- Amazon.co.jp ・本 (680ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106425448
作品紹介・あらすじ
柔道家とデザイナーの愛のタピストリー「にっぽん製」、逞しい漁夫と清純な乙女の恋の牧歌「潮騒」&創作ノート、ジャズの喧噪の中に輪舞する男と女「恋の都」を収録。
感想・レビュー・書評
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本巻に収録されている「潮騒」を読みました。
旧仮名遣いなど、少し読みづらさを感じさせるところもありましたが、ストーリー展開はまさに「王道」でした。
純朴で一本気な主人公は、周囲からは(良くも悪くも)隔絶した島で量子として働いています。遊びも女も知らない主人公の前に、島の有力者の娘が養女に出ていた先から帰ってくることになります。
お互いに好意を寄せつつも、当時の男女交際のあり方、そして島(ムラ)特有の人付き合いやしがらみから、二人の関係は思うようには進みません。
それでも、まっすぐな主人公は策を弄したりはせずに、あるがままの自分を貫き、その姿がすがすがしく描かれています。そして、そんな「まっすぐ」な二人の姿によって、周囲の大人たちが二人のことを応援するようになる様子は、いかにも「小説」でフィクション(夢物語)のようにも見えますが、作者が『男は気力や。気力があればええのや。…家柄や財産は二の次や。』と照吉(初江の父)に言わせたように、正直に・まっすぐに・道徳に反することなく、”為すべき務めを為す”ことに専心することの価値を改めて感じさせてくれる作品です。
さらに、「恋愛」や「好意を寄せる相手」を重んじることの大切さや、汚れのない男女の在り方を「価値のあるもの」として丁寧に描かれていることも特徴的だと感じます。女や遊びを知らない主人公が初めての恋愛感情に戸惑う様子や、そんな主人公を見下していた同輩が嫉妬する様がリアルに描かれているところもこの作品の一つの魅力だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示