オールド・ファッション: 普通の会話 東京ステーションホテルにて

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120014246

感想・レビュー・書評

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  • 東京ステーションホテルでおこなわれた、江藤淳と蓮實重彦の対談を収録しています。

    若い蓮實が江藤に質問をするというスタイルで進のかと思いきや、反対に江藤が蓮實の批評について周到な準備をした上で質問を投げかけるという場面が目立っているように感じました。とくに、『物語批判論』における「問題の時代」という蓮實の診断を踏まえつつ、どのようにして「問題」の中に取り込まれてしまうことから逃れうるのかということが、繰り返し議論されています。

    ただし、江藤は蓮實の提出している「問題」の概念を、みずからの関心に惹きつけて、戦後日本の「文学」が繰り返しそこへと回帰してしまうようなものとして捉えているように感じます。しかしこれには、「日本」を「問題」としてしまっているのではないか、という疑問を抱かざるを得ません。江藤は、蓮實の批評が現代日本において受容されることの背景に、フランス文学の威光があるのではないかという、「日本」の特殊的な風土を問題にしようとしていますが、さすがに蓮實はこの指摘をやんわりとかわしています。

    巻末の「対話による解説」は、絓秀実と渡部直己の2人が、江藤・蓮實とは対照的な対談をおこなっており、本書の問題を逆照射する興味深い内容になっています。

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著者プロフィール

江藤 淳(えとう・じゅん):文芸評論家。昭和7年12月‐平成11年7月。昭和31年、「夏目漱石」で評論家デビュー。32年、慶應大学文学部卒。37年、ロックフェラー財団研究員と してプリンストン大学留学。東工大教授、慶大教授などを歴任した。新潮社文学賞、菊池寛賞、日本芸術院賞、野間文芸賞など受賞多数。

「2024年 『なつかしい本の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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