- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106106941
作品紹介・あらすじ
新聞、雑誌、テレビで大反響の論考がついに書籍化! 爆発的に膨張する医療費は財政の破綻を招き、次世代を巻き添えに国家を滅ぼすこと必至。「命の値段」をどう考えればいいのか。現役医師による衝撃の告発。
感想・レビュー・書評
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週刊新潮の連載コラムを愛読しており、高齢者のガン治療を例にとって著者が警鐘を鳴らす日本の医療危機問題について改めて認識したけれども、本筋から外れたところで不用意に漏らす誹謗のいくつかが(週刊誌らしいといえばそれまでなのだが)大事な議論の尊厳を損なっているのが残念。
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文字通り、現在の医学に警鐘を鳴らす一冊。
保険適用下でのがん治療の話など、中々シビアな話だが、全ての日本人が知っておく必要があるかと。 -
高価な薬の登場によって主にはがん領域(血液がんも含む)において、生存率が向上してきている。これ自体は非常に素晴らしいことではあるが、保険財政が圧迫されてきている。
人の命の価値に優劣をつける訳では無いが、筆者も述べていた通り年齢によって、このような薬の使用に制限をかけることについては賛同する。現代の医療では高齢者に対しても高額な医療がほぼ自己負担なく行われており、将来的に本当に必要な人達に医療が届かなくなるのではないかという懸念がある。
今後、高額な薬は次々と発売されると思うがその運用については真剣に考えていかなければならない。 -
国民皆保険制度、高額療養費制度・・・、保険料が高すぎますね。払った分使いたくなる人もいるのでは。私はいくら払っても保険は使いたくないです。(健康でいたいです)一方、年金については、払った分は少なくとも取り返したい(74歳ですか)、それまでは生きてやるぞ、と思っていますw。里見清一 著「医学の勝利が国家を滅ぼす」、2016.11発行。医学の勝利とは何かと一読しましたが、なにかしっくりこなかったです。2つの問いかけが印象に残りました。①治療のコストパフォーマンス ②高齢者の生きる目的、やりたいことは何か。難しい本でした。
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高くてよく効く薬が危機を招く
使い始めると止まらない、その代表が慢性骨髄性白血病(シーエムエル)に対する分子標的薬、グリベックである。2001年に承認されたこの薬、シーエムエルの横を、一気に20%から80%まで改善させた。この薬を世に出したノバルティス社は、薬価を釣り上げた。
●75歳以上の延命治療禁止、対処療法は可。当然ながら自由診療禁止。でないと、金のために見捨てる家族の姿を見ないといけなくなる。
●憲法25条にいう「生存権」全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する、の「最低限度」には、年間数千万のコストがかかる高度医療も含まれるているのだろうか?「将来の世代のために」これを制限することは、憲法違反なのだろうか?
自己保存と種族保存、どちらが大事なのか?
●高度救命センターは老人患者の割合が急増し、「命だけは助かった」老人で溢れかえり、少壮の患者は弾き出されつつある。
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オプジーボ 免疫チェックポイント阻害剤
高額療養費製度
自己負担分は最高でも最初の3か月が30万弱、それ以降は月額17万 年で200万ちょっと 普通の収入なら 年間70万 オプジーボの年間コストの2%
CMLの分子標的治療薬 グリベック 使い始めると止まらない
楢山節考 深澤七郎 、銀齢のはて 筒井康隆
75歳以上には延命治療をやめる
人は本当に大切な問題は考えようとしないのではないか。安保法案で盛り上がれるのは、あれがどうでもいいことだから
目的のない団塊世代が大挙して老人となり、自然の成り行きとして病気になる。そして生きて何をするのかがないまま、病気とその治療だけが自己目的化する。いわば病気そのものが生きがいになるのである。これでは医療費削減なんでできるわけない
人間は重大な問題を前にすると思考停止になって眼前のことに終始する 前半 わからない、どうにもならないことに対してまともに考えようとしない 後半 なにか関連した手近なことをやって済ませ、自分を安心させる
苦労して戦っている相手は、新しきものは善きもの 善玉、制限することは悪しきもの 悪玉とういう、なんの根拠のない単なる思い込み
もしほかの誰も動かないのなら、我々医療者が行動すべきである。我々の医療システムおよび癌医療の未来は、限りある資源をいかに賢明に使うかにかかっている
医者に病院に利益につながるような行動をさせるためには、ご褒美よりも、あらかじめその報酬を与えておいて、そうしなかったらさっぴくほうが有効なのだそうだ
モチベーションのクラウディングアウト
自分が好きでやっているとか、これは大事だと思ってやろうとしている仕事が報酬の対象となってしまうと、まるで自分が金のたえにそれらをやっているような感じになって白けてしまい、やる気がそがれる
現実的には、これからの日本は、「いかにうまく衰えていくか」を模索しなければならない
第二次大戦後の英国が超大国の地位から滑り落ちた後、紆余曲折を経ながらも「老成した先進国」として幅を利かせている(ようにみえる)のはモデル
個人のレベルで、「いい年のとりかたをした」と思える人と、「悲惨な老後」を迎えている年寄りとの総意は、傍目にもいやになるほど明らかである
人間にとって、「目標」が不可欠なものだとすると、いかにうまくそれを設定するか、ということが課題になる
師弟関係には上中下がある
下は利につく、中は徳につく、上は恨みにつく このクソ親爺、いつか隙きを見てぶっ潰してやる、と思いながら後をついていくのが上
堺屋太一 組織は、その構成員の満足を追求するための共同体と、外的目的達成のための機能体に分類される
20歳の女性に造影剤を入れて腹部から骨盤のCTをとると250-470回の検査につき一例が癌になる
Smith-Bindman R et al. Arch Intern Med 2009;169:2078
田中角栄という人の功罪がどちらが上回るかについて私は口を出す資格はない。しかし、かつて他ならぬ文藝春秋が、立花隆、児玉隆也らの追求記事により、角さんを金権に目がくらんだ売国奴のごとく、また金庫番佐藤昭さんを淫売のごとく書きたて、失脚においこんだのではないか。今更「ロッキード裁判はアメリカの謀略」とか言うのであれば、あの時は間違っていましたすいませんとまず謝るのが先であろう。それを、世の中の角栄再評価の、これも尻尾に乗っかって、「あんな政治家はいなかった」もないものだと思う。
高齢者が医療費を使い続けると、保険制度が破綻して、次の世代の人たちがまともな治療をうけられなくなります。 -
オブジーボなどの高価な薬が発売されて、医療現場は自己負担のアメリカ型と、日本のようなお上による完全に保険で賄える中での問題を取り扱っている。
オバマ・ケアも有名になったが、日本の保険医療制度では、高額医療控除のために本当に多くの税金が、90歳の人間を120歳までに延命するなどのために使われる可能性がある。
ある意味人とは何か、治療とは何か、できなかったことができるようになったからこそ、考えさせられる命題をつきつけられているように感じた。 -
そんなに高価な薬を使って、いったい何を治したいのだろうか?
