バースデイ・ストーリーズの感想・レビュー・書評

  • どれも手軽に読めるのに、深くて重い短編ばかりで、すごく好みだった。特に印象に残った数話について、少しだけ感想を。

    ラッセル・パンクス「ムーア人」
    誕生日にふさわしい贈り物は、ほかになにを差し置いてもやはり「優しさ」なんだろう。例えそれが不道徳であっても、優しさのあたたかさには敵わない。そういう話だと思った。

    デニス・ジョンソン「ダンダン」
    暴力的な男の話。ラストの「もしぼくがあなたの頭を開いて、あなたの脳にひょいひょいとはんだごてをあてるだけで、あなただってそんな人間になってしまうかもしれないんだよ」という文章。終盤になっていきなり「あなた」と呼ばれることで、「他人事じゃねえんだぞ」とぐっと釘をさすような感覚は好き。

    ウィリアム・トレヴァー「ティモシーの誕生日」
    息子から両親への意趣返しの話。この小説内でも一番暗い話だと思う。息子を傷つけたのは、彼ら両親のお互いへの愛情あり母と父の「終わることなき祝典」が息子を傷つけ、復習を意図させるまでになった。
    誰が被害者・加害者という問題ではなく「そうなるべくしてなった」という理不尽さが悲しい。結局は誰かが誰かを傷つけるだけとなった誕生日会。
    そしてどうしようもなくもどかしくて切ないのが、傷つけられた両親は「そこにあるものを受け入れるしかない」と微笑んだこと。「復習を抱くとき、そこに公平さの入り込む余地はない」と納得していること。そして、この2人が生きて愛情で結びついている限り、息子・ティモシーとの関係は好転はしないだろうこと。
    これから毎年ずっと彼らは「ティモシーの誕生日」に傷つき続け、その傷をずっと受け入れ続けるのだろうか。庭に打ち捨てられたもの同様に、受け入れるしかどうしようもないから。

    ダニエル・ライオンズ「バースデイ・ケーキ」
    偏屈なおばあさんがケーキを買う話。
    これまたあまりいいとは言えない読後感。
    ラストの「誰かひとりだけでいいんだよ」があまりにも切ない。彼女の育てた子供3人は彼女の家には来ない。孫たちは彼女を好かない。
    彼女が先週用意したケーキは、ずっと手つかずのままであり、たぶん今日のケーキも同じ運命をたどるんだろう。そのケーキがもたらせたはずの可能性(マリアとテレサの笑顔とか)は、彼女には関係のないことである。
    他人の幸運がはからずしも自分によって叩き潰されたところで、自分が幸福になるわけでも、不幸になるわけでもない。その不変さが悲しい。

    デヴィッド・フォスター・ウォレス「永遠に頭上に」
    文章のリズムが心地よすぎる!!
    単語のセンスも抜群だし、そのリズムとセンスが13歳の成長過程における少年をクリアに描いていてとてもいい!!あまりにも好みすぎて、3,4時間かけて文章を書写したぐらいに好きだ。
    「それらのシャープに連なった頂が、後退していく赤色を背景に描く鋭く尖ったラインはグラフとなり、死を迎えつつある一日の心電図となる」にはもう感嘆を覚えるしかない。山の端を心電図と例えるそのセンス!それに夕映えを絡めて、情景を伝える文章力!「すごい」としか言いようがない。
    他にも数々の描写にうならされた。特に水の描写には目をみはるものがあった。「水は淡いソフト・ブルーにきらめくスパンコールであり」から「ハードな光のコインが、その水面にちりばめられている」にいたるまでの変容。
    文章を読むことが、ただ純粋に楽しい。酔わせるほどの文体をもつ作家に出会えたことが嬉しい。
    内容としてはただ13歳の少年がプールの飛び込み台からダイブするというだけなのだが、そのプールの描写、少年の身体の変化がまるで映画のように脳内に再現できた。すばらしい小説だった。

  • ”誕生日”をテーマに描かれた海外の短編小説をアンソロジー編集した一冊。あとがきにもあるが、誕生日を題材にした小説は、全体的に明るいものが少なかった。それでも、大概は何かしらを思わせるには十分な粒揃い。短いものは10ページほどの、長くても60ページ程度の11の物語。
    好みとしては、何とも言えない苦味が残る「バースデイ・ケーキ」、プロットの上手さ、ガツンと来る言葉が多かった「ダイス・ゲーム」、富裕層の妻が旦那に特殊なプレゼントを企てる新感覚の「バースデイ・プレゼント」が格別だった。

