イスラム化するヨーロッパ (新潮新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106491

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  • 先進国は軒並み少子化の課題を抱えているが、欧州のドイツや極東の日本は顕著だ。特に日本は現在の出生率がつづけば2060年頃には人口も8,000万人台に落ち込み、日本中の多くの地方自治体が消滅する事が予想されている。現在でも既に働きて不足は顕在化した問題として捉えられ、転職市場では若い世代だけでなく、40〜50台までの管理職クラスまでもが奪い合いの状態だ。ここ数年、欧州の移民問題だけでなく、アメリカのトランプ政権に代表されるような極端な自国第一主義、自国民優先が表に出てきて、外部からの移民流入には各国とも慎重な動きが目立つ。だが、前述した様に日本の少子化対策が上手く進まなければ経済は縮小の一途を辿り、起業経営者も海外からの受け入れの是非を決断する時期が来た様に思える。それを国がどう受け止めるか。巷ではコンビニや家電製品売り場まで、ベトナム人の名前や中国人名に溢れているが、事業会社や会社経営により近い組織などでも既に「カタカナ名」がいる事自体が当たり前になってきた。
    本書は主に欧州でこれまでに発生してきた、キリスト社会とイスラム社会の対立に焦点を当て、これから欧州各国が移民に対してどの様に向かい合っていくか、更には日本はそこから何を学べば良いかを教えてくれる。
    これまでの欧州は正に「文明の衝突」とも言える様な、フランスの同時テロやスペインの列車爆破、ベルギーやデンマークでのテロなど、観光に適した安全な国がテロの現場、戦場と化してきた。欧州はこれまでもシリア内戦やその他の地域からも人道支援的な立場から難民を多く受け入れており、今それらの2世3世が移民先各国で国籍を持ち、自国民として生活している。そうした世代が直面する差別や給与格差は確実に熱気を帯びてイスラム化への原動力となっている。やり場のない怒りを吸収し、イスラムの思想の中でも一部の過激な組織は力を付ける。そうした組織が裏で手を引くテロは「ホームグロウン・テロ」(移民先で生まれたテロリストが引き起こす意)と呼ばれ、わざわざ海外から危険を犯してテロリストを派遣潜入させるよりもよほど簡単な手段となっている。ネットを見ればいつでも勧誘動画は見る事ができ、若者がそれらに感化されテロリストになるリスクは大きくなっている。
    フランスで話題になった「ブルカ法」などはそうしたテロリズムへの恐怖と、自国のアイデンティティに染まらず、クルアーンの教えに厳格であればあるほど溝を生む構造が生み出したものだ。本書は「私はシャルリー」運動も重点的に触れられており、欧州の移民政策の顛末から読者へ問題の本質を考える様呼び掛けてくる。
    日本の今後を考えていくためにも一読しておきたい一冊だ。

  • 記者の視線からの現地レポート。著者本人の考えや感想は少なめ。

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