海軍の選択―再考 真珠湾への道 (中公叢書)

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著者 : 相沢淳
  • 中央公論新社 (2002年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120033049

海軍の選択―再考 真珠湾への道 (中公叢書)の感想・レビュー・書評

  •  私は山本五十六と同郷である。さらに、彼は私の高校の大先輩ということになる。学校には彼が地球儀の傍らで作戦を練っている姿を描いた肖像画がデカデカと掛けてあった。また我が家の近所には、山本の墓もある。いずれにせよ、私の町では山本五十六は偉大な人なのである。
     花火・米百俵・五十六、そして柿の種。ちょっと通だと『峠』である。私のふるさとはそういうところだ。
     それはさておき、山本は真の平和主義者であったにもかかわらず、「一年半くらいなら暴れて見せましょう」と職務上やむなく真珠湾攻撃に向かった。阿川弘之らによって神話化されたこのイメージ。昨今、工藤美代子『海燃ゆ―山本五十六の生涯』も刊行されたそうだが、神話化されたイメージをどれだけ塗り替えられるのか?読んでいないので深入りはしないが。
     本書を読むと、そういうイメージは払拭される。山本と米内光政・井上成美のトリオが、米英協調から日独伊三国同盟に反対したという「通説」に著者は再考を迫る。海軍の伝統である「北守南進」、ひいては対ソ提携の立場から、反ソ的な陸軍主導の三国同盟に反対したのではないか。日独海軍の間には、技術面を中心とした強い結びつきがあり、対独提携自体に否定的だったわけではない。
     本書を読み進めるほどに、海軍=英米協調というイメージが揺らいでいく。
     陸軍は好戦的で、海軍は協調的だった。真面目な歴史書であっても、その影を引きずっている本がまだ多い。海軍史研究が陸軍のそれに比べて遅れているということだろうが、海軍という機構も政治主体の一つとして、敗戦へと雪崩れ込んでいく、あの当時の歴史に積極的に関わっていたことは無視できないことであり、本書はそのことを痛感させる。
     著者の相澤氏は防衛庁防衛研究所戦史部主任研究官。防衛庁の人がここまで書いても大丈夫なのか、とちょっと余計な心配をしてしまうくらいに刺激的な論考だ。

  • 「海軍は英米協調」という通説に反論する本。海軍はワシントン海軍軍縮条約には当初同意していたが艦艇の比率には不満、最終的に拒絶。海南島を占領し、東南アジアに植民地を持つ英仏が警戒するであろう南方進出の拠点とする。三国同盟に反対していたのも英米協調ではなく対ソ提携の可能性のため。山本五十六もその例外ではなく、一度は対米戦をやってみたいという思いはなかったか、また不満は対米戦開戦自体ではなく軍備の十分な準備ができていなかったことに対してではないか、とする。自分には通説と筆者の見解のどちらがより適切かを判断するほどの見識はないが、新鮮な視点だ。海軍が南進論をとっていたことは周知の事実なので、そこから解き起こせば筆者の分析にも一理あると思われる。

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海軍の選択―再考 真珠湾への道 (中公叢書)の作品紹介

伝統的な「英米との協調論」から、対英米開戦に最後まで反対していたといわれる海軍。しかしながら、戦前の日本海軍は、戦間期に英米との協調を象徴していた海軍軍縮体制を最終的に拒絶し、また、日中戦争遂行の中で将来の対英米戦に向けた態勢作りに腐心していた組織であった。従来、こうした動きは一部強硬派の突出とされてきたが、本書ではあらためて、海軍全体を通した「英米との対峙論」から、その「真珠湾への道」を探る。

海軍の選択―再考 真珠湾への道 (中公叢書)はこんな本です

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