っ込みどころ満載の内容だった。

    「大前提として強調しておきますが、集団的自衛権というのは「戦争をしかけられる確率を低くするための知恵」です」(141p)
    石破さんの歪な頭の中ではそうなのかもしれないが、戦後の歴史と、現代のアメリカ発信に寄らない国際情勢をきちんとみれば、何の根拠もない主張だということがわかるだろう。

    「アメリカの巻き添えになるだけではないのか?」という疑問には、「相反する二つの恐怖が同盟にはつきまとうのです。それは「同盟国の戦争に巻き込まれる」恐怖と「同盟国に見捨てられる」恐怖です」(144p)と答えています。かなりホンネだと思えますが、見捨てるのはアメリカの大企業だろうし、見捨てられて怖いのは、日本の一部だということは述べられていません。

    そんなことのために、日本が営々と戦後60数年積み上げて来た憲法9条のある国という名誉を投げ捨てていいものだろうか。いや憲法9条があったからではない、と石破さんは言います。「日本が他国に攻め込まれなかった主な理由は、日米安全保障条約があり、アメリカという強大な軍事力をもつ国と同盟関係にあり、自衛隊という自国を守ることが出来る組織があり、といった条件が揃っていたから、と考えるのが自然でしょう」(154p)
    まったく理解出来ない。というのが、私の正直な気持ちです。戦後の日本の歴史の中で、ベトナム戦争にしても何にしても、何処に日米同盟以外で他国から攻められる契機があったのだろう。

    「イケイケドンドンにならない。制限をかけるのだ」とも言っている。しかし、石破さん自身が「スタート段階はかなり(範囲が)限定されたもの」といいつつ、「もし必要であれば、それをさらに広げることは可能だ」と語っています(5月2日)。こういうのをペテンとは言わないのか?限定というけれども無限定となり、どこまでも広がっていくだろう。

    因みに「集団的自衛権が国家にとっての自然権であることはすでに国際的には、議論の余地がないほどに受け入れられている」(31p)というのは、まったくの反対であって、国際的にも国際司法裁判所の判決でも、反対の流れになっているのである。それはこの本より半年前に出された「集団的自衛権の深層」(松竹信幸)に詳しい。
    2014年5月4日読了

  • 政界きっての安全保障政策通が、「集団的自衛権」の成り立ち、日本における解釈の変遷、リスクとメリットなど、あらゆる疑問に正面から答える。現在準備中の国家安全保障基本法案の概要も掲載。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40203173

  • 「集団的自衛権」と聞くと、イコール他国の戦争に巻き込まれるといった危険、をイメージしがちである。しかし、昨今のウクライナ情勢に垣間見られる様に、今日の安全は明日の安全には繋がらない。結局のところ、身近なレベルで国家の危機をどう考えるか、という問題意識を持つことが大切であると考える。誰も戦争が利益を生まないことは理解しており、国際社会と上手く連携し、集団安全保障の緊密さを高める上でも、よく考えたいテーマである。

  • この国の武装のあり方を分かりやすく説明しているのだが、深みが足りない。それは過激やヘイトを求めている事ではなく、過去の戦争から何を学んだのか反省すべき課題を提示することにある。ま、あくまで主題は集団的自衛権に限っているのだから、ではなくそこまでの言及が必要だと考える。

  • 石破幹事長による、集団的自衛権を巡るこれまでの議論のまとめ。集団的自衛権を巡る議論はもう、完結しているんだなと再認識。自衛権を巡る憲法解釈が今までどのように変化してきたのかについてもわかりやすくまとまっている。かなり無理していろんな意図を込められている『憲法解釈』がいかに変わってきたのか。そして、『憲法解釈を変えるな』がいかにこれまでの経緯を無視しているのかがよくわかるw公明党は何周遅れなんだよとw

