通貨の興亡: 円、ドル、ユーロ、人民元の行方

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120036088

感想・レビュー・書評

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  • http://naokis.doorblog.jp/archives/BOJ_Governer_Mr_Kuroda.html【書評】『通貨の興亡―円、ドル、ユーロ、人民元の行方』〜黒田日銀総裁の本心はどこにあるのか?


    2013年3月に新日銀総裁に就任した黒田東彦氏の8年前の著書になる。大蔵省出身で、国際金融畑を歩く。ミスター円の異名をとる榊原英資は直接の上司だった。

    本書を読もうと思った理由は、いうまでもなく新日銀総裁の思想を知るためである。

    本書はタイトルどおり、通貨の歴史を扱っており、数多くの通貨政策の失敗も挙げている。
    ・第一次大戦後のベルサイユ体制の失敗
    ・ドル金兌換の失敗:ニクソンショック
    ・日本の変動相場への以降の失敗、第一次石油ショックで日本のみ20%強のインフレが発生
    ・プラザ合意というドル安誘導着地の失敗、ドル210円台の着地目標から150円台へ。

    「賢者は歴史に学ぶ」の論によれば、金融政策を成功裏に終わらせるのはいかに難しいかということがわかる。とすると、筆者が現在強く主張する2%のインフレ目標だが、2%で着地するという論拠はなんだろうか?過去の歴史をふり返れば、目標値に無事着地したケースはほとんどないことが分かる。

    また、筆者の提言は、アジア共通通貨の創設にある。本書執筆時点では、リーマンショックとその後のユーロ危機はまだ起きておらず、ユーロ統合は成功と論じている。通貨を統合する前準備として、インフレ率や財政規律など、それぞれの財政当局の規律を提示している。結局その後、ユーロは財政規律の杜撰なギリシャを加盟させてしまったため、苦境に陥ることになる。

    翻って今の日本を見ると、日本もまた財政規律が失われている。黒田東彦氏が歴史に学んでいるのなら、すべきことは2%のインフレ目標ではなく、財政規律の回復ではないだろうか?

    本書は、歴史読み物としては大変おもしろい。かのアイザック・ニュートンが造幣局長官を務めていたとは知らなかった。イギリスが世界史で主導権を握ったのは、なにも産業革命で工業化を先んじただけでなく、19世紀後半に世界中が金本位制を導入したことも関係があることがよくわかる。

    通貨の歴史を分かっていながら、黒田氏は日本銀行をどのように舵取りをするのか?今、それが問われている。

    <目次>
    第1章 円と、ドル、ユーロ、人民元に、いま何が起こっているのか
    第2章 ポンドの興隆の凋落
    第3章 ドルの時代とその行方
    第4章 ヨーロッパ統合から、ついにユーロの誕生へ
    第5章 東アジア共通通貨の必要性
    第6章 世界共通通貨は誕生するか


    2013.03.17 借りる
    2013.03.21 読了

  • 通過の未来について知りたくて読書。

    投資している通貨なので、ドル。最近、初めて欧州を訪れたのでユーロ。滞在しているので、人民元。日本人としてすべての基盤なので、円。通貨から眺めた近代経済史と世界通貨への道という内容。

    ドル円で見てみると、アメリカのマクロ経済政策に影響されて振り回されていることが分かる。プラザ合意がバブル経済の原因の1つとなるし、現在の経済低迷の入り口となったのも歴史的事実といえる。

    日本の国益で考えると円は国際化した方がいい。そして、為替は安定することに越したことはない。しかし、それは現実的はないため、円高の時には円高対策。円安の時には円安対策をとりこれまで乗り切ってきた。

    円の国際化を目指するよりも日本経済が持続的成長を復活させ、暴走する中国への抑えとして、アジアを牽引していく存在と再びなることが重要だと思う。

    将来的には世界から通貨はなくなる。または、世界通貨のようなものが登場すると言われている。だが、同時に、世界通貨どころか、アジア通貨もかなり遠い存在だと感じる。

    人類は繰り返してきた通貨を巡る失敗から学び、経済政策に生かして欲しいと思う。戦争を起こさないためにも。ユーロの最大の貢献は欧州での戦争がなくなったこと、それでノーベル賞を受賞したわけだし。

    本書は日本領事館大連出張所でお借りしています。有り難うございます。

    読書時間:約40分

著者プロフィール

政策研究大学院大学特任教授兼政策研究院シニア・フェロー

「2024年 『国際法研究 第13号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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