いい子に育てると犯罪者になります (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106590

感想・レビュー・書評

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  • 目からウロコの一冊。親になったとき、自分を見つめ直したいとき、過去を振り返りたいとき、この本をまた手に取りたい。

    自身に少なからずいびつさを感じながらも、振り返ると自分はいい子だったと振り返る人こそ一読すべき一冊だと思う。
    以下、回想。
    自分は絵に描いたような「いい子」だった。しかし同時に自分の心を守るためなら人を傷付けてもかまわないと思う側面があった。私の心は傷付くことを恐れ、人の怒りに相当敏感だった。
    この方の授業を受けて感想文を書いたらきっと冒頭で紹介されるような生徒だったろう。
    親のせいとは思わない。でも、私の危険の芽に、親は気が付かなかった。気が付いたら向き合ってくれたのかもしれないけれど、私自身が巧妙に隠したから、気が付かなかったのだろう。
    幼い頃は「自分の心を守る」ことが最優先で、「自分の危険の芽を摘み取らなかったらこの先どうなるだろうか?」というところまで考えが及ばない。
    表面的には聞き分けがよく素直で明るい生徒。いかにも非行へ走りそうな少年少女より先に、私の心の矯正教育を優先してくれる教師がどこにいるだろうか?
    また、自身が教師という職業に憧れ、周囲の教師に歩み寄っていたことも影響したかもしれない。自分を慕う生徒に対し、「君は間違っている、危ない、心を見直せ」と言える教師がどれほどいるだろうか?
    小学校では私の性質を見透かすようなベテラン教師がいたが、矯正するところまでは至らなかった(私は悪い意味で教師の熱意をかいくぐり、逃げ切った)。
    自身にとって救いとなりうるのは、そうした自分の歪みをこれまでも認識していたし、今ははっきりと意識できることかもしれない。
    大人となった今、自分の性質を親のせいにするのはナンセンスだ。大人として、自分を矯正していかないといけない。
    この方の言うとおり、「これからは自分を見つめて、自分をコントロールしていきます。」という宣言は意味を持たないだろう。
    私は弱い人間で、自分を守るためなら今でも人を傷付けうる人間だ。認めたくないけれど、きっとそうなのだろう。
    弱さを常に抱えながら、いつも自他に言い訳し、逃げて生きている。だから周囲の人間の弱さを見ても、責めるのはよそう。お互い弱い人間だなと、受け入れていけたらいい。

  • 前に読んだ「ケーキの切れない非行少年たち」の本に出てきて気になっていた1冊。
    もう著者が亡くなってることに驚き…。

    全ての原点は幼少期にある、という考えと
    子どもにはあるがままの自分でいい、どんなあなたでもいいと伝えることが本当に大事なこと、という点に非常に納得。
    厳しいしつけは抑圧にしかならない。少年を教育すべき少年院でも私語禁止のようなルールがあることが本当に悔しい。職員不足とかそういう現場の事情があるんだろうけれども、
    それで再犯して新たな被害者に結び付くことほど悲しいことはない。
    改めて自分の幼少期にも向き合ってみようと思えた一冊。

  • もっと早くこの本と出会っていたら。
    メンタル不調の時に出会っていたら。

    多くの救いと、前に進む勇気をいただけました。

  • ストレス20とヒント

    子育ては連鎖

    突き刺さる事実ばかり

    罰を与えると人は悪くなる
    愛を与えると人は良くなる
    を大切にしたい

  • 子育てについて考えさせられる。「いい子」、親の言うことをよく聞く子、明るくて笑顔の子。でもその背景にある本当の思いを、ちゃんと知らないといけないと感じた。何よりも子どもたちが、ちゃんと自分の気持ちを発信して、それを受け止めることのできる親でありたいと思った。良書。

