四十一炮〈下〉

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著者 : 莫言
制作 : 莫 言  吉田 富夫 
  • 中央公論新社 (2006年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120037122

四十一炮〈下〉の感想・レビュー・書評

  • 食肉加工を専業とする「落とし」の村で生まれ育った羅小通(ルオシャオトン)を主人公とする物語。一炮から四十一炮まで41パートに分かれているが,各パートの中でも主人公が10年後に「和尚さま」を相手に語る部分と,10年前の幼少時代の話が並列しており,特に前者は幻想的でどこまで本当でどこから嘘なのかも曖昧な形になっている。

    幼少時代のストーリーは莫言らしい土俗的なものだが,上巻では特に「野生ラバ」おばさんと父親が駆け落ちした後,母親と貧乏暮らしする話が中心。突然父親が「妹」を連れて帰ってくるあたりから話が急展開を始めるが,上巻はそこに辿りつくまでがちょっとまだるっこしい。

    下巻は主人公が「肉」と会話できるようになり,幼少期のストーリーは俄然面白くなってくる。一方で10年後の方はエロチックな妄想も増えどんどん訳がわからないことに。

    まあとにかく語りの面白さでは右にでるものがない小説。百聞は一見にしかず。読むしかない。

  • 舞台は中国。壊れかけたお社の中で、今は落ちぶれた主人公が、和尚を相手に子供時代の身の上話をする、と言うのがこの小説の体裁。

    主人公は、村中が屠殺(差別用語として使っているつもりはありません。念のため)を専門にしている村に生まれ、肉をこよなく愛して育ちます。浮気をして家を出た父親、肉料理の名手であるその愛人、後に残った肝っ玉母さん、主人公に眼をかける村の実力者、と個性的で魅力ある人物がたくさん出てきて、善悪も愛憎も一筋縄ではいかない関係を繰り広げていきます。

    この昔語りに、「現在」の主人公が挟まるのですが、今は大人のはずの主人公の語り口は子供のころと変わらない。描写される状況も、幻想的だったり、主人公が知るはずもない過去の話だったり、虚実ないまぜです。

    そもそも一番初めに「おいらの話は『ほら』じゃない」って書いてあるくらいのほら話。ほら話って楽しいよね?

    ぐいぐい引っ張っていってくれる語りについていけば、「うおー、おもしろかった!」と言って読み終われるような本です。初期の作品でガルシア・マルケスに比べられたことがある人みたいですが、それも納得。

    舞台が中国で食肉文化が描写されるので、犬とかロバとか猫とかの肉が出てきて、ちょっと食欲減退な感じですが、そんなに残酷なシーンはでてこない、と思います。でも繊細な方だと違うのかな…。まあ人間生命を食べずには生きられないわけだし。

    肉が傷まないようにホルマリンを注入しちゃうとか、「中国の食品やばいよ!」みたいな旬な題材もでてきて興味深いんですが、それが吹っ飛ぶような濃い語りでした。主人公が子供だからか、主要モチーフが食と性だからか、善悪を吹っ飛ばすような異様な逞しさがあるんですよね。大陸だからかしら(←島国の人の偏見?)

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