- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120028663
感想・レビュー・書評
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吉田知子さん好きならたまらないだろうと思う短編集。冒頭の『箱の夫』からして面白すぎるというか、なぜ『箱の夫』なのか、『馬絹』ってどこ?という疑問を一切受け付けないし、あえて説明もいらない。『箱の夫』『遺言状』は良いお話だが、あとは全部怖かった。一番ゾクッとしたのは、『母の友達』それから『遺言状』に出てくる東堂は、『東堂のこと』の東堂と別人みたいだけど、何か関係があるのか、同じく『遺言状』に出てくる『エス』が『恩珠』の最後にいきなり出てきて、ひょえ〜っとなったり、細かい事がいちいち気になった。ありふれた日常がくるっと反転し、その境目があやふやで本人も無条件にそれを受け入れているような様、あるいは狂っているような主人公の言っている事が、本当に起こるように思われる時間の歪み。うん、面白かった!
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ねじれていく日常の先にある異界を描いた八篇。『夢十夜』や『冥途』に通じる不条理。この人の著作に関しては、強く再版を希望します。
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家の中だから、安心とは限らない。家の中でも、妖しいものはやってくる。どのにいても、不穏はつきまとう。見えないふりをするのは簡単だ。でも、恐ろしいものはいつでも近くにあるんだと思う。そんな作品でした。面白かった!
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8つの短編のうち多くが、老人性の呆けを題材にしている。認知症の身内がいる自分にとっては、現実と当人が現実と思っているズレた世界とが、知らないうちに交錯し、入れ替わっていく様が、ありありと分かって少し息苦しくなる。どんなにリアルに描かれた物語でも、どこかで「これは本の中の世界」と思いながらページをめくるが、この本は、これまで読んだどの話よりも、現実的だったかもしれない。
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受け入れて前に進むしかないおかしなお話
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この作家さんは、ファンタジーやライトノベルをよく読む人にもすすめたい。タイトルになっている作品がすごく好き。
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妖怪ぬらりひょんが家に訪れたら、この本を読んだのと近い気持ちになりそうな。事件も何にも起こらないし、私の経験する日常と同じ程度の時間が流れていくのだけれど、いつも寄り添っている違和感が視界の端に映っている、そんな短編集。この人の作品はクセになる。