  •  反省させると犯罪者になります……の著者の遺作。
     本作でいう「いい子」とは親などの他者にとってのいい子であり、己の本心を押し隠したうえでのいい子である。世間に向けたいい顔をするともいえる。
     読んでいると、確かにいい子であり続けようとして、そのいい子の姿に無理があり、己を抑圧し続けると何かが起きるかも、と思える。
     でも、他者目線で生きてきてそのいい子であり続けようとしたときに、己を見ようとすることはとても勇気のいることだし、他者にとって都合が悪いから応援も得られない可能性もある……と考えるとなかなかむつかしい。やはりプロにたよるしか。

  • 二人の子供を子育てしているが、大いに反省させられた。最近の教育では自己肯定感を育てることを重視する風潮があるように思うが、それがいかに大切かを実例をもって詳しく説明されていた。

    ・抑圧された時、辛い時に子供はいい子になろうとする。それが限界を迎えると爆発して問題行動を起こす。
    ・子供に嘘をつくなと言ってはいけない。人間は嘘をつく生き物。小さい嘘を禁止されると、いつか大きな嘘をついて問題行動を起こす。
    ・過度な期待を浴びせることも重荷になる。ありのままのその子でいいよ、というメッセージを伝えてあげることが大切。兄弟や周りの友達と比べない。
    ・人は自分がしてもらったことを自然と人にして返すようになる。普段からうれしい、ありがとうなどの言葉を使う習慣を持つこと。

  • 色々考えさせられる本です。
    私の子育て、大丈夫だったのかな?

    「いい子に育てると…」
    私は、比較的いい子に育ったタイプです。
    自分の子どもの頃を振り返りたくなりました。

  • 「ねばならない」というようなドライバー(本書でいう自分を駆り立てる価値観)は、親からのしつけを受け入れたものであり、人生に役立つものでもある。ドライバーがあるから、のりピーはアイドルとして人気を得たとも言える。その点だけを見れば、成功者であり、幸せな人生を送る人、とも言える。多くの成功者は、完全であれ、他人を喜ばせろ、努力せよ、強くあれ、といったドライバーに駆り立てられているはずである。
    しかし、客観的に成功していても、本人が生きづらさを抱えているとしたら、本当の幸福からは遠い。本当の意味での幸せとは、どういうことだろうか?のりピーとて、覚せい剤を使うまでは、人も羨む成功者であったはずだ。だとしたら、成功とは何だろうか?たとえのりピーのように犯罪者にならなかったとしても、成功者はどこかに生きづらさを抱えているものなのだろうか?生きづらさなく成功などあり得ないのだろうか。
    「他人に迷惑をかけてはいけない」「一人で逞しく生きていかなければならない」そういう価値観に縛られて生きてきた。だから他人から迷惑をかけられることにもすごく敏感で、搾取されたり、利用されたりすることは絶対に許せなかった。でも、それを許せるようになったとき初めて自分も周囲に迷惑をかけていいんだ、と思えるようになった。お互い迷惑を掛け合って生きていく。子どものころから「迷惑をかけてもいい」「強くなくてもいい」という価値観で生きていたら、精神的には楽だったかもしれない。でも、そうだったら、極度に頑張る、ということもなかった。「がんばらなくてもいい」「強くなくてもいい」という価値観で生きた末に至った表面的な立場に満足できていただろうか?

  • 読書メモ的にポイントをまとめと
    ▼幼少期に何らかの抑圧で素直に感情や欲望を表現できなくなるとそれがストレスとなって蓄積される

    そのストレスが外に向かうと非行や犯罪に走り、内に向かうと引きこもりや鬱、自殺につながる

    ◎何らかの抑圧は親からであることがほとんど

    ◎「強い承認欲求」は幼少期の「強い愛情飢餓」が原因

    ◎「迷惑をかけてはいけない」という価値観は、見方を変えれば、「人の世話になることをしない」という考え方につながる。そうすると、悩みや苦しみを自分一人で抱え込むことになる。

    ◎幼少期に子どもに身に付けてほしいことは、親に十分に甘えられることに尽きる。親との関係で甘えることを体験できた人は、他者にも甘えられる人になる。

著者プロフィール

立命館大学教授

「2012年 『ロールレタリング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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