キラキラネームの大研究 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106187

作品紹介・あらすじ

苺苺苺と書いて「まりなる」、愛夜姫で「あげは」、心で「ぴゅあ」……。珍奇な難読ネームが日本を席巻しつつある。その意外なルーツは日本語の本質、漢字を取り入れた瞬間に背負った宿命の落とし穴だった。目からウロコの日本語論。

感想・レビュー・書評

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  • 名前の付け方、読み方について詳細に記されており、読む価値のある本です。タイトルは軽いですが中身はまっとうで社会人の知識として損はないものです。

    本書第六~第七章の考察で多くは理解できます。
    字の持つ意味を無視した漢字を用いことへの解釈は丁寧に解き明かされていますが、私には文化的側面が抜け落ちているように感じます。
    微笑ましいキラキラネームではなく、愛夜姫と書いてアゲハと読ませる子供を水商売にするつもりかのような親の精神構造、DQNネームの問題には突っ込みが足りません。(伊藤氏は文中でDQNネームの呼称を何度も使用している)
    序盤で多少触れられていますが、結局は程度の低い親の問題かもしれませんが、伊藤氏はその特定を避けています。
    それは、本書のレビューに一つ星を付けた、上から目線で名前を語るなと書いた人が居るように、中年以降の年齢からすれば珍妙極まりない名前であっても一生背負わなくてはならない方への配慮でしょうか。
    提言しておけば哀れな名付へのブレーキになったかもしれないのに。

  • タイトルが秀逸。
    タイトルだけだと、「キラキラネームにはこんなんありますよ。ひどいでしょう。世も末ですね。」みたいなことが書いてあるように思えるが、実際は非常に真面目で、キラキラネームへの偏見が消失してしまったほど。

    これが、内容に即して「読めない名前の近代史」みたいな真面目タイトルだったら、自分含めて誰も買わなかっただろうな。どこでこれを買ったか全く覚えてないが、自分も絶対タイトルに惹かれて買ったんだろうし。

    自分もキラキラネーム、DQNネームはクソだなと思ってたし今もそう思ってるけど、単に流行りとかそういう話じゃないんだなと気づいた。
    今だけ起きてる問題というわけではなく、理由はもっと根が深く、しかも長い歴史がある。

    そもそも大昔の神代の時代から、神様の名前が完全に読ませる気のないものばかりだった。確かに。
    木花開耶姫命とか当て字にも程がある感じがするし。
    また、いわゆる難読名字である小鳥遊、月見里(やまなし)、八月一日(ほづみ)、子子子(ねこし)など、落語かな?と思うようなエピソードで名付けられたものも多く、キラキラネームと大して変わらないと言えばそう。

    明治時代にも英語名を漢字で表したようなキラキラネームが多かったらしい。
    亜幌(アポロ)、亜歴山(アレキサンドル)、丸楠(マルクス)など。
    森鴎外も子どもたちが於菟(おと・オットー)、茉莉(まり・マリー)、杏奴(アンヌ)、不律(ふりつ・フリッツ)、類(るい・ルイス)という完全に外国かぶれと言えそうな名前をつけている。ただ、今見てもそこまでキラキラしているわけではないのがさすが森鴎外というところか。
    於菟は漢文が元ネタらしく、この頃の知識人たちは漢字の見た目や音ではなく、きちんとした知識に基づいて名付けをしているのがほとんどとのこと。
    まあ、自分としては考えがあろうがなかろうが、読みにくければどれも大差なくダメだと思うけど…

    また、和子という普通の、しかも今では古い感じの名前も「和」を「かず」とは普通読まない名乗りの一種だったとか、そういう話は幾らでもあるため、光宙と書いてピカチュウはネタが極端なだけで似たような名前は昔から存在していた、つまりキラキラネームは今だけの問題ではない、と。

    そこそこ最近の話で言えば、発端は第二次世界大戦の敗戦。
    GHQの方針で漢字がまずなくなりかけた。なんやかんやでなくならなかったが、教育をしていくためにも教育しやすくするためにも常用漢字というものが作られ、その過程で漢字の本来の意味がかなり失われたまま人々に覚えられてしまった。
    そして教育のおかげで人々の漢字知識水準が上がり、同時に漢字への敬いも減ってしまい、漢字を気軽に扱うようになってきてしまった。
    更に最終的なきっかけであるインターネット。これで漢和辞典なんて見なくても簡単に漢字を検索できるようになってしまい、意味はそっちのけで見た目や音だけで漢字を選ぶことができるようになってしまった。
    また、世代的にちょっと前から親になりはじめた人たちが緩くなってきた漢字教育で育った直撃世代であり、子供の名付けのために使う漢字の自由度が半端なくなっていて、それが変だとも思っていない。
    つまり、今後これは加速していき、キラキラネームが常識になっていくだろう、とのこと。
    だが、やはりこれは日本語の大切な要素である漢字、そしてその意味を失っていくことではあるので、キラキラネームが悪いとかではなく、それと別の話として漢字という伝統を守るためになんとかしなければいけない。

