ジブリの仲間たち (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106106743

作品紹介・あらすじ

名プロデューサーが初めて明かす「宣伝と広告のはなし」。僕はこうやって映画を売って来た――。『風の谷のナウシカ』『千と千尋の神隠し』『風立ちぬ』等々、この30年間、なぜジブリだけが大ヒットを続けられたのか?

感想・レビュー・書評

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  • 「映像研には手を出すな!」の金森氏を待つまでもなく、たとえば「げんしけん」のハラグーロとか、ガイナックスの岡田斗司夫とか、とかく悪い意味で「金を集めるのがうまい」「口先だけの人」は、業界モノを見るだに見え隠れしていた。
    翻って、宮崎・高畑両氏の背中にベッタリくっついている口だけオッサン、宣伝の際には腹にボコッと出てくる喋りたがりオッサン、そして押井守を追っているときに必ず出てくるオッサン、他の文化人を検索すると結構な頻度で自身のラジオ番組に呼びつけているオッサン、ということで認知していた。
    が、作り手に寄生するオッサンが最も嫌いな人種だし、時代と格闘するだとか作務衣着て毛筆するだとか、そういう人物ってオヤビン気取って金をガッポガッポ動かしてるわりにはカラッポなんだよねと侮っていた。というか、侮っている。読後も。
    が、その評価を、どうしても変えざるを得ないのは、この人、ただ金集めするだけではなく、作品にも口を出すのだ。
    どころか、企画も言い出している。
    言い出しっぺ……持ち掛け……ヤクザというかチンピラ……話題提供者……フカシ……金集め……叱咤激励者……宣伝者……と八面六臂の活躍をしている……、
    というか、宮崎駿や水木しげるがスタッフを社員化して自身を永久創作機関に仕立て上げたのを、またも模倣して、取り巻きを活用して自身を永久宣伝機関と仕立て上げようとしている……その日々を、まとめたのが本書である。まあワーカホリックの歴史と言えなくもない。
    決して自ら筆を動かした……PCを打鍵した……ものではない。ただ放談したものを、秘書だか側近だかにまとめさせたものだ。
    という事情であるから、汗みずくの執筆の賜物では、ない。かるーい、俺こんなこと考えてたんすよー、俺はすげーし、俺の失敗も俺の思惑のうちなんすよー、という本。いわば成功者・爺の回顧録に過ぎない。
    が、通史の雰囲気をつかむには悪くない。
    おそらくこの爺、多分に嘘をついている。それぞれを細分化する資料もあるはずなので、もっと詳細に見ていこう。
    結論。鈴木敏夫的プロデューサーは、いまや老害。とはいえこんな老害や、宮崎駿のような老害ワーカホリックがいたからこそ残っている名作が、山のようにある。
    これを享受しないのは勿体ない。

  • ジブリ作品の見方が変わった。
    宣伝とか売り上げの現実的な話はあんまり聞きたくないな~なんて思いながら読み始めたけど、制作~上映するためには当たり前ながら必要不可欠なことで、内容・エピソード等含めて全部めちゃくちゃ面白かったー!

  • スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏が宮崎駿監督の長編からの引退を表明したのをきっかけに、ジブリ設立からの30年をまとめた本。

    なんてバイタリティと発想力、カリスマ性に優れた人だろうか。
    ジブリの名監督二人に目を奪われて見落としがちだがこの人も天才だ。

    宣伝の鬼。

    こんなに押しの強い人になれるだろうか、いやなれない。

  • ジブリ映画の宣伝なんて「新しい映画、作りました」と言えばそれで済むじゃないか、と思ってた。
    でも、『もののけ姫』の時も『千と千尋の神隠し』の時も鈴木敏夫プロデューサーは闘っていた。いつだって闘っていた。面白くない訳がない。そんな1冊でした。

