ミーナの行進

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著者 : 小川洋子
制作 : 寺田 順三 
  • 中央公論新社 (2006年4月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120037214

ミーナの行進の感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んだ小川さんの本を一冊一冊思い出すと、全てに柔らかい光を感じる。少し冷たかったり、朝の少し青みがかったようだったりなど。
    この本は夕暮れ時の光の印象。
    読みながら何か起きるんじゃないか、はらはらしていたけれど、全て流れのままに解決していた。ページを捲りながら、どうかこの物語が終わらないで欲しいと思っていた。でも終わりは来る。でも確かにそこにちゃんとある。
    静かで大きな盛り上がりは無いかもしれないけれど、それが人生なのかもしれない。私たちは淡々と、でも悲しみや喜びを感じながら生きている。楽しかったあの頃には戻れないけれど、過去の思い出は生きてきた証で、そしてこれから生きていく支えになるのだと思う。戻れないからこそ眩しくて切なくて大切になる。
    あと三十年経って読み返して見たい。私はどうなっているだろう。

  • 豪邸での夢のような豊かで優しくてときめきに満ちた日々。
    とんでもなくセレブな人たちなんだけど、なぜか居心地のよさを感じてしまうのは、
    みんなユニークでどこかしら寂しさを抱えた人たちだから。
    この人たちの温かさに癒され、この独特の世界にどっぷり浸れた。
    最後の方はもうすぐ終わってしまうキラキラした生活を名残惜しむように読んだ。
    終始儚さとノスタルジックを感じさせる文章にこの家の悲しい終焉を想像しながら読んでいたけれど、
    最後は爽やかな読み心地。

  • 小川洋子さんの言葉で語られる芦屋の洋館の日々は、一つ一つが大切な宝物のよう。これと言った山場がないので上り詰める感覚はないけれどじんわりと余韻が残ります。

    特にマッチ箱の物語の美しさ。シーソーする象や、タツノオトシゴや星を集める少女のお話の完成度の高さ。

    他の作品同様、どこか陰がある儚い世界観なので病弱なミーナの身によからぬことが起きるのではないかとハラハラしながら読み進めたけど、危惧した展開にはならずホッとした。

    コビトカバの背に乗って登校していた痩せっぽちの少女は、自分の足でしっかりと踏み出していける大人になれたのだなぁ。

  • 10年以上変わらなかった、大好きな本ベスト3に割って入った1冊。

    死や喪失の匂いにむせ返るような小川洋子さんの作品の中では異彩を放つ物語です。

    他の小川さん作品に登場していたら、絶対に途中で儚く亡くなってしまいそうな病弱なミーナ、学校まで歩いて通えずに、コビトカバのポチ子に乗って登校していたお嬢様の彼女が、いろんなものを喪いながらも、自分の選んだ道を生き生きとしっかり歩ける女性に成長しているラストに感動!

    表紙をはじめ、中のイラストも、本の背表紙からマッチの意匠に至るまで、お話にちゃんとリンクしていてすばらしいので、これから読まれる方はハードカバーで読むことをおすすめします!

  • 従兄弟のミーナの住む芦屋の家に、居候することになった主人公の朋子。10代の女の子2人の交流と成長を描いているのですが、芦屋の家に住む人たちの、お互いを思いやる温かい空気に包まれた物語です。

    ミーナと朋子の2人がはまる、男子バレーボール。舞台は1972年ミュンヘンオリンピックです。
    喘息もちで身体の弱いミーナの、空想バレーでは、憧れのセッター猫田選手の美しくて謙虚な動き、バレーボールの奥深い魅力が、小川さんならでは、美しく表現されています。
    そしてドイツ人のローザおばあさんが、主人公朋子の名前に使われている「朋」の漢字について語る台詞が印象的。
    「同じ大きさで、上と下じゃない。横に並んでる。そこがいいのね。平等なの。一人ぼっちじゃないの」

    芦屋の家で暮らす人たちの、お互いを思いやる優しさやあたたかさが、静かに心に響く一冊です。

  • 主人公・朋子は家庭の事情で、ミュンヘンオリンピックの年の一年間、芦屋の裕福な叔母の家で過ごす。そこには一歳年下の従姉妹、ミーナがいた。 小学校の卒業式を終えた翌日に1人で新幹線に乗り、岡山から神戸までやってきた朋子。父を病気で亡くし、残された母と娘1人だったのだが、これからの生活のため、母が一年間だけ東京に洋裁の修行に行くことを決意したゆえだった。

    何年かぶりの再読です。
    初読時には、ゆったりした文体の中にどこか哀しみが感じられ、何か悪いことが起きるのではないか、(従姉妹が意地悪だったら? 喘息に苦しむミーナが儚くなってしまうのでは? 火事で家が焼けてしまうのでは? 海水浴に行って叔父さんと従兄弟が溺れてしまうのでは?などなど)と、先周りをして心配してしまい、終始、ハラハラしていたような気がするのですが、今回は、突然、とんでもないお金持ちの家に住まいすることになった少女の素直な気持ちにしっくりと寄りそいながら楽しんで読むことができました。

