知の訓練 日本にとって政治とは何か (新潮新書 578)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105784

作品紹介・あらすじ

“知”を鍛えれば、「日本の根源」がはっきりと見えてくる――。天皇、時間、都市、宗教、性……私たちの日常に隠れた「政治」の重要性を説き明かす。第一級の政治学者が、長年の研究成果を惜しみなく盛り込んだ白熱の集中講義!

感想・レビュー・書評

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  • 日本にとって政治とは何か、このサブタイトルに従って大学の講義形式で政治と天皇家の政事(まつりごと)を比べその本質を綴っていく。その観点は「時間と政治」においては現代社会で当たり前となっている西洋の太陽暦によって時間に支配される国になったこと、政治と宗教の関連性など身近にあるものが如何にして制度化されていったか、そこに政治がどの様に関わってきたか、更には天皇の関わり合い方についても同時並行的に流れるように説明されており、内容が非常に濃くなっている。この様な授業なら学生も飽きずに講義を聞くことができるだろう。
    前述の時間と政治の関わり合い以外に、特に政治に影響を及ぼしやすい神社や宗教について多くのページを費やして説明されている。ここで言う政治とは身近なルールなど政治的に作られるものも対象となる(学校の日直なども、みんなで話し合って決める=政治)。
    政治と神社の関連で言えば、総理大臣の靖国参拝などが騒がれるが、国内にある多くの神社の成り立ちや祭神などにも触れている。特に天皇と伊勢神宮、出雲大社の関係性の背景にある壮大な神話は面白い。日本書紀や古事記を読む学生などはそう多くないだろうから、判りやすい政治の話と絡める事で理解を深めたり興味を持たせる事ができるだろう(自分の学生時代にこの様な授業あったかな)。
    後半では政治と都市、地方の関係に触れる。何気なく過ごしている自分の街がどういった思想で作られてきたか、特に東京や大阪に住む人なら二つの都市の違いを思い浮かべながら覚えていく事ができるだろう。地方出身者も街のために尽くす政治家の背景に興味が湧くだろう。講義後半の女性と政治の関係も、女性の社会進出が大きな課題となっているリアルな今の課題解決に役立つはずだ。
    学生時代は遊びやバイトばかりで学校の授業は卒業後するための面倒な時間とばかり感じていた。それでも大講堂で一番前の席に座るぐらいの姿勢だけは見せ続けたが。進んで学びたいと考える学生ばかりではないから、こういった興味を唆る授業と講義を準備する事が、将来の日本の政治を変えて行く事だろう。

  • 明学の講義録。政治と祭祀を合わせた日本の「まつりごと」について歴史的に考える事で、より深い思考を身につける事が目的との事。
    講義名は「比較政治学」らしいが何かと比較しているわけではなく、内容的には政治文化論というか政治社会学的という印象。著者の得意とする時間・空間だけでなく、宗教や女性といった観点からもアプローチ。このような独特のアプローチは日本政治思想史業界では色々と意見もあるようだが、思想家やテクスト主体のコテコテの政治思想史よりはこういう学際的な方が学生ウケはよいのではないかと思われる。そもそも日本政治思想史は好き嫌いに関わらず「天皇」抜きでは語る事はデキナイし。
    概して「天皇」がテーマになると左右からイデオロギー的な偏向が見られる事が多いのだが、著者の場合はその辺は中立的で淡々と語っている点は評価できる。

  • 日本政治思想史を専門とし、政治の発生を「神社」「広場」「鉄道」などの具体的な場所に着目する「空間政治学」を提唱する学者が解き明かす「この国のかたち」。日本の政治を多角的な視点で捉えた内容で、明治学院大学の国際学部(横浜市)で著者が2011年9月から2013年1月にかけて行った講義「比較政治学」の講義を新書にまとめたもの。今の大学生に是非おススメしたい一冊。

  • 社会
    政治

  • 池上彰の番組のようにわかりやすい。

  • 【由来】
    ・新潮新書メルマガ

    【期待したもの】
    ・「知の訓練」というタイトルに加えて「政治とは何か」というサブタイトル。政治についての視点を強化してくれる本かと期待した。

    【要約】


    【ノート】
    ・残念ながら期待はずれ。講義録の形態なので読みやすかったが。

    ・「いったん作られてしまうと、その誰かの手を離れて、時間そのものが支配者となる。したがって、たとえ天皇の意思がどうであろうと、時間という支配者に背いた場合には、死をもって償うしかなくなるほどの重大問題になるわけです。」(P37) 思わず「規範」の話かと期待したが、あまりそれ以上はふくらまなかった。

    【目次】

  • 著者が明治学院大学でおこなった講義をまとめた本で、日本の近代以降の政治史を政治と祭祀の両面をもつ「まつりごと」の歴史としてとらえ、そのなかで皇室がどのような意義をもっていたのかということが具体的な事例にそくしてわかりやすく語られています。

    日本の近代史を専門としない学生に向けての講義がもとになっていると思われるのですが、著者がこれまで取り組んできたテーマのいくつかについて、平明な紹介がなされています。ただそのぶん、一つひとつのテーマにかんして掘り下げるということはなされていません。

  • 読み進める度に新しい発見があり、非常に面白かった。是非続刊も読みたい。

  • 大学の教授が講義を記した一冊。

    日本人にとって政治というのはどういう位置づけで、天皇制がどういう位置づけであったかというのを、著者の視点を通じて知ることができた。

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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