  • 映画がヒットするには「作品」「配給」「宣伝」すべてが大事。観たことがある映画で舞台裏が語られて、とても面白い

    【感想】
      面白かった!とても読みやすかった。読みやすすぎると思ったら、あとがきにこの本を書いたのは柳橋閑というライターさんだった。鈴木氏が書いているのはあとがきだけで、あとは柳橋さんがインタビューしながら書いたらしい。
     ジブリ、映画の見え方が変わるから面白い。元々、作品作りがやりたかった鈴木氏だが、製作の立場上、プロデューサーを務めていくことになる。毎回手探りでその方法を生み出していく。面白いのは、作品自体のクオリティにはそう遜色が無いと思えるジブリ作品でも、やはり興業収入は大きく異なっていることだ。作品の面白さと、興業収入は完全に相関しない。影響をするのは配給・宣伝である。その配給・宣伝が「うまくいった」ときは伸びるし、「うまくいかなかった(やり方をしなかった)」ときは、そこまで伸びない。実際、鈴木氏がプロデューサーを務めて、本気で宣伝に取り組んだ「魔女の宅急便」で、観客動員数は一気に増えた。前作で80万人だったのが、264万人になった。 

     ...。話は変わるが、ジブリのような映画製作スタジオが生まれ、隆盛していったのは、ちょうど令和くらいまでなのかもしれない。昔、映画は大衆娯楽の王様だった。それが、テレビが出てきて、ネットが出てきて、ゲームが出てきて、動画サイトが出てきて。趣味・娯楽の細分化が進んできた。大きな映画はマスマーケットに向かって作られるものだが、そのマーケット自体が収縮している。娯楽・エンターテインメントが個別化していく流れは、止められないだろうな。

    【本書を読みながら気になった記述・コト】
    ◆映画がヒットするには「作品」「配給」「宣伝」すべてが大事であること
     ヒットした映画は「作品」自体が注目されがちであるが、この本を読むとその裏には「配給」「宣伝」のたゆまぬ努力があると分かる。映画プロデューサーとして鈴木敏夫が有名・すごいと認知されているのは、配給力(配給会社宿とのつながり・交渉)、宣伝力があるからだと再認識した

    ◆昔の映画に求められていたのは「ラブ」で、今は「フィロソフィー」
     そうだ。ジブリの映画が大人が観ても面白いのは、作品に哲学があるからだ。時代性をとらえて「こういうことが大事なんじゃないだろうか」「こういうこともあるんじゃないかな」という人間の性格を、豊かなアニメーションで描いていく。フィロソフィーがあるものが人の心を動かす。
     →千と千尋の神隠しが、千尋とハクの恋物語ではなく、「千尋とカオナシの物語」と捉えたのは、鈴木氏が最初だった。
     →千と千尋の神隠しが大ヒットしてから、心の問題をエンターテインメントとして描く映画が増えた。鈴木氏は、そのような映画ばかりが増えていくのはあまり健全だと考えていない


    ◆映画にフィロソフィーを持ち込んだ原典はゲド戦記?
    >>ところが、いまや娯楽映画にすら哲学が求められる時代になって、ヒーローでさえ心に闇を持つようになりました。アメリカの文脈でいえば、『スター・ウォーズ』の中で描かれた"ダークサイド"という概念です。その元になっているのは、ル=グウィンが『ゲド戦記』の中で描いた”影”でしょう。そういう意味では、パンドラの箱を開けたのはル=グウィンだった。

    ◆ゲド戦記では、「親殺し」が作品・製作を貫く一つのテーマになっている
     本を読むまで、当たり前のことに気づかなかった。確かにそうだ。これまで、ジブリでは宮崎駿と高畑勲しか監督を務めてこなかったところで、宮崎駿の息子である宮崎吾郎が監督を務めたのだ。製作上の立場としては、宮崎吾郎が駿より上である。吾郎監督は製作時に「親殺し」のストーリーを変えたいと思ったが、鈴木プロデューサーは止めたらしい。吾郎くんが監督をやるなら、「親殺し」は絶対に避けては通れないと。現実と作品の間でそんな二重構造になっていることに、今更だが本を読んで気づいた

    ◆ジブリ作品がヒットするのは時代を意識した作品作り・哲学を作品に込めているから
     鈴木氏は作品を作る際にマーケティング的な考え方をでき、かつマーケティングによって作品を面白く磨くことができる人だ。千と千尋の神隠しの製作進行がす