それに意味がないことに誰も声を出さない、そんな時代。 -
馬鹿高いオプジーボのことは知っていたが,現役の医師がこのような問題意識を持っていたことに安堵した.p52にある提案「75歳以上の患者には,すべての延命治療を禁止する.対処療法はこれまでと同じようにきちんと行う」には大賛成だ.この時点で癌が発見されたとしても,急速に癌細胞が増えるわけでもないので,治療をしなくても寿命が数年縮まる位と思っている.また,至適投与法の検討を示唆されており,これも重要だ.人は必ず死ぬのだということを,改めて認識できた.
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オプジーボを基点として、誰もみてこなかった問題に切り込んでいくスタイルの本。この先生は医学と国家の行き詰まりをなんとかするためには、1つの考え方しかないとしているんだけれども、僕はもっと、違う考え方、違うやり方があるんじゃないかと思った。
けれども、これは実は未熟な生徒の考え方であり、最先端で戦ってきた先生から見ると、本当に現状はどうしようもないのだ、という事実もありえそうなので、なんとも言えない。 -
この著者の考え方は医療に関わるの人達の中でも決して大多数の意見とは言えないでしょう。
だからこそこういった身内の警鐘は問題提起としてはとても重要なのものだと思います。
医学の進歩により効果の高い薬も沢山できたが、薬の高騰もいまや青天井なみに上がり続けている。
薬はあるけどそれを買える人は殆どいなければその薬はあってもないようなものなのかもしれない。
一人ひとりが医療とどう向き合っていくかを改めて考えなおさなければならない時代ですね。
面白かったです。 -
センセーショナルなタイトルである。ぼくはこのタイトルを見て、中味はほぼ予想できた。里見さんはガン治療の専門家であり、日本赤十字や国立ガンセンターなどの要職を勤めてきた人だ。その人が、75歳以上の延命治療はやめようと提唱しているのである。それは、医療費が無駄に使われているからである。今では誰でも知っていると思うが、どんなに高い治療を受けても、本人の負担額はたしか月5万円くらいに抑えられている。その残りはというと国家が負担しているのである。だから、高い治療、高い薬が開発されればされるだけ、国家負担が増加し、やがては(まもなくかもしれない)破綻するという警鐘である。実際、抗がん剤は効く人と効かない人の差が激しく、薬によってはそれがわかるものもあるそうだが、そうでないものの方が多い。効かないと分かった段階で医者が止めようと思っても、止めるわけにはいかない。だから、国の医療費はますます膨れあがるというわけである。里見さんの言うのは正論だ。本書が語っているのは、単に医療の技術問題ではない。その背後にあるのは、人間がいかに生きるか、いかに死を迎えるかという問題である。それにしても、里見さんは自分の思うところを好き放題書いている。これだけ書ければなんと気持ちがいいことだろう。
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雑誌連載を書籍化したものですぐ読める。
主張の一つは、「病院側も患者側も行政も、医療コストへの意識が極端に低いのではないか」というご意見。
【版元】
画期的な新薬が開発され、寿命が延びる。素晴らしき哉、医学の勝利!……のはずだった。だがその先に待ち構えているものに我々は慄然とする。爆発的に膨張する医療費は財政の破綻を招き、次世代を巻き添えに国家を滅ぼすこと必至なのだ。「命の値段」はいかほどか。我々はいつまで、何のために生きればいいのか。雑誌発表時から新聞、テレビ等で大反響の論考を書籍化。巻末に作家・曽野綾子さんとの対談を特別収録。
<http://www.shinchosha.co.jp/book/610694/>
【簡易目次】
はじめに [003-007]
目次 [009-011]
第I章 善意と進歩による亡国
1 医学の勝利が国家を滅ぼす 012
2 生き甲斐は病院通いです 063
3 医療コストから目を背けるな 078
4 「新しいものが良い」なんて誰が言った 094
5 医療の目標は何なのか 114
6 あなたはどう思うのか、言ってくれ 128
第II章 裏から眺める医療論
1 選択肢の多さは利益にならない 141
2 身内の「ミス」は庇うべきである 165
3 「完治」に大きな意味はない 178
おわりに―― 千万人往くから俺も往こう 191
作家・曽野綾子さんとの対話 「人間には死ぬ義務がある」 203
初出について [222]