  • 想い出の一冊

  • アンソロジーの中でも暫定ベスト。村上春樹のフィルターに感謝。文学ってこうじゃなくちゃ。人生は一筋縄じゃないよ、やはり。ハッピーを深く捉えるためにも。

  • もう、かなり前に、主人から誕生日プレゼントとしてもらった本だ。
    当時、いまいちだなぁ、という思いを抱いた記憶がある。
    (主人には申し訳ないが)
    そして、今回読み返しても、やっぱりいまいちなのも多いな、と、私は感じた。
    面白いものもあったけれど。

    ティモシーの誕生日は、切なくて悲しくて痛々しいけれど、その感覚の生々しさが心に残る。

    バースデイ・ケーキも、しかり。

    慈悲の天使、怒りの天使は、人間臭くって偏屈で困ったおばあちゃんだけれど、変な人だとは思えない。その寂しさが、にじみ出ている。

    そして、バースデイ・ガール。
    やっぱり、願い事って、ひょいひょいとかなえられると、価値がないのだろう。
    平凡な人生を、必死で作り、守る。
    その努力が、幸せを生むのだろう。
    近寄ってはいけない場所、本当に、そうだと思う。

    その他のお話には、いまいち共感ができなかった。
    それなりにおもしろかったけれど、好きではない。今は。

    主人にもらった本だから、やっぱり、本棚に眠らせておこう、と思う。

  • 2012年07月 06/56
    10年前に読んだ本を誕生日間際に本棚の村上コーナーから発掘したので、再読。それぞれに切り口の違う短編が並びます。特殊なシーンを切り取ってそこだけ取り出したような、軸から外して限定された物語の世界の持つ違和感が、365日の一日なのに特別さを感じさせる誕生日とつながってるようなつながらないような印象でした。よくわかんないけど。

  • 中学時代に国語で『バースデイ・ガール』を教わってから興味を持ち、買った本です。この本の中では様々な誕生日にまつわる話がでてくるのですがやはり、『バースデイ・ガール』が一番印象に残った物語でした。何がいいとは言いえないのですが雰囲気が良かったのでしょう。お洒落染みていてなんとなく落ち着くような雰囲気でした。雨がまたいい雰囲気を醸し出していたように思えます。

  • 今日は大切なある方の70歳の誕生日で思い出した本。村上春樹さんの文章は苦手意識があってずっと避けていたのですがこの本は手元にありました。
    ーーーーー
    奇妙な話、せつない話、心がほんのり暖かくなる話
    村上春樹が選んだ誕生日をめぐる11の物語

  • 寄贈:油谷(2011.12.13)
    誕生日にまつわる短編小説です。とても読みやすかったです。個人的にはラストの物語が大好きです。

  • ムーア人
    バースデイ・ケーキ

  • 誕生日をめぐる11の物語
    村上春樹 編訳のアンソロジー。
    まるで、外国のアソートチョコレートの箱を開けて、わくわくドキドキしながら、ひとつひとつ手を伸ばして味わってみるような本でした。

    苦くてせつないのもあり、甘くて暖かいのもあり、今まで味わった事のないような奇妙なものもあり。
    誕生日の話といっても、ハッピーなものばかりじゃないよね。
    そういえば、自分の誕生日を思い返しても、そうだった。

    最後には翻訳モノではなくて、村上春樹作のお話が1話。
    今度は、彼の短編集を読んでみよう。

  • つぶつぶコロリ。

    山椒の身はピリリと辛い。

    そんなお話が詰まってました。

  •  村上春樹編訳のアンソロジー。
     新元良一氏のお話を伺う機会があり、そういえば持っていたなと本棚からひっぱりだしてきて再読。短篇はやっぱり読むのが難しいから、当時は読み流してそのまんま忘れてた。
     お話にあったデニス・ジョンソン「ダンダン」は、先日読了したトヨザキ社長の書評論にもたまたま引かれていて(この短篇は「ジーザス・サン」にも所収)、なんだかちょっと縁付いている。若さゆえの馬鹿さとも言えない荒涼感が痛い。まだちょっと痛むほど。
     レイモンド・カーヴァーの「風呂」の末文の絶望感もちょっと無い衝撃。これを忘れてんのか。私。ロングバージョンも読まねばなるまい。
     

