ドナルド・キーン著作集 4 思い出の作家たち

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  • Amazon.co.jp ・本 (636ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106471049

作品紹介・あらすじ

2012年6月に90歳を迎えたキーン氏。長年の研究と作家との交友をもとに描いた表題作では、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、安部公房、司馬遼太郎をつぶさに論じた。みずから日本語で書きつづった『日本文学を読む』は、近現代の主要作家・詩人を網羅。近現代作家論の「決定版」。近現代の作家の知られざるエピソードをふんだんに披露。

感想・レビュー・書評

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  • キーン氏が日本の現代を代表する作家たちといかに直接知り合い、酒を飲んだりしながら日本文学論を闘わせていたかということが新鮮でした。谷崎、川端、三島という日本の美を追究している作家への著者の高評価はある意味でその時代に彼らを中心とした日本の文壇の人たち自身と大変親しかったことも影響しているのでしょうか。一方、漱石、鷗外は好きになれないという著者の言葉の意味がよく分かります。三島の「潮騒」は三島が熱愛していた古代ギリシャの「ダフニスとクロエ」を下敷きにしていることが再三書かれており、恐らく本人からも聞いていたのでしょう。確かにそのような雰囲気があります。阿部公房の国際主義が受け入れられる一方で、司馬遼太郎がなぜ日本でしか受け入れられずに海外で無名なのか、その翻訳の難しさの説明は外国人ならではです。「これぞ日本人だ!」いう感情を私たちは持ちながら読んでおり、その阿吽が外国人には理解できないことというのは面白いことです。太宰とキリスト教については「聖書の中に自分の意思と情調を表現するのにふさわしい章句を発見した」に過ぎないと喝破しているのは、非常に明快です。キーン氏が「近代文学における最大の作家は谷崎だと敢えて言う」と宣言するのはそれだけ源氏物語の美意識の世界がキーン氏にとっても影響が大きいのかも知れず、嬉しいような、複雑な心境です。また詩人が海外で評価されない説明の中で三好達治の「雪」を題材に翻訳のむずかしさを説明していることも司馬遼と共通点があるように思います。一方、西脇順三郎の国際性の説明はリルケ、ヴァレリー、エリオットと共に20世紀を代表する4大詩人だと書きながら、世界的名声がないのは、訳者たちの怠慢だ!と明言しており、心から賛同。

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著者プロフィール

1922年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学名誉教授。日本文学研究者、文芸評論家。2011年3月の東日本大震災後に日本永住・日本国籍取得を決意し、翌年3月に日本国籍を取得。主な著書に『百代の過客』『日本文学の歴史』(全十八巻)『明治天皇』『正岡子規』『ドナルド・キーン著作集』(全十五巻)など。また、古典の『徒然草』や『奥の細道』、近松門左衛門から現代作家の三島由紀夫や安部公房などの著作まで英訳書も多数。

「2014年 『日本の俳句はなぜ世界文学なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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