告白

著者 :
  • 中央公論新社
3.93
  • (269)
  • (128)
  • (226)
  • (23)
  • (14)
本棚登録 : 1228
感想 : 230
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (676ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120036217

作品紹介・あらすじ

人はなぜ人を殺すのか。河内音頭のスタンダードナンバー"河内十人斬り"をモチーフに、町田康が永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読んで20年以上経つが、コロナ明けのどこかのまちで河内音頭を聞いた瞬間、内容、というより本の熱量を鮮やかに思い出した。もう一度読んでももうハマれないけど、一度ハマって、良かった。

  • 町田節の真骨頂。
    史実を元にして、一人の男の脳内を描ききる。
    独特の言い回し、粗野な世界観に脳内がぐるぐるする。
    全く知らない、想像もできない、他人の頭の中を覗き見た気持ち。

  • うわぁ、なんという怪書。思弁のかたまり。頭の中で思っていることと出てくる言葉がうまく一致させられないもどかしさ。
    作者の言い回しがツボって何度も笑った。

  • これはすごい。河内十人斬りの犯人、熊太郎が主人公。熊太郎の考えがあーだこーだあーだこーだとだらだら垂れ流しで書かれていて、しかも河内弁で読みにくく、ついつい読み飛ばしてしまったが、そこも含めて面白かった。熊太郎、抜けているというか、あほというか。弥太郎がかわいそう。他の人とは違って、自分は思考をそのまま言葉にできない、と熊太郎は常々感じていたけど、人って多かれ少なかれ誰もがそうなのではないかな。最期に思考と言葉が一致「あかんかった」ほんま、それ。

  • 熊太郎の思考に圧倒される。でも共感してしまう。
    河内十人斬りは知らなかったので、予備知識を入れないまま読んだ。

    口から出る言葉と、からだの中に渦巻いている思考が一致しない男、熊太郎。
    頭の中で散々考えたあげく、粋な言葉を選ぶはずが本当に言いたいことから要旨がずれてしまったり、それどころか「何考えてるかわからない」と同情の目を向けられるような言葉を発してしまったりする。行動も変。
    馬鹿にされ、騙され、利用されるばかり。
    もちろん自業自得のところもあるけど本当はかしこいのに。

    最終的に破滅へ向かっていくわけだけど、そこに至る思考がものすごく説得力がある。こんな自意識過剰、理解したくないのに、痛いほどわかる(ところもある。全部じゃないけど。)
    「人間失格」を読んだときのような気持ちになった。

    それにしても、町田康さんすごい。
    こういう思考回路を言葉で表してくれたことに、感謝。
    誰かに言いたいけど言ったら確実に面倒くさがられ引かれてしまうだろうから言えずにいた気持ちが、活字になっていた。
    小説の内容というより、私にはそっちの方が感動です。

    凄惨なシーンですら、「あひゃーん」には吹いた。笑いどころも多い。
    河内弁でしゃべりたくなる。
    熊次郎がとにかく憎らしい。白こすぎるんじゃ、ぼけ。

  • 「自分の思想と言語が合一するとき自分は滅亡する」

    人間のほとんどが自分の本心を上手く器用に隠してきれいに整えて言葉に表し、それで人付き合いをしている。しかもそれを無意識のうちに。
    主人公の熊太郎がそれができなくて苦悩し、自分の本心と向かい合い、突き詰めていった最期の時に思ったこと……。

    この苦悩をぜーーーんぶ、文章で表現した町田さんはすごい。
    すごいなんて言葉じゃ薄いな。すいません。

    本当に自分にとって重く深いテーマであるが、要所要所に笑いのツボをついてくる描写が多いのも最高。笑える!
    人生で一番の本に出会ってしまった。

  • 町田康作品の中でも、主人公の城戸熊太郎に圧倒的な感情移入をしてしまい、最後の河内十人切りにいたる前に、あまりにも読んでいられなくなって一旦本を閉じてしまったほどだった。

