コンクールでお会いしましょう―名演に飽きた時代の原点

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120034596

作品紹介・あらすじ

今なぜ世界中で国際ピアノコンクールがさかんなのか。その華麗な光と影を語って音楽的感動の原点、そして未来を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 音楽コンクールの歴史から、舞台裏、問題点までをわかりやすく解説している。数々の音楽コンクール審査員を務めてきた著者ならではの、当事者意識が感じられる。

    本書は、2003年に著者が講演した、NHKの人間講座「国際コンクールの光と影」の放送用テキストの草稿に加筆・改訂した本なので、著者の他の著作に比べ、万人向けの内容である。読者を選ばず、多くの人が楽しめる。入門者や門外漢にとっては、とっつきやすいだろう。

    その反面、「チャイコフスキー・コンクール―ピアニストが聴く現代」 や、「ピアニストという蛮族がいる」 の様な「濃い内容」ではないので、これらを読んだことのあるクラシック音楽通には刺激が足りなく、物足りないと感じるかもしれない。

    サブタイトルに「名演に飽きた時代の原点」とあるが、それは「名演に飽きたなら、コンクールに行ってみれば、好き嫌いや、感動の感じ方を改めて考えさせられるので面白いですよ」という著作からのお誘いである。引いては、それがメインタイトルの「コンクールでお会いしましょう」の意味であろう。


    本書を読んで、私が一つ違和感を感じたこと。

    名演を求めて演奏会に通い、CDを聴き比べて、名演にすっかり慣れてしまうと、「名演」のさまざまな意匠にすら飽きてしまう。そして、音楽以外の「プラスアルファ」の刺激が必要となる。

    著者は、映画「シャイン」のモデルとなったピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴットや、NHKのドキュメントで一躍人気者となったフジ子・ヘミングらのフィーバー現象を例に、「プラスアルファ」は簡単に感動できる「人間ドラマ」である、と分析している。

    しかし、私は違うと思う。名演に慣れる可能性があるのは、名演を数多く聴いてきたコアなクラシック音楽ファンだけである。

    フジ子らのフィーバー振りは、世の中の大多数派である、クラシック音楽ファン以外の人達(クラシック音楽の名演など聴いたことがない)が、CDを買ったから多く売れただけであって、世の中の少数派であるクラシック音楽ファン(名演をたくさん聴いている)の多くは、買わなかったのではないだろうか。クラシック音楽のコアなファンであればあるほど、演奏を重視し、音楽そのもの以外の要素は排除したがるものだからである。だから、名演に飽きた人達は、いくら「プラスアルファ」の刺激があっても、音楽そのものが素晴らしくない限り、かえって軽視してしまうだろう。

    つまり、「名演に飽きた人たち(マニア層)」と、「プラスアルファを加えた音楽家のフィーバー(一般層)」は、同列で考えるものではなく、まったく別次元の話であるように思う。

  • こういう切り口のクラシックの話は初めてだったけど、とても面白く興味深く読めた。

  • 日本を代表するピアニスト、中村紘子さんが著者。敷居が高いと思いがちなコンクールの舞台裏、審査員の立場からのコメント等、ピアノ好きの方なら楽しみながら読める一冊。

  • 今年1冊目。

    これまであまり「読む」ことをしてこなかった私にとってはとても読みやすい本だった。
    コンクールって見てるしか興味がなかったけど、これからはもっと面白く見れそう。

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著者プロフィール

2001 年 神戸女学院大学人間科学部卒業
2006 年 名古屋大学大学院環境学研究科博士後期課程単位取得後退学
現職 愛知淑徳大学人間情報学部 助教
専門分野は,認知心理学,思考心理学

「2019年 『心理学実験演習 図表作成マニュアル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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