    途中で漢字が中国から入ってきた時代まで遡り、戦前戦後の話になってしまい、内容は大変面白かったもののどうやってキラキラネームという話題に戻ってくるのだろうかと心配していたら、とてもきれいに結ばれていた。
    あとがきで作者自身も非常に苦労したと書いていたが、確かにそんな感じの内容だった。それをこんな上手くまとめた良い本にしたのはすごいし、非常に面白い内容だった。意識が変わるのでオススメ。

  • そうそう、こういうこと知りたかったんだよな、という一冊。

  • 真柄まがれっと
    雪しゅがー
    心ぴゅあ

    かわいい

    漢字、響き、画数、

  • 歴史も知れて良かった

  • キラキラネームの起源、遡ること1000年以上前の話になっていて非常に面白かった。
    歴史上の有名な人物も子供には独特な名前をつけていて意外だった。
    昔は教養のある人だけが漢字を使っていたという事実を知れてよかった。

  • 名付けを考えるのに参考になるかと思って読んでみた。
    興味深かったのは”漢字”と日本人の関係性について。
    漢字は元々中国のものだけど、それを日本文化に融合するときに(融合の仕方によって)漢字をどう捉えるかが全く異なっている。
    しかも、漢字を使い出したのは平安時代なのに、昭和になってもまだ漢字をどうするかという議論をしている。志賀直哉なんか日本語は「不完全で不便」だからフランス語にしようという始末。
    著者は昨今のキラキラネームは”漢字”ではなく”感字”によって起きていると表現している。”声の文化”はひらがなで、”文字の文化”は漢字で、というバランスが崩れ、声の文化のみが優先された結果がキラキラネームの発端と考えている。
    キラキラの境目は難しいけれど、きちんと由来を話せる名前にしたいなと思う。

  •  キラキラネームの法則性や無理読みの伝統、忌み名、やまとことばといった日本語の本質を探りながら単に親の知性の無さ、といった問題ではなくキラキラネームとは明治以後の国語政策の歪さが表出したものであり、字義や語源の意味合いを無視した字面のイメージや音の響きのみに特化した漢字のカジュアル化「感字」の結果である。との著者の指摘には唸らされました。

     出来れば、その感字化に対してどのような対処を取るべきなのかの提言があればもっと良かったのではないかと思いました。

  • まず先に、率直な感想を一言。
    プレママパパさんたちに必要なのは、名付け辞典ではなく、「名付け」という儀式のもつ意味や歴史を伝える本なのかな、と。。。

    この本ほ、キラキラネームを第三者の視点から、肯定も否定もほどほどに検証していくので、押し付けがましくなく読みやすかったです。
    わたしが20代半ばで、わたし自身は出産未経験ですが、似非キラキラネームを子に名付けている友人は結構いて…。
    しかも、わたし自身が似非キラキラネームに慣れていて、違和感が薄れていて、本書に登場するキラキラネームも「え??これもそうなの??」ということも、多々ありました。
    最近登場した言葉だし概念だし、人や環境によって範囲にズレがあるものではありますが、日本における「名付け」という儀式についても知ることができました。

  • 難読の「キラキラネーム」が増えているという話は、以前から話題にはなってきた。
    本書以前にも、そういう名づけが、音重視も発想に、「世界で一つだけ」の名前をプレゼントしたいという親心から起きた現象とか説明されていた気がする。

    本書では、キラキラネームを命名する親たちは、実は存外キラキラネームはイタい、と思っていることを指摘していて、そこがまず面白い。
    で、結論的には、日本の漢字政策も反映、つまり漢字の意味を考えるべきとする「漢和辞典的規範」意識の薄れが原因とみている。
    その結論自体は、失礼ながら、なんとなく予想通り。
    その過程で、名づけや言語意識を歴史の中で確認する章が続く。
    例えば、明治初期、戸籍で一人一姓一名に制限して登録せざるを得なくなったときの、明治の元老たちの対応が面白い。
    実名を登録した人、通称を登録した人様々なのだが、係が間違えたり、代理人が間違えたりして、違う名前になってしまっても、当人はあまり気にしていなかったとか。
    私はこういった個々の事実も面白かったが、この辺りは読む人によってはまどろっこしいと感じるかも。

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