    ミーナは、ドイツ人のお祖母様を持つ、美しいクォーターの女の子。血管ばかりか、その中を流れる血液さえ見えるような白い肌、と朋子によって描写される佇まい、そして、病弱なゆえに小学校までの道のりをコピトカバのポチ子に乗って行くという、童話の世界のような、また、別の見方をすれば、人と違うことをしても気に病まないという気持ちの強さが深く心に残る女の子です。

    朋子とミーナはとても良い友だちになり、特に、朋子は年下の彼女から大きな影響を受けます。
    マッチ箱集めに情熱を傾けるミーナ(そのマッチ箱を持ってきてくれる“フレッシー”の配達員の若者との淡いエピソードも好きでした。)が、その絵柄に合わせて紡ぎだす短いお話の数々。森田・猫田・大古・嶋岡らがいた時代の男子バレーボールに熱中する様も、同じ時代を生き、同じ試合に声援を送った身として、不思議なくらいにあのころの匂いや色が蘇る思いでした。

    朋子から見るミーナの家族はみな好ましく、素敵な人たちではあるのですが、優しくハンサムな叔父さんは別に家庭を持っているらしく、叔母さんは小説でも新聞でもチラシでも、と印刷されたものの校正に一日の多くの時間を費やしているのが哀しい・・。そして、そんな中でも(たぶん)意識して穏やかに暮らしてくる家族を、途中からの同居人として心の中でまっとうな感情を吐露している朋子。


    このお話は、一年間の同居から三十年後に朋子から語られているという趣向のため、時に大人の視点が入り、その整理された気持ちがいい具合に読者に落ち着きをもたらしています。

    一枚の美しい絵のような家族にも、もちろん変化は訪れなければならない。人と人とのつながりや状況は変わっていくものなのだなぁ、と感じさせられつつ、それは悪いものではないのですよ、と優しく教えられたようなお話で、うん、やっぱり小川洋子さん、好きだなぁ、と改めて思わされました。(*^_^*)

  • これは私の生まれる2年前、1972年に、
    事情があって芦屋の叔母の家に預けられた
    中学生の女の子朋子が経験した1年間のお話。

    そこには、自分より一つ年下の病弱の美少女ミーナ、
    ドイツ人のおばあちゃん、
    ハンサムな叔父様にどこか寂しげな叔母さん、
    ごはんの支度をしてくれる米田さん、
    木の手入れをしてくれる小林さん、
    と、名前からして仕事がイメージしやすい
    お手伝いのおばさんおじさん。
    そしてコビトカバのポチ子がいた。

    物語の始まりで、大人になった朋子は、
    「もうこの家は跡形もないし、
    大分様子は変わってしまっているけれど・・・。」と
    読者に向かって語りかける。
    「でも、だからこそ私の心の中には
    このお屋敷で愛しい人達と過ごした一年間の思い出は
    いつまでも生き続けているのよ。」と。

    大切な思い出ってきっとそんなものだ。
    現在、その当時の面影は全く失われてしまったとしても、
    大切な人達と過ごした時間は永遠に生き続けている。

    その思い出の中に入っていった時、
    そこにいる人達はいつだって、
    何事もなかったかのように、
    「あら?そこにいたの?」
    と温かく自分を受け入れてくれる。

    現在の時間の中で、
    懸命に前へ前へと進む事も大切だから、
    いつもそこに行こうとはしないけれど、
    ふと懐かしさが胸をいっぱいに満たした瞬間、
    気がつけば、自分はその思い出を訪問している。
    そんな思い出の一時、
    愛しい人達と過ごした時間は、
    短くても長くても自分にとっては宝物なのである。

    寺田順三氏の、「ヨーロッパの子供達が暖炉の前で聞く、
    アンデルセン童話」などをイメージさせるような、
    温かみ溢れる挿画も大変素晴らしく、
    小川洋子さんの創り出した
    愛らしい二人の少女の心の中の世界を
    更に膨らましてくれる。

    そうそう、この「ミーナの行進」は、
    子供の頃読んだアンデルセン童話集のような物語。
    単純なハッピーエンドでは終わらない、
    時にちょっと哀しかったり切なかったりする、
    いくつものエピソードがまとまって
    1冊の本が出来たような感じ。

    全てを読み終えた時、この物語は、
    既に遠い時の彼方にある「喪われた楽園の物語」で、
    懐かしさと共に少しの寂しさも感じる。
    しかし、この物語で描かれる思い出達は、
    少女ミーナが灯したマッチの火のように、
    いつまでもこの物語の登場人物と私達読者の心を
    優しく照らし、ぽかぽかと温めているような、
    そんな気持ちにしてくれるのである。

  • カバに乗って通学する少女。誤植を探すおばさん。図書館のとっくりさん。マッチ箱に秘められた数々の物語といい、この人の本は隅々まで、どうしようもなく好きだ。絵本