    他の町田作品だと、お話しが短いのと、主人公がだいたい破天荒というか真面目なんだけどどこか突き抜けてはちゃめちゃで、ここまでのシンパシーを感じることはなかった。今年一番響いた作品になりそうな予感がする。

    でも、この「告白」の主人公熊太郎は思弁的な自己を表現する言葉を持たず、何気なく反対の行動を取ってしまってもごく僅かの友人を除いては誰にも理解をされないどころか侮蔑される。その心理描写における思弁的な言い訳の仕方が、またあまりにも分かる気がするる。

    たとえば、海外に行ったとして、ふと目の前に見かけた吉野家に入る際に「いや自分は吉野家が食べたいと感じて今まさに入らんとしているのだが、なるほど海外に来てまで吉野家を食べるのはどうか、せっかくだから現地の料理を探索すべしという考えにも一理あるだろう。いやしかしながら、そういったステレオタイプな言説に惑わされることはなく、自分はただ安易に吉野家にはいるのではなく、あえて海外で吉野家を食らい、自分のスタイルを安易に変えずに苦節を自ら呼び込む男であることを示しているのだ。などと考えてはみたが正味誰もそんなこと気にしないか」のようなことを考える。

    考えるだけ、考える。結局行動は変わらないのである。

    そりゃその中身を理解されないのが当たり前な行動を取っているんだが、その理解のされなさ加減が無性に悲しくなり、何かしら信じていたことも覆され、信じていた僅かの人間もいなくなり、結局誰からも孤絶して、最後の最後まで「本当のこと」を口にすることができない。

    人は、自己を伝えきれるのか。結局は孤独に生まれ、孤絶へと向かうのか。
    そんな問いを町田節で時代劇風に読みやすく書ききった名作だった。

  • 勢い的にはピカレスク小説。「河内十人斬り」の浪曲が元ネタ。木戸熊太郎の思弁的な思考ゆえの哀しい話。作者は熊太郎の思弁をページにスペースなしに語らせているのだが、これが読んでて面倒くさい。

  • 感想が書きづらい本。
    ページ数は半端ないが、先が気になって仕方が無くなる。
    熊太郎の破滅的な顛末を想像すると読み進めていくのが
    躊躇させられる…が止められない。
    江戸初期設定だが、現代の社会現象を交えた表現が
    時代の枠組みを超えていて終始飽きさせない。
    熊太郎の考えや思いがストレートに言葉では表せず、
    その為にトンチンカンな発言で人とのコミュニケーションが上手くいかないという破滅へ向かう一原因の性分は
    一歩間違えば誰にでもあることで、切なくなる。
    自分を変えていこうとする努力も結局実らず
    関わった人を憎悪するという最悪の循環で自分を表現するしか
    なくなってしまった。
    読み終わった後は虚脱する。

  • 河内十人斬りという実際に起こった事件をもとに、主人公の熊太郎の心情を描いている。

    自分の中にある気持ちをうまく言語化できない熊太郎がだんだんと社会からはじかれていくさまが、事実そのようなことがありそうだと思わせる。

    自分の気持ちをわかってもらえないだろうという絶望は人をやけっぱちな気持ちにさせるのかもしれない。また、自分の気持ちがうまく言語化できないということは往々にしてあることで、熊太郎ほどではないにしても、口にした途端それが嘘であるかのような薄寒い気になるのは誰でもあることなのではないだろうか。

    自分の気持ちを言語化できない、してもわかってもらえない、言葉の通じなさを感じる者達がドロップアウトしていく者達の共通項とは言わないまでも、そういう感覚を持つ者が一定数いるのではないか、そしてそれを押し殺しつつ生きている者もいるのではないか、それを無視して生きる、無視して生きることに慣れきってしまっているのではないか、などと深く考えさせられてしまう。

全230件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田康の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×