シュガータイム

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 134
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120019982

作品紹介・あらすじ

砂糖菓子みたいにもろいから余計にいとおしくて、でも独り占めにしすぎると胸が苦しくなるの。わたしたちのシュガータイム。新芥川賞受賞作家初の長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 過食になった女子大生のお話

    小川洋子さんのを読むのは久しぶり
    「博士の愛した数式」がとても良かったので、「妊娠カレンダー」とか「薬指の標本」を読んで「不思議な話を書く人なんだなぁ~」とか「幻想的な雰囲気だけど、リアルを想像するとグロくね?」とか思ったものです

    今回の主人公は急に食欲が増加し、食べたものをすべて日記につけているという状態
    彼氏もいるけど、彼も彼で性欲がない?のか何なのかそういった行為はしない
    血のつながらない弟は身長が伸びない病気(小人症?)で、しかも主人公の住むアパートの大家さんの宗教施設に引っ越してくる

    世間一般で言えば通常ではない状態にもかかわらず、本人たち視点では非常にふわっとした雰囲気に感じられる
    その辺、小川さんは幻想とリアルの境界を曖昧にするのが上手いよね


    あと、好きなところは
    村上春樹じゃないいけど、「ユダヤ人の死体の脂で作った石けんのようなアイスクリーム」という例えとか

    継母の電話に対して「航平のそばにいるわたしに彼女の心配を肩代わりさせようとする。」という表現とか

    彼氏と相手の人が「含まれあっている」ってところとか

    含まれあっているってのは素敵だなぁ
    私もそんな相手に出会ってみたいものです
    いるのかな?(笑)


    あと、深夜にパウンドケーキ作るのもおいしそうだし
    弟との食事会の準備から終わるまでもおいしそう

    最後のシュガータイムについてはとってつけたような説明めいていて違和感
    そんな説明なくてもいいとおもうけどね

  • まさに小川洋子ワールド。

  • 小川洋子作品2作目。
    博士の愛した数式は良かったがこちらはまったく共感できず。。。

  • 愛しくて苦しくて脆く儚い、甘い時間。

    止まらなくなった食欲。
    バイト先で大量のアイスクリーム・ロイヤルを食べてから、
    生まれつき背が低いままの弟の引っ越し、

    きっかけもわからないままにはじまった異常なまでの食欲を抱えながら
    恋人との別れ、痛みや孤独と、降り注ぐ日の光のなかに消え去る自身と思い出となる、展開する日々。

    感覚でできているような話。

    主人公が食べまくってるところは、読んでいるだけで胸焼け。

    古い本だね、19年前とか。
    だけども色褪せることのない話は心地よい)^o^(

  • 主人公は大学生のかおる。
    過食症に似た症状から日記を付け始めるのですが、そこから紐を解くようにゆるゆかに彼女の日常の変化を物語で描いています。
    この物語でかおるが何故過食症に陥ったのかを、具体的に描いてはいませんが、最後彼女は平然とその日記と決別します。
    劇的な変化はない穏やかな物語だからこそ、
    どんな小さな出来事や変化が際立ち、特別な話へ変わっていく。
    この著者は小さなマジックを仕掛けてる気がする。ひっそりと穏やかな物語の中に。

