違和感の正体 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106675

作品紹介・あらすじ

「正義」の耐えられない軽さ! 国会前デモ、絶対平和、道徳教育、反知性主義批判、安心・安全――メディアや知識人が好む「正義」はなぜ浅はかなのか。騒々しいほどに「処方箋を焦る社会」へ、憂国の論考。

感想・レビュー・書評

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  • 「ものさし不在」で、さまざまな「正義」が跋扈し、騒々しいまでに「処方箋を焦る社会」に対する違和感を先崎先生が斬る。

    東日本大地震後の原発反対運動、安保法制反対デモ等が激しかった頃、著者が感じた違和感をベースに論じられる日本の姿は、驚くまでに今、コロナ禍で感じられる違和感とも相似している。

    自らの正義を疑わず、「〜であるべき!」「反◯◯」を唱える人々。権力を持つものは悪で、民衆は善であるという決めつけ。
    我が正義こそが普遍的であると押し付け、人の意見に聞く耳を持たない人たち。相手の尊厳をも尊重しない言葉の暴力が溢れた社会に疲れ果てている私に、この著書は静かに語りかけてくれる。

    この本に引用されている、敗戦時、寄るべきものを失った時代に江藤淳や吉本隆明らが著した本を是非読んでみたくなった。
    今こそ、文学(言葉)の力が必要だという著者の言葉に納得。

  • 2023/10/12読了
    正しい言説正しい情愛といえども、笑いを失えば不正となる。
    自らの正義に疑問を持たない人を啓蒙することは極めて難しい。
    知性は必ず弾力性を失い、自分を信じすぎてしまう。そうなるとイデオロギーになる。知性主義となる。

  • 論説とか、解説ではありません。
    エッセイ。
    それも、酔っ払った文学青年が、多少シニカルに学のない友達を睥睨する、そんな感じの本。
    著者が現代社会で感じる違和感に、過去の思想家の思想も紹介しながら、「説明」をつけていく。自分の設定したスキーマの土俵に理論を構築して、論じるのは、ストローマン論法とさほど変わりはない。
    「物差しのない時代」とか、自分の中の正義を振り翳すみたいな、肯首できるところもあるのだが、大半は飲み会でハミゴにされてるのに気づかず、一人で喋り続けてる感じかなあ、という論。

    文字面だけ追って、読み飛ばした。

  • 何かがおかしい。どうも共感できない。憂国の論考。

  • 神が土台となっている欧州の思想を神なしで日本に持って来たため土台が根腐れしている、と言ったところか。最単純に言うと二項対立はそれ自体が何も考えていないから起こるので、それに絡め取られてる時点で問題解決には程遠くなると言うこと。
    本来なら江戸までの日本的価値観を土台に据えなければいけないのに旧弊と切り捨てた所から間違えている訳だ。これは他の思想家の方々も各自の方法でたどり着いた答えと同じですね。
    いつ日本人は過去の遺産を取り戻す気になるのだろう。

  • 日々をぼんやりと生きている自分には、難しく理解できない箇所も多い。
    読んだ時には、なるほどと思うがすぐにわからなくなる。要再読。

  • 神武(岩戸、いざなぎ)景気 
    ⇔2020

    相対主義
    村上裕一「セカイ系決断主義」

    ロマン主義的政治のheroism→ポピュリズム?

    サングラスの橋本は屈折した自己表現、政治の場に立ち外したときは社会を直視できるようになった?

    戦後日本の自由主義教育 教師の権威性
    政治と日常の区別の必要性

    与那覇の新しい歴史観
    中国を中心とする新・帝国主義の時代

    あぶれ者たちの感覚を掴みきれないとき、彼らは暴走しはじめた
    が制御不能→国家の危機

  • 多様な意見が認められて少数派も尊重されるという風潮の中で、旧態依然とした思考の人たちが振りかざす「物差しのない正義」。感覚的気分的な尺度で激昂して身勝手な殺人を起こす犯罪者も方向は同じだと思った。ダイバーシティが進むにつれて言わないでもわかる常識的なことが消えていき、わからない者同士が互いに信用できる新ルールを作るにはロジカルに進めないと理解し合えない。しかしこのロジカルは個人の経験則や感情的に大切にしたいこととは逆行する場合がある。そしてそのストレスが更に間違えた正義となって発散される悪循環を招くのだろう。大変面白く読んだ。

  • 最近夜はBSフジのprimenewsにハマっているのだが、先日登場されていた日大の先崎教授の著作。

    日頃ビジネス界隈の本ばっか読む中、ひっさびさに思想、社会学系の本に触れたのもあり、初っ端から『ああ文系の論考ってこうだよなぁ〜』感を痛烈に感じた!

    物事を、ファクトベースではあるんだけど、そこに個人の知識や知見、過去の思想家などの思考をふんだんに絡めて、独自の視点で喝破する。それはとてもブレもなくなるほどなぁと思わされるのも多いが、極めて分かりづらい...。論点や論拠があっち行ったりこっち行ったり、着いてくのがしんどい。

    primenews登場時の論説は極めて分かりやすかったのだが、著作はむずかった。が、たまにはこういうものも読まねばと思った。

    あと冒頭、なぜブラピの名作『リバーランズスルーイット』が“反知性主義”とされるのか、という問いがあり、その答えが本章で描かれてて、なるほどなぁと思った次第。深い。

  • ●物差し不在。何を信じたら良いかわからない時代。正解も目標も細分化する。人の数だけ正義がある奇妙な状況。
    ●右も左も同じ過ち。国会前デモ。矛先が総理大臣ではなく、安倍晋三個人に向かっていた。個人への誹謗中傷はネット右翼のヘイトスピーチと同じ。自分たちは知的だと勘違いしてる分、こっちの方がタチが悪いと思う。
    ●網野史観。中世から江戸に移り変わる変化の中で、差別が生まれたという。
    ●教育。都会では祖父母や地域と言った無償の支えが期待できない。だから学校に過剰なサービスが期待される。教育は人間の育成に重要であるが、あくまで二次的な役割…と福沢諭吉も言っている。
    ●反知性主義。自己の知性に自信過剰になり、そうなると知性は単なるイデオロギーになる。知性が知性主義になってしまう。反知性主義が、知性主義をチェックすることにより、暴走を防ぐ。
    北村透谷に注目。

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著者プロフィール

1975年東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。東北大学大学院文学研究科日本思想史専攻博士課程単位取得修了。フランス社会科学高等研究院に留学。文学博士。日本大学危機管理学部教授。専攻は近代日本思想史・日本倫理思想史。
主な著書に『高山樗牛――美とナショナリズム』(論創社)、『ナショナリズムの復権』(ちくま新書)、『違和感の正体』『バッシング論』(ともに新潮新書)、『未完の西郷隆盛――日本人はなぜ論じ続けるのか』(新潮選書)、『維新と敗戦――学びなおし近代日本思想史』(晶文社)、『吉本隆明「共同幻想論」』(NHK100分de名著)、現代語訳と解説に福澤諭吉『文明論之概略』(ビギナーズ日本の思想・角川ソフィア文庫)などがある。

「2020年 『鏡の中のアメリカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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