TUGUMI

著者 :
  • 中央公論新社
3.83
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本棚登録 : 1519
感想 : 156
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120017759

感想・レビュー・書評

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  • R2.3.30 読了。

     引き込まれるように読破してしまった。もう少し、つぐみを見ていたかった。

    ・「つぐみは生まれた時から体がむちゃくちゃ弱くて、あちこちの機能がこわれていた。…(中略)つぐみは意地悪で粗野で口が悪く、わがままで甘ったれでずる賢い。人のいちばんいやがることを絶妙なタイミングと的確な描写でずけずけ言う時の勝ち誇った様は、まるで悪魔のようだった。」
    ・「毎日なんてずっと、なんていうことはなかった。この小さな漁村で、寝て、起きて、ごはんを食べて暮らした。調子が良かったり悪かったり、TVを見たり、恋をしたり、学校で授業を受けたりして、必ずこの家に帰ってきた。そのくりかえしの平凡をぼんやりと思い返してみるとき、いつのまにかそこに、ほんのりあたたかく、さらさらした清い砂みたいな何かが残る。」

    • トミーさん
      また吉本バナナを読んでみたい。
      キッチン、ツグミ以来読んでない。
      才能ある人だわ。
      また吉本バナナを読んでみたい。
      キッチン、ツグミ以来読んでない。
      才能ある人だわ。
      2020/04/01
  • 「キッチン」に続いて読んだけど感覚的にはこちらが好きかなぁ。若い頃にこんなホットな一頁を持つ人は幸いだよね♪ 語り部役のマリアをはじめ従姉妹の つぐみと陽子もなんて印象的な連中だろう。とりわけ つぐみの言動は魅力的過ぎる!吉本ばなな と言えば この2作に代表されるけど、今読んでも鮮度十分な刺激的な面白さです(^^)

  • つぐみみたいな人、好きだな。
    ただ、近くで友だちにというよりも、遠くでみていたい。

  • つぐみは確かに性格が悪い。
    だが、人一倍心のパワーを持っていてどこか惹かれる。

    つぐみは体の弱い美人な女の子。
    だが、外見に似合わず男らしい性格。
    ある町で育った高校生たちの夏のお話。
    恋も命も人間関係も、全てがどこか可愛らしくて
    、いつのまにかつぐみに惹かれて行って。
    これからの夏も、
    離れていてもまだ4人の関係は続くんだろうなと思う。

  • 海のある街のひと夏の物語。美しくて儚くて切ない。つぐみは破茶滅茶な性格だけど、憎めない、自分に正直な人だなぁ。つぐみを取り巻く周りの人が温かい。夏の夜の描写がすきだった。

    装丁が素敵。この物語にぴったりで美しい。

  • 夏休みのたびに田舎に行ったことのある人なら、きっとこの主人公の複雑な感情を理解できる。

    例えその場所がなくならなくても、自分が大人になったり、環境が変わったり、知っている人がいなくなったり・・・。色んな理由で、楽しかった時と全く同じ夏はもう来ない。それを懐かしく思い、自分の宝になる。その雰囲気がうまく描かれた小説だと感じた。

    最後にベタにつぐみが死んで終わるのかと思っていたけれど、そんなオチではないところがさすが。死ぬとそれなりに話はまとまるけど、この話はつぐみの死なしに、主人公の故郷を想う感情を表現したことによって、より切ない複雑な気持ちが出ていると思う。それがすごくイイ。

  • これも映画化されている作品。つぐみという、めちゃくちゃな女の子の話。

  • ・「それはいやな奴というより、むしろ変な奴ね」
    私は言った。
    「そう、わけのわかんない奴。いつもまわりにどこかなじめないし、自分でも何だかわかんない自分をとめられず、どこへ行きつくのかもわかんない、それでもきっと正しいっていうのがいいな」
    つぐみは暗い海をまっすぐ見つめてさわやかに言った。

    ・時々、不思議な夜がある。
    少し空間がずれてしまったような、すべてのものがいっぺんに見えてしまいそうな夜だ。寝つかれずに聞き続ける柱時計のひびきと、天井に射してくる月光は、私がまだほんの小さかった頃と同じように闇を支配する。
    夜は永遠だ。そして、昔はもっとはるかに夜が永かったように思う。何かの匂いがかすかにする。それは多分、あまりかすかなので甘く感じる、別れの匂いなのだろう。

    ・あの夜、つぐみは浜で白い石ころをひろい、それを本棚のすみっこにずっと今も置いてあるのだ。つぐみがあの夜、どういう気持ちだったのかは知らない。どんな気持ちがその石ころにこもっているのかも、わからない。
    案外、いいかげんなことなのかもしれなかった。でも私は、あらゆる点で、つぐみが「生の人間であること」を忘れそうになる度にその石ころのことと、あの夜、はだしで外に出て、歩かずにはいられなかった幼いつぐみのことを思い出して、なんとなくもの哀しく、冷静になるのだった。

    ・「ねぇ、おまえ、恭一」とつぐみが飛び出しそうな大きい瞳を見開いて言った。「おまえにずっと会いたかったんだ。また、会えるか?」
    私はぎょっとしたが、相手はもっとぎょっとしたらしく、しばらく沈黙してから、
    「・・・うん。俺は夏中ここにいる。権五郎を連れていつもうろうろしているし、中浜屋ってとこに泊まってるんだ。場所、わかるか?」
    「わかる」
    「いつでも訪ねてきてくれ、姓は武内だからな」
    「わかった」つぐみは、うなずいた。

    ・「どんな時でも、こんなに何もかもに対して無関心になったことなんてない。本当に何かがあたしの中から出ていってしまったようだ。今までは、死ぬことなんて何とも思っていなかった。でも、今はこわいんだ。自分を駆りたてようとしても、いら立つばかりで何も出てこない。真夜中に、そういうことを考えているんだ。このまま調子が戻らなかったら、死ぬ、そういう気がする。今、あたしの中には激情が何ひとつない、こんなことは初めてだ。何に対する憎しみもない。自分がちっぽけな病床の少女になっちまったみたいだ。一枚ずつ葉が散っていくのが本気で怖ろしかった奴の気分がわかるんだ。そして、まわりの奴らがこれから、少しずつ今までより弱っちまったあたしのことをバカにしはじめて、少しずつ影が薄くなってゆくことを思うと気が狂いそうだ」

  • ふんわり綺麗なベールに包まれているような話。カバーのイメージかもしれないけど。つぐみの生き方が強くて、美しい。

  • ツグミといえばセンター試験の現代国語。まさかの「お前を好きになった」に傍線。敦との鉄板ネタ。でもツグミはキュートだと思う。

著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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