      
    ◆また出た「糸井重里」。この時代の人が書く本には本当によく出てくる。マジですごい人なんだ。多くのジブリのポスターのコピーを手掛けた。「生きろ。」「カッコイイとは、こういうことさ。」「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」などなど

    ◆電通マンから見て、鈴木氏のポスタークリエイティブがすごいのは、タイトルに縛られないこと。魔女の宅急便という映画なのに、パン屋で受付をしている絵を採用する
     →映画ポスターの構成要素は3つ。タイトル、コピー、そして絵。それらが重複しない方が、お客さんに伝えられる情報は多くなるはずだ、と考える

    ◆「かぐや姫の物語」がいまいちヒットしなかった理由
     企画そのものが難しかった。今、「竹取物語」を映画にすることの意味、現代との適応性を詰め切れなかった。映画は企画が大事であり、「なぜ今この映画を作るのか」があやふやでは、宣伝しても効果は出ない。

  • ジブリ映画をヒットさせた鈴木氏の著書。関係者側から見た鈴木氏の印象も書かれている。関係者によると、鈴木氏は言葉数少なく、また暴言をよく吐きすぐに手が出るという内容が多々あり、驚いた。鈴木氏側の話だけを見ると、彼は温厚で真面目な人だという印象を受ける。「映画は金をかけて宣伝すれば必ずヒットする。金をかけるほどヒットする。」という黄金の方程式を作った鈴木氏。世の中に流行らせるには、皆に周知してもらうというきっかけを金でつくらねばならないのだ。本書の中で、ホームページで制作日誌を毎日更新するという内容がある。そこで鈴木氏は「ファンの人に、制作スタッフの一員であるかのように感じてほしかった。」と話している。これは私の仕事でも参考になりそうだ。

  • ジブリファンにとっては最高に面白い内容だった。
    ジブリは作品自体が素晴らしいのは勿論だけれど、鈴木さんという一流のプロデューサーをはじめ色々な人がいたからここまでの映画になっだということを知ることができた。
    鈴木さんも宮崎監督も信念を曲げないで 映画を作り続けているところに感動。

  • ジブリが好きで鈴木敏夫さんにも興味があった、テレビで拝見しただけのお人柄は押しが強い感じで個人的には引いてしまったのだが、仕事はできるんだなぁという印象。でもあれだけ人を惹きつけるのだから、一緒に本気で仕事をしたらとんでもなくキツいだろうけど学ぶことが多いんだろうと思った。宮崎さんもそうだが熱い方なんだなと思う。
    何気なく目にしている宣伝の内幕は、こんなに手がかかっているのかと時代や映画の内容を思い出しながら読めてすごく面白かった。数字や理論の裏づけにも驚いたし、テレビで拝見した時はなんでコピーにこんなに断定的に良し悪しが言えるのだろうと思っていたけど、その背景がわかった。作者以上に作品を見て時代の空気を感じる力と努力がすごいのだ。それでもセンスに自信を持てるってすごいなぁと単純にビックリする。そして人を惹きつけるだけの魅力と言葉力、行動力。この本でも実名で書いちゃうサービスとちゃっかり宣伝しちゃうところ。
    藤巻さんが仕事しないのになぜかとてもきになる存在だった。

  • ジブリが、ますます好きになる!

  • ジブリは大嫌いだけど、ここに出てくる宣伝の話は面白い

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著者プロフィール

スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。1948年、愛知県名古屋市生まれ。
徳間書店で「アニメージュ」の編集に携わるかたわら、1985年にスタジオジブリの設立に参加、1989年からスタジオジブリ専従。以後、ほぼすべての劇場作品をプロデュースする。宮﨑駿監督による最新作『君たちはどう生きるか』(23)が、米・ゴールデン・グローブ賞のアニメーション映画賞を受賞した。「仕事道楽 新版──スタジオジブリの現場」「歳月」(ともに岩波書店)、「スタジオジブリ物語」(集英社)など、著書多数。2021年、ウィンザー・マッケイ賞を受賞。

「2024年 『鈴木敏夫×押井守 対談集 されどわれらが日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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