  • 訳者である村上も評していたように、
    誕生日を題材にした短篇がほぼ一様に理不尽だったり救いがなかったりするのは、
    作家という肩書きをもつ人にひねくれ屋さんが多いからなのでしょう。
    そして村上の書き下ろし誕生日短篇がちょっとハートフルっぽいのは、
    そんなひねくれ屋さんばっかりの作家業に対しさらにひねくれた結果でしょう。
    まとめ方が村上節なのにはうんざりしたけれど、
    終わり方はいつになくファンタジーぽくて(村上作品としては)新しかったです。

  • 誕生日の見方が変わる本。産まれたことを、そして家族に愛されていることを感謝したい。

    村上先生の解説読んでたらよく「救済」という言葉が出てくるんだけど、現代英米文学のトレンドなのかな。そういうことも考えながら読んでいると好き嫌いは別にして「ダンダン」「風呂」「バースデー・ケーキ」の3つが印象に残りました。


    軌道から外れた一瞬の出来事が、破滅へ繋がっているのだろう。だれも幸せになれない。物事は悪い方にしか進まない。見捨てられた、残された家族の末路に、救済が見えなくてつらい。

  • レイモンド・カーバーもよかったけど、アンドレア・リーの話が印象深かった。他の本も探してみたい。

  • 正直に申し上げまして村上先生の書かれた「バースデーガール」しか読んでおりません。でもすごくこの話がすきなので★は五つ。これもまた中学生当時は最後まで何を願ったのか解らずやきもきしましたが、何度も読みたくなる話です。

  • 読み終わったのはずい分前だけれど、今だにいくつかの物語は覚えていて、じんわりと心を温めていてくれます

  • 村上春樹編訳の誕生日にまつわる短編集。
    誰にとってもハッピーな誕生日も、それだけでない何かを感じさせてくれるお話が色々つまっています。
    ダニエル・ライオンズの「バースデイ・ケーキ」とリンダ・セクソンの「皮膚のない皇帝」がお気に入り。最後に村上春樹書き下ろしの20歳の誕生日を迎えた女の子の話があって、当時丁度20歳だった私は運命を感じた覚えがあります(笑)
    結局はいつもと変わらないその誕生日が、この先の平坦な人生を暗示している気がするって、なんかちょっと分かる気がするなあ(笑)

  • 誕生日について書かれた短編小説を、
    村上春樹氏が集めて翻訳した。

    ラッセル・バンクスの「ムーア人」が好きです。
    男が21才で女が50才だったときに関係を持った男女が、
    30年後のに偶然再開するという話。
    中途半端に年をとると、なんのことでも、
    「初めて」と相手に伝えることに覚悟が要り、
    「初めて?」と聞くことにも覚悟が要るというのは、
    わかる気がしました。
    覚悟というか、
    繊細な神経、抵抗感、期待。を、含むから、
    副詞というより、大きい形容詞になっちゃう。

    そして、しっかり年をとってしまうと、
    必要な覚悟の大きさより、
    知りたいという我侭のほうが勝つらしいということ。

    きれいで、寂しくて、しかも良い話でした。
    なんやったら、真似してもいいと思うくらいに。


    レイモンド・カーヴァーファンには、
    「ささやかだけど役に立つこと」の短いバージョンの「風呂」が収録されていますので是非。
    ぜんぜん、印象が違ってくる。

  • 村上春樹の編訳している誕生日を題材にした外国小説の短編アンソロジー。まず面白いのが、ひとつひとつの作品・作家に対して春樹氏が決して少なくはないコメントを記している、ということ。春樹ファンにとってはなかなか美味しい。しかもそのコメントが、物語の前にあるんだよね。「これ、いい話だと思いませんか?」って言われてから、さぁ読むぞって思うと、背筋も伸びるし襟も正す勢い。春樹氏に物語をオススメされちゃうなんてとんでもない光栄(笑)、しかも好きな作家の好きな話を読めるなんて、とんでもなく幸せなこと。春樹ファンにはなかなか必須かも。私みたいに、外国小説に入るキッカケとしても、申し分ないと思いました。

  • 村上春樹による誕生日に関連した本。

    素適な話だけでなく怖い話や不思議な話が満載です。

  • いいんだけどな!村上春樹の作家紹介が良すぎて、期待しすぎて読んでしまう惜しさがある。

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