五郎治殿御始末

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120033513

感想・レビュー・書評

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  •  明治維新後の武士たちの生き様を描いた短編集。6編からなる。再読。

          * * * * *

     勝利した倒幕軍側の武士たちでも多くが苦労した維新後の生活。幕府軍側の武士たちの苦しみは、いかばかりだったでしょうか。それが抑え目のタッチで端的に書かれていました。

     どの作品もよかったのですが、個人的には「椿寺まで」と「柘榴坂の仇討」が印象深く感じます。
     旗本と彦根藩士という、維新で割を食った武士たちの意地と矜持が悲しいばかりに描かれていて、そのやるせなさが思い遣られました。
     また、箸休め的なコミカルさが楽しめる「遠い砲音」もなかなかよかった。

     派手な剣戟シーンがなくても十二分に魅力的な作品になりうる。さすが浅田次郎さんだと感心しました。

  • 面白い
    スッキリしてる

  • 表題作ほか全六篇の短編集。
    五郎治殿御始末と柘榴坂の仇討が印象深い。

  • 明治維新を迎えた、侍たちの短編集。

    「椿寺まで」
    以前は旗本であった小兵衛は商いを始める。その丁稚の1人、新太と共に甲州街道を行く。その途中寄った椿寺には幕末の戦から子と離れて暮らす尼僧がいた…。

    「箱館証文」
    徳島藩士・大河内伊三郎は政府軍として箱館を目指す最中、会津藩士・中野伝兵衛と遭遇する。大河内は脇差を咽元に当てられ、命を千両で売らぬかと問われ、証文を書いてしまう。その後、明治政府にて働いていた大河内は、訪ねてきた中野に証文を突き付けられる…。
    立場は違えど、日本と言う国のために、命をかけて戦った侍の明治政府への思い。

    「西を向く侍」
    幕府では天文方におり、その年々の暦を作ってきた成瀬勘十郎。新政府に変わっても、失職せず待命と言う形で、僅かだが給金を貰っていた。しかし、ある年の旧暦十一月に、米英のグレゴリオ暦に合わせるため、師走十二月二日をその年の大晦日とすると言うふれが出た。日本固有の暦を廃することに怒りを覚え、政府へと直談判に向かうが…。
    小さい頃から、カレンダーの隅に旧暦が書かれていてどんどん日付が現在と離れていくのを見て、昔はこの暦で季節は合っていたのかと不思議に思ってた。二十何年に一度、一年が十三月になるって、初めて知った。

    「遠い砲音」
    西洋定時は1日を24時間、1時間を60分、1分を60秒ときっちりと区切る。近衛砲兵の中隊長土江彦蔵は、その時刻に慣れずにいた…。
    「一瞬を規制してまで戦をすることに、いったい何の意味があるのか。それはただ、対する敵を同じ人間だと思わせぬための手だてではないのか。一セカンドの瞬間には、人の情のつけ入るすきがないから。命乞いをする間も、情をかける間もないから。」

    「石榴坂の仇討」
    井伊直弼の近習役を務めていた志村金吾と、桜田門外で井伊を討った郎党の1人の13年後。志村は仇討ちをなそうと郎党を探すが…。

    「五郎治殿御始末」
    明治を迎え藩がなくなり、続くべき家も始末しなければならなくなった五郎治。1人残った孫半之助を共に死での旅路に出ようとする…。

    明治維新により、生活、時間、制度などへ西洋文化が入り、戸惑う侍たちがなんとかそれまでの日本の文化をなぞりつつ、日々を送っていく様子がいい。

  • 御一新」から数年経った明治のはじめが、この短編集の舞台。武士という職業はとっくになくなり、多くの侍が職業を変えて、必死に生きていた。
    表題作「五郎治殿御始末」は、桑名藩の元事務方役人・岩井五郎治の思い出を、その孫が語る短編だ。廃藩置県の施行により、五郎治は旧藩士の「始末」(人員整理)を命じられる。元同僚たちに恨まれ泣きつかれながらも、彼はリストラの役目を淡々と遂行していく。そしてそれが終わったあと、五郎治はある決意を胸に、自分自身と岩井家の「始末」をつけようとするのだが…。

  • 維新の折に生きた人々の生ける記録。

  • 明治ご一新後の元武家の面々を描く短編。時代遅れで地味な話だけど、こういう風に死ねたらいいなあとも感じたりする。諦めや悲壮、無情といった話がを、浪花節とは逆の浅田節で描いている。

  • 映画「柘榴坂の仇討」の原作収録

  • 明治維新を生きた武士の短編集。
    時代小説を初めて読みました。言い回しが難しいので遠ざけていたのですが、良い物ですね。
    五郎治殿御始末では涙が出ました。真っ直ぐで不器用すぎるお爺様に何かを教わった気がします。

  • 時代の変わり目には壮大な、そして表に表れないドラマがあるものだと思う。この物語はそのようなものではないか。今の時代にもそれはあるのであろうが・・・
    歳の所為か目頭に熱いものが感じられる物語である。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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