英語の害毒 (新潮新書)

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著者 : 永井忠孝
  • 新潮社 (2015年6月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106248

英語の害毒 (新潮新書)の感想・レビュー・書評

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  • 「ベーシック英語を普及させることは、イギリスにとって広大な領土を併合するよりも遥かに永続的で実り多い利益になる」(ウインストン・チャーチル)。「何百万人もの人に英語の知識を与えることは、その人たちを奴隷にすることである。(中略)インドを奴隷化したのは我々英語を使うインド人だ」(マハトマ・ガンジー)。

    これらの言葉に象徴されるように、日本人を英米の奴隷化に向かわせているのが、日本人の英語に対する誤解と昨今の英語教育である。その背景には、英米による自国のイメージを良くし、経済戦略の一環として英語を普及させるため、陰に陽に様々な政策があった。日本は、まんまとその手に乗ってしまっているのだ。
    確かに昨今の英語教育の早期化、会話重視の方向には、日本経済界の後押しがあるわけだが、その背景には、日本の大企業における外国人の持ち株比率の上昇があり、献金を通して日本の政治に影響を与えている結果でもある。

    言語能力には、「会話言語能力」と「学習言語能力」があり、その両方の能力を以ってProficient Bilingualといえるが、日本人の多くの関心は、英語の「会話言語能力」に限られる。つまり、アメリカ人のようにスラスラと話せることに目標がある。「カッコいい」と思うからだ。英語はファッションのひとつなのである。「会話言語能力」を重視し、「学習言語能力」を軽視する教育は、英語による経済支配を目論む側(英米)からすると極めて好都合でもある。

    「会話言語能力」を高めるために犠牲にする時間と労力を考えると、総合的な学習能力の低下に繋がるのは明白だ。昨今の英語(英会話)重視の一方にある理数系の軽視が日本の国力の低下に繋がると考える人は少なくないはずだ。英語が話せると一流市民になったような錯覚を多くの日本人は持つが、アジアの国の中で、英語を公用語のひとつとしている国の現状も認識しておく必要があるだろう。

    著者がいう、昨今の会話重視の英語教育が日本人にとって害毒であることは認める。そのために、読み(書き)中心の英語教育に戻すことも賛成である。しかし、「世界の主要な地域言語」(アラビア語、ヒンディー・ウルドゥー語)や「日本に固有の言語」(アイヌ語、手話、琉球語など)を含めて、中学生から3つの言語を学ぶという提案には賛同し難い。全ての人が限られた時間の中で学ぶべきものとは思えない。今の誤解の多い英語学習が、他の重要な学習時間を犠牲にしているという著者の問題意識からすると、矛盾しているようにすら感じてしまう。むしろ、日本語能力や数学的な思考力を高める学習時間に振り向ける方が遥かに重要ではないだろうか。
    また、全体的に政策者側の視点が中心となっているので、英語学習者側に対してどれほど訴えられるかという危惧も少しはある。

    以上のような疑問はあるものの、現在の英語学習についての問題を、様々な根拠を示しながら提起しているので、英米の罠にはまった英会話ブームを冷静に見つめるには、有効だと思う。

