さらば、資本主義 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106415

作品紹介・あらすじ

人間が破壊される前に……稀代の思想家からの最後の警鐘。豊かさと便利さを追求した果てに、なぜ行き場のない世界になったのか。経済成長の空虚、地方創生の幻想、ITと金融の大罪など、この社会の限界と醜態を鋭く衝く、警世の書。

感想・レビュー・書評

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  • 「価値の選択」には「思想」が必要です。

  • 経済成長と物質的豊かさ、世界での地位を追求してきた戦後の日本は、なぜ、こんな奇妙な社会になったのか。日々のニュースの本質を鋭く衝き、資本主義の限界と醜態を、次々と浮かび上がらせる。『新潮45』連載を加筆・改編。【「TRC MARC」の商品解説】

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    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40232048

  •  以前小林よしのり氏が「自民党は保守じゃない」と言って、公然と自民党批判を展開しておられました。その時はどういうことかよく分かっていなかったのですが、今回本書を読んで、なんとなく分かったような気がします。小林よしのり氏と佐伯啓思氏を同列に並べるなとおこられる気もしますが。

  • 資本主義の話というよりも戦後日本の政治経済についてのエッセイのよう。

  • 資本主義を考え直す切り口を幾つか提起してくれている。資本主義が万能ではない事は、肌感覚で理解しているつもりだが、より良い制度は中々具体的に提案できるものではない。更に、トマピケティが言うような格差が拡大したからと言って、それは程度問題であり、競争原理を基礎とするからには、課税方式を工夫しない限り、資本主義=勝敗を決する仕組みというのは自明である。問題は、イノベーションの成熟を遂げた瞬間、その産業は拡大性を失い単純労働に陥る。単純化されれば、価格競争に陥り、労働生産性が低下。生産物は必要なのだが。実は今、日本社会の至る所でこのジレンマに陥り、イノベーションの限界を認める勇気がない事から研究開発部門を残し、そこも無理矢理仕事をしなければならないものだから、不必要な機能をつけた製品が溢れかえったり、国際的な競争力を失いつつある。日本の強さは、こうした技術力の成長段階において、真面目に仕事をしてきた国民性だが、真面目さが仇になるかも知れない。難しいテーマだ。

  • 恒例の2018年GWの大掃除で部屋の隅から、読みかけの本を発掘しました。GW前に読み始めた本でしたが、途中で読みたい本を先に読んでしまったために、いつの間にか隅に追いやられていました。先ほど読み終えました。

    スキャン読みですが、気になったポイントです。

    ・2014年12月の衆議院総選挙にて、そもそも野党が解散するな、というのは奇妙な話である。野党が解散を要求して国民の信を問えとどなり、与党が何かを口実を使って権力にしがみつく、のが普通の構図である(p95)

    ・90年代半ばから日本はデフレ経済下していくが、その原因として、1)日銀の金融緩和の不徹底、2)改革の遅れ、3)所得格差など、が指摘されてきたが、構造的な原因として、1)人工減少、高齢化社会の到来、2)グローバル化、3)このような状況下において構造改革をしたこと(p105)

    ・ピケティの主張のポイントは、経済格差を生み出すものが、所得というよりも資本の格差だと言っている。資産をたくさん持っているものは、それを投資して金持ちになり、その格差が拡大しつつある、資本からの収益率(r)が成長率(g)を上回る限りこれは続く、利潤は内部留保にまわされ、企業買収に使われ、金融市場に投資されるので、経済成長には結びつかない(p136、140、180、183)

    ・成長に基づいて、物的な富の蓄積をよしとする今日の価値観の転換が必要である、今の価値感は、1)物的な富や利便性の追求は無条件で望ましい、2)人間の活動の可能性を無限に広げる、つまり自由の拡大を無条件でよしとする「自由への欲求」、これにとらわれている限り、効率性・平等性のスパイラルから抜け出せない、この2つの欲望が資本主義をけん引してきた(p154、187)

    ・市場経済理論が科学であるとは、すべてを数字で表現することであった(p162)

    ・IT革命によってもたらされた情報技術、効率性本位の競争的市場、株価中心の企業経営、資産をすべて金融化してしまう金融中心経済、が瞬時にほしいものを手に入れられる世界を可能にしてしまった。そのため、現代社会を動かすものは、衝動的・短期的・自己中心的、となった(p209)

    2018年5月5日作成

  • 佐伯先生「渾身の」時事評論です。
    反・不幸論から続いてます。4作目?くらいです。
    時事のひとつひとつに深い解釈を充てていらっしゃいます。

  • 世界権力と目される国際金融資本家とか1%オリガーキとか言われる人達に対しては何も言わない辺りは東大卒京大名誉教授だなぁと。個々の話はそれなりにタメにはなるけれど、大本となる前提として見ているものが違うと、日本のあり方とか、経済のあり方とか、ちょっと違うなと思ってしまう。

  • レビュー省略

  • これまでのキーワードがグローバリズム,競争力,成長追求だったが,"資本は利益をあげているけれど,資本主義社会は決して成長していない"(p183)は,まさに現状を言い表している.価格破壊が雇用破壊になり,さらには人間破壊につながるという説はその通りだ.価値の転換が必要だと強調しているが,今の政治は未だに成長を模索している,できるはずはないのに...

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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