  • (2005.08.05読了)(2004.06.13購入)
    主人公(かおる)は、大学4年の女性。自分の食欲が普通でないことに気付き日記をつけ始めた。ほとんど一日中、食べることについて考えていた。食べるのに体重は、1グラムも増えていなかった。
    「私は規則正しく大学に通い、講義を聴き、演習発表をし、レポートを書いた。時にはラグビーの試合を見に行き、養護施設でボランティア活動をし、スポーツクラブのプールで泳いだ。」
    やたら食べるようになったきっかけは何かと考えてみると、二つ思い浮かぶ。
    「一つは、ホテルでアルバイトを始めたこと。披露宴であまったデザートを食べないといけなかった。二つめは、弟が引っ越してきたこと。」
    実の母は、小さい時、病気でなくなったので、父は子持ちの人と再婚した。主人公が11歳で、弟になる航平が8歳の時だった。航平は、背が伸びない病気だった。
    「高校を卒業した航平が大学に行かずに、私がお世話になっている大家さんのところで修業する。」「大家さんの家は、神道宗教の教会だった。」
    異常な食欲のことを友人の真由子に相談したら、「今日はとことん、かおるに付き合ってあげる。かおると同じものを同じ量だけ一緒に食べてあげる。そうしたら何か、正体がつかめるかもしれない」といってくれた。
    「最初の自覚症状はどんな感じだったの?」
    「最初は、トマトだったと思うわ。たまらなくトマトが食べたくなっていたの。身体中の細胞が、トマトトマトって、つぶやいている感じだった。じっと我慢していたら、そのつぶやきが蟻みたいに一個一個の毛穴から這い出してきたの」
    恋人は、吉田さんという工学部の大学院生で、金属について研究していた。吉田さんのマンションで夜を一緒に過ごす時は、「一つのベッドに潜り込み、語り合い、そして眠る。それだけだった。」(吉田さんには、性欲がないらしい。かおるさんはそれで満足だった。)
    吉田さんは、友人の勧めで精神科医のカウンセリングを受けた。
    真由子が大学野球のリーグ戦の切符を5枚取ったので、「吉田さんとかおると、森君と私と、それから航平君を連れてゆきましょうよ」と誘ってきた。当日、吉田さんは現れなかった。その夜、吉田さんから電話がかかってきた。交通事故に巻き込まれ、一緒のバイクに乗っていた人が大怪我をしてしまったので付き添っていたのだという。
    翌日の朝刊を見ると、「バイクの後ろに乗っていた×××美さん(32)が右手を折る全治一ヶ月の重傷」とでていた。女性と一緒だった。
    その後、吉田さんと学校で一度偶然会ったきり、何の連絡もなかった。こちらから連絡はしたくなかった。真由子の提案で、32に際の女性を探してみたりもした。学校近くのアパートだった。その人を見る事はできなかった。
    秋も深まった頃、吉田さんから手紙が届いた。吉田さんが、交通事故の時一緒だった女性は、カウンセリングで通った精神科医に頼まれて会った女性だという。ソ連へ留学することになり、その女性と、ソ連に行くことにした、ということだった。
    こうしてかおるのシュガータイムは終った。
    ●文庫版
    「シュガータイム」小川洋子著、中公文庫、1994年4月

    著者 小川 洋子
    1962年 岡山市生まれ。
    早稲田大学文学部卒。
    1988年 海燕新人文学賞を受賞。
    1990年 『妊娠カレンダー』により芥川賞受賞

    (「BOOK」データベースより)amazon
    砂糖菓子みたいにもろいから余計にいとおしくて、でも独り占めにしすぎると胸が苦しくなるの。わたしたちのシュガータイム。新芥川賞受賞作家初の長篇。

  • 自分の食欲がどれくらい普通でないかを確かめるために食べたものを日記に書き続ける主人公かおる。背が伸びない病気を持つ弟航平。同じ大学の友人真由子。院生の恋人吉田さん。シュガータイム=砂糖菓子みたいにもろいから余計にいとおしくて、でも独り占めにすると胸が苦しくなる・・・。あとがきに「どんなことがあってもこれだけは、物語にして残しておきたい何か」と書かれてあった。2009/9

  • 読了。すきなはなしでした。

  • リアルのようで、ファンタジーのようで、
    絶対的にリアル。

    不思議な空気感の作家さんだと思う。

  • 満たされない、と気付くのに時間がかかるほど穏やか。

  • 大学の四年間は、確かに砂糖菓子のように思い返すときがあります。
    何も感じずにはいられない時期だったなぁと。
    心の奥深いところに映る瞳はどんなだったろう。
    読後、清らかな気持ちになりつつも深く沈み込んでしまいました。

    読むにはそれなりの覚悟が必要です。
    解る人と解らない人に別れるこの本の内容は☆三つにしておきます。

  • えーと、・・・よくわかんなかったです。
    慌しく読むのはよくないですね。

  •  そんなに入り込めなかった。なんだか物足りない感じがしてしまった。

  • ぱらぱらと、本を読んでるんだと実感した。

  • タイトルのやわらかさにつられて購入。まだ若かった自分には、とてもつらいストーリーにかんじられた。淡々とした日常。だいすきなひと。それなのになにかがかけてる。
    今読んだら、また何かがちがうんだろうか。

  • 「わたし」は毎晩、ベッドの中で奇妙な日記を付けている。その日一日に食べたものを残らずピックアップし、自分の食欲の異常さを確めるためである。
    「普通でない」食欲になってしまった主人公のかおると、まばたきの美しい弟、同じ大学の友人、そして院生の恋人との物語。

    小川さん初の長編小説とのこと。ありふれた日常の中の非日常を描く作風はこの頃から。
    「普通でない」主人公の食欲に共感してしまう。小さいままの弟を愛しく思う。決して「普通でない」ストーリーに、ごくごく自然に引き込まれてしまう。
    しかしラストは解説の林真理子さんの指摘通りでしょう。

  • 技術的に未成熟な初期故の良さにあふれた作品、という印象。

  • 主人公はなにかにもやもやしてるのだとは思う。
    でもなににもやもやしてるのかあまり共感できなかった。
    変に非現実的というか…。
    親友さんは素敵。

  • 最初はよかった、かな

  • 小川洋子さんの深い部分を見た感じ。大事な本。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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