回送電車

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著者 : 堀江敏幸
  • 中央公論新社 (2001年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120031458

回送電車の感想・レビュー・書評

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  • このちょっと前に星野博美のエッセイを読んでたけれど
    私はこちらの堀江さんのエッセイの方がいいなあ、
    好きだなぁと思った。
    なにより語り口が冷静でいい。冷静な中に時折のぞく
    面白みが読んでいて心地よかった。

  • 読みたい本があると、手帳のブックリスト欄に、これだけは怠ることなくメモしておくのだが、ここ一、二週間ほどそこに書き入れる本に出会わない。たまたまなのだろうが、新聞の書評欄にも広告欄にも、メモを取りたくなるような本がみつからない。こんな時は図書館の新刊コーナーに足を運ぶことにしている。この本もそこで見つけた。

    作者の名前はよく知っている。『おぱらばん』で三島賞をとる前から、やはり新聞の書評で見つけ、気になっていた作家である。田中小実昌氏だったかが、歳をとると小説が読めなくなるという意味のことを書いていたが、それは本当で、ここ数年、小説を読むことが億劫でならない。食指は動くのだが、手にするだけでまた書棚に戻すことが続いている。

    この本は、新聞や雑誌社に求められて書いた短いエッセイを集めたものである。若い人なのだが、文章が端正で、浮き足だったところがなく、落ち着いた筆致が何より好ましい。多くは、身辺の細々とした話題や文学作品についての記述で占められている。繊細な感受性を感じさせる素材の選び方には、線の細さを感じるものの、押しつけがましさのない叙述に近頃あまりお目にかからない「品の良さ」を見つけ、うれしくなった。

    「回送電車」という題名の由来が巻頭に置かれた文章で説明されている。作者は、自分の書くものの位置づけの「曖昧さ」、と言って悪ければ、「ハイブリッド性」との共通点を回送電車という存在に感じると言う。それは、『梗概について』という一章の中で語られる「階段の踊り場」に寄せる愛着とも重なる。安定した場所に自分を置くことを忌避する作者自身の文学的立場を物語るものだ。

    とはいえ、それはあくまでも文学的な位相の問題であり、生活者としての堀江氏は、むしろ保守的な生活感覚を保持し続ける。珈琲挽きや頭痛薬、ペーパーナイフなどに寄せる思いを綴った短文はよく似た気質を持つものにとっては他人事ではない。かく言う私もそうだが、コリン・ウィルソンの『アウトサイダー』を経由してヘルマン・ヘッセ受容に至る経緯を綴った一文に若い自分を見出す読者も少なくないだろう。何度読んでも打ちとけにくい作家がいる一方で一度読んだだけで気質が密着して離れ難くなる作家もいる。読後、『熊の敷石』をリストに書き入れたのは言うまでもない。

  • 堀江敏幸「回送電車」読んだ。http://tinyurl.com/3pqjufv 何気ない日常が、この人の文章を透過するとその時しかない特別なできごとになる。日用の道具や住宅地の景色や猫とカバへの愛着とともに、さまざまな作家や書について語られる。カバ。。。(つづく

    文章はどこまでも冷静なのに、突拍子の無さと全体を覆うユーモアが読む場所を選ばせる。お客様相談室やナゾー=フー・ゴルバチョフのエピソードを読んで、ベランダでひとり声を出して笑うという不気味なことをやってしまったぞ。さ、次は「回送電車III」だ(IIは先月読んだ)。

  •  堀江さんを最初に読んだのは「めぐらし屋」で、きっかけとなった書評には「珍しく女性が主人公」とあった。当時はそれがどのくらい珍しいことなのかわからなかったが、今回、なるほど堀江さんが書いていたものは文学界のちゃぼ的存在のものであり、従っていつも堀江さんらしき主人公を目で追っているような文章が多いということが理解できた気がし、必然的に男性が主だったのだということがわかった。
     今回、小川洋子→ビブリア古文書堂という順に本の話を立て続けに読んだことも何かの架け橋と呼べるだろうか。アンカット版をペーパーナイフで開きながら読む楽しみ、フランスから本の取り寄せ、なんて、今まで文学者と名のつく人は研究のために当然そうするのだと思い込んで堀江さんのエッセーを読んできた。
     それにしても地味でかつ想像力あふれるエッセーにわくこの親近感はなんだろう。トラクター、リコーダーという地味な存在の偉大さを世の中に発信してくれたことへの、感謝の念、なのか。はたまた、いつも頭の中で組み立てた想像やら仮説やらを、いきなり結論部分や疑問点から述べ始めることで周囲に当惑を引き起こすばかりの自分に欠如しているものを、堀江さんのエッセーにカバーしてもらっている気がするからだろうか。

  • 普通なら見過ごしてしまうようなものへの著者のこだわりや愛着、あたたかな目線に共感。たとえば、町中に唐突に存在する巨大な球体、ガスタンクにさえも親近感を抱くくだりにはほっと気持ちが暖かくなった。ああ、そうだったんだ、って。実はわたしは小学生のとき夏休みの写生の宿題にガスタンクを題材にしたことがあったのだ。それも2回。なんであんな表情も希薄な物体を・・と思い返すこともあったのだが、そうか、子どもながらに(子どもだからこそ?)あのまんまるで巨大なタンクに体温を感じていたのかもしれないな。

  • エッセイのような評論のような小説のような、ジャンル横断的な文章はそうか、回送電車なのか。でもわかった。この人の文章の精緻や静謐さは、他人の乗り込みを拒む回送電車の如きうっすらとした厭世観に寄るところ大なのだ。堀江氏の文章に登場する語り手は、堀江氏自身であってもあるいは虚構の人物であっても、一様に積極的な人付き合いを疎み人混みや喧噪を巧みに回避するような人物が多いと思っていたけど。そしてそうであればこそ、この人の文章に、その技術や感性への憧憬とは別のところで仄かな親近感を覚えるのかも知れない。

  • 小説家でもあり仏文学者でもある著者のエッセイ集だ。
    小説でも随筆でもない散文のようなもの、という自著に近い印象を「回送電車」に重ね合わせて、ひどく曖昧な文章が集められている。
    日常のふとした切れ端に対する考察はいいな、と思うところがあったりしたけれど、専門分野である仏文学のことになると、知識のない自分にはまったくわからない固有名詞や難解な自論が展開したりしてついていきにくかった。

  • エッセイ?になるのかな。
    昔この人のフィクションを読んだのを思い出し、
    図書館で借りた。

    うーん、なじみのない雰囲気。
    そんなに入り込んだり共感したりできなかった。

    小難しい本を最近読んでいないから
    抵抗があったのかもしれない。

    未読了。

  • 2009/6/24購入

  • シンプルな表紙に惹かれた。
    この作者を知るきっかけにもなった。
    何かと奥深い。ガスタンクの風景がいい。

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