  • 英語の勉強をサボる言い訳に。

  •  この本には「英語ムラ」という言葉が出てきますが、日本の英語学習を取り巻く構造は、「原子力ムラ」に大変よく似ていると思います。この国の英語教育の最大の問題点は、教育とは無縁の者が、己の利となるよう思いついた案を、英語を真剣に学んだことなどない権力者が言われるままに採用し、それが教育現場で強力な強制力を発揮していることにあります。その結果、英語教育は急速に、教育ではないものに変容してしまっています。
     戦争と平和、環境問題等、しっかり考えるべき重い話題の課ですら、「質問ゲーム」等で、軽く、楽しく扱われることが奨励され、こうした題材には別の教え方が相応しいかもしれないといった発想自体、授業者は持てなくなるようにされています。同じく言語の教科書である「現代文」の、例えば夏目漱石の「こころ」を、こんな風に教えることなどありえないでしょう。
     こうした状況のもと、読むに値する文章は教科書から減っていき、教科書は内容、量とも、薄っぺらなものになってしまっています。その結果、英語とは楽しくなければいけない、或いは、利益を生むためのものといった狭く歪んだ言語感が、隠れたメッセージとして学ぶ側に伝わってしまい、それが拡散していきます。
     本書の最大の意義は、英語を取り巻くそうした構造を、データを用いて明らかにしたことです。本当に真剣に英語の学習に取り組み、現在も学習している者、教育の一環として英語の学習を捉えている者は皆、会話重視、早期「教育」、外部試験偏重など、考える力、高度な英語力の養成、ともに期待できない現在の英語「教育」に危機感を抱き、なんとかしなければという思いを持っています。しかしそうした、現在の流れに異を唱える意見が、英語教員向けの研修会できちんと取り上げられ、まともに議論されることは、ほとんどありません。
     実情は、英語ムラの要請に沿った「模範授業」なるもののDVDが現場に配られ、多忙の中、それを視聴しないでいると、なぜ見ないのかと理由を問われ、教員は、英語ムラに沿った授業がどれだけできるかを日々測られています。
     本書にもそうした記述がありますが、大手メディアがほとんど信用できなくなっている現在、本当に誠実な意見は書籍でしか表明できなくなってきています。本書が、英語教育関係者のみならず、多くの人に読まれることを、心から願います。
     最後に、一見あまり関係ないようですが、「本当は憲法より大切な日米地位協定入門」(前泊博盛)、「ナガサキ 消えたもう一つの原爆ドーム」(高瀬毅)等との併読をお勧めします。

  • 英語化はアメリカの陰謀。日本人の奴隷化。
    そういう危険性もよく認識しておくべき。
    バイリンガルは、日本語も英語も中途半端というのは、話を聞く限りそうなんだと思う。

  • 5章が提言。
    それが妥当であるか、実現するにはどういう障害があるか、具体的な話を読みたかった。

  • 40年間の会社生活である程度英語を使う仕事をしてきたが,普通の会社で英語が必要な人は5%以下だと思う.従って,日本人が英語を学びたがることに疑問を持っていたが,本書はそれを完全に裏書きしてくれる.p59のバイリンガルの分類でセミリンガルになることのデメリットがよく分かった.第5章の提言,すべて大賛成だ.英語以外の言語に目覚めさせる意味で,p179の3群は刺激になるだろう.近所の公民館で子供に英語を習わせているお母さんがたがいるが,自分である程度英語ができる人は,絶対にやらないことだと思う.日本語がうまくしゃべれない人に英語がしゃべれるはずはない.

  • 昨今の英語教育や社会の英語偏重に対して、英語の必要性やどの程度のレベルまで学ぶべきかなど具体的、理論的に反論している本。

    英語本のなかでもおすすめ。

  • 目からウロコです。
    賛否両論いろいろだと思われますが、私は賛成です。
    ただ、ここにかかれていることに対抗する術は持ち合わせていないから、どうするべきかなーと。
    恐るべし、ゆとり教育、英語教育、TTP!TTPについてはあんまりよくわかっていないので、また別に調べてみようかと。
    個人的には英語よりスペイン語の方がカッコよくて好きです。全然しゃべれませんけど^ ^

  • 日本の加熱した英語教育は、アメリカの差し金であり、日本人が英語をしゃべれるようになることは、アメリカの利益になるのだ、ということを様々な例を挙げて説明している。
    かなりこじつけに聞こえる。
    いちいち反論しながら読み進めてしまった。
    一理はあるが、著者の説を全て納得はできない。
    ただ、最後の章だけはうなずけるところがあった。

  • 本の帯にある言葉の意味が、読み通してわかりました。英語が出来なくてはいけないという幻想や焦りから解放される気も。必要度は、その人の事情で違うもの。義務学校での英語教育のあり方など、提言をしながら他言語との関わりを論じる良書です。日本語を大切にしたいと思います。

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英語の害毒 (新潮新書)の作品紹介

会話重視、早期教育、公用語化――“英語信仰”が国を滅ぼす! 気鋭の言語学者がデータにもとづき徹底検証。「日本英語はアメリカ英語より通じやすい」「企業は新人に英語力を求めていない」等、意外な事実も満載の画期的考察。

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