  • さすがに詳しい。「如何にして無知の衆愚を説得するか」という文体が鼻につく。同じ論調の繰り返しがおおいのが残念。タイムリーに読めば面白い。

  • 非常に丁寧に、初心者でも分かりやすく、実例を用いて説明してある。

    集団的自衛権、個別的自衛権、集団安全保障、色々言葉があり、あたりまえだが各々が違い、それを理解しないと話はすすまない。
    集団安全保障とは、国連の対応のことで、平和を壊したり、侵略をしたりする乱暴な国が現れたら、国際社会が一致協力して対応し、平和を取り戻す。これが集団安全保障という概念であり、全ての加盟国が国連と言う仲間であるとした上で、その仲間内から約束を破る乱暴者が現れたら、その他の仲間の国々が共同して制裁を加えると言うことだ。ただ、集団安全保障は、安全保障理事会が対応を話しあうが、常任理事国が1つでも拒否すれば機能しないし、安全保障理事会が対応を決めるまでには少なからず時間がかかる。それまでに何の手も打てないのか、ということになる。こういう声にこたえる形で考えられたのが、国連憲章第51条だ。これは、簡単に言えば、「自国が攻められた場合に、国連の安全保障理事会がちゃんと対応してくれるまでの間は、その間を埋めるつなぎとして、個別に自衛権を行使して戦ってもよい。また、不断からつきあいのある仲間同士で協力して自衛権を行使して戦ってもよい。その二つの自衛権を国家は固有の権利としてもっている。ただし、事後でいいから安全保障理事会にはどういうことをしたか報告しなければならない」ということだ。もう分かったと思うが、前者が個別的自衛権で、後者が集団的自衛権だ。集団安全保障という考え方やそれに基づく体制は尊重しなければならないけれども、それだけでは現実的に対応できないこともあるので、この51条があるのだ。
    個別的自衛権については結構わかりやすい概念で、言ってみれば正当防衛みたいなものだ。しかし、集団的自衛権については、わかりにくく、解釈については世界中で議論がなされている。
    集団的自衛権についての考え方の世界の主流は、「ある国が攻撃された場合、それは自国への攻撃と同様にみなすことができる。だから、そのある国の防衛に関与することは自国を守るのと同様であり、正当である」という考えだ。
    もうひとつ議論の対象になるのは、固有の権利というところだ。英語、中国語、フランス語に訳されているものを見ると、それは、自然権、と言う解釈になる。そう、生まれながらにして持っている権利だ。個別的自衛権も集団的自衛権も固有の権利、独立した国が生まれながらにして持っている権利で、だれもそれを否定したり、奪ったりすることは出来ない権利というものだ。これは国際的には議論の余地も無いほど受け入れられているのに、日本ではそうではない。
    この集団的自衛権の現在の日本の解釈は、「主権国家である以上、国際法上、わが国は集団的自衛権を有しているが、憲法第9条において許容される自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲内にとどまるべきもので、集団的自衛権の行使は、その範囲をこえるものであるため、これは行使できない」というものだ。これは1981年、鈴木善幸内閣においての政府答弁書の内容・見解で、「保有しているが行使できない」という今日の日本の解釈だ。
    当然、お隣の中国、韓国も集団的自衛権を保有している。例えば韓国に北朝鮮が戦争を仕掛ける場合、日本が集団的自衛権を行使して、韓国と共同して北朝鮮に対抗するとしたら、北朝鮮も相当考えなければならない。しかし、日本が集団的自衛権を行使しない、韓国を助けないとなると、北朝鮮は、敵が一人いなくなったと同じであり、少し韓国を攻撃してみようか、となる。集団的自衛権は、戦争を仕掛けられる確立を低くするための智恵であるのに、集団的自衛権を持ったら、危険だと、一部の人やマスコミは騒ぎ立てているのだ。
    集団的自衛権の行使がOKとなれば、アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか、という人もいる。これを同盟のジレンマ、と言う言葉で説明すると、同盟には相反する二つの恐怖がつきまとうということだ。それは、同盟国の戦争に巻き込まれる恐怖と、同盟国に見捨てられる恐怖だ。日本では、前者のアメリカに巻き込まれるばかりを強調する。今の現状をみると、巻き込まれるよりも、見捨てられる恐怖も日本はきちんと直視しなければならない。アメリカの力は落ちてきている。逆に、中国の力が大きくなりつつある。そのようなとき、日本は、アメリカをこれまで以上に巻き込んでおかなければならない。アメリカだって、善意で日本を助けてはくれない。アメリカの納税者もそれは許さない。アメリカの利益がない限りはこれからはアメリカは動けない。当たり前の話だが。「なぜ、日本のためにアメリカ軍が動くのか」と一致してアメリカ国民が言えば、アメリカも簡単に軍を動かせないのだ。また、9.11テロの際、アメリカは個別的自衛権を行使し、NATOは集団的自衛権を行使しアフガニスタン攻撃を行った。その後、集団安全保障にきりかわったが。なので、理論上は、あの時、日本が集団的自衛権の行使が可能であったなら、アフガニスタンの戦いに参加した可能性はゼロではない。ただし、これは可能、というだけであって、実行するということとはイコールではない。日本に集団的自衛権があっても、それを行使するには国会の事前承認が必要となるだろう。行使できる、と行使する、はまったく別なのだ。9.11に関して言えば、日本人も犠牲になっている。だから、解釈によっては、個別的自衛権も発動できたかもしれない。ただ、日本人の感覚として、いくら国民が殺されたからといって、それで自衛権を発動して敵国を攻撃しようと言う話にはならなかっただろう。それが日本人にとっての常識的な感覚だと思う。つまり、問題は、集団的か、個別的かというのではなく、最後はその国それぞれの判断によってきめるということだ。
    日本の豊かさは決して日本単独の力で得られているものではなく、国際社会の様々な要因と結びついている。だからこそ、日本がGDP上位の国として平和と繁栄を享受出来ているのは、国際社会の平和や安定の恩恵を受けていると考え、国際の平和と安全に寄与すべく、集団的自衛権を行使できるようにしておく必要があると著者は言う。

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著者プロフィール

1957(昭和32)年鳥取県出身。慶應義塾大学卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)に入行。1986(昭和61)年、29歳で衆議院議員初当選、以来9期連続当選。農林水産政務次官、農林水産総括政務次官、防衛庁副長官、防衛庁長官を経て、2007(平成19)年に防衛大臣、2008(平成20)年に農林水産大臣。自由民主党では過疎村対策特別委員長、安全保障調査会長、高齢者特別委員長、総合農政調査会長代行、政務調査会長等を歴任。2012(平成24)年から自由民主党幹事長を務める。主な著書に『職業政治の復権』、『国防』、『国難』、共著に『坐シテ死セズ』、『軍事を知らずして平和を語るな』、『こんな日本を作りたい』など。

「2013年 『国防軍とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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