小林秀雄全作品 12

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106435522

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  •   批評は常に冷静な観察であるとともに情熱ある創造である、そういう立場に批評家が立っている事は難しい。それは立場というようなものではなく、寧ろ凡そ立場というものに関する疑惑を不断に燃やしている事に他ならないからだ。疑惑の中にこそ真の自由がある。それが批評精神の精髄である。サント・ブウヴはこれを毒といった。薄められた毒から人々はいろいろな事を学ぶであろう。併し、真に学ぶとは毒を呑むことではあるまいか。
     だが、多くの読者はそこまでは学ぶまい。それはあまり恐ろしいことだ。
    だが「手帖」を読む読者は、少なくとも世の所謂主観的批評とか客観的批評とかいう言葉が、いかにも女々しい空言に過ぎないかぐらいは合点するであろう。「手帖」の著者は、常に己を証明して過たなかった。そしてそのことは、彼が語るとおり「僕には春も秋もなかった。乾いた、燃えるような、悲しい、辛い、一切を啖い尽す夏があっただけだ」ということであった。
    そういう光景は嫌でも読者の眼に映るであろうから。(p173より)

  • 2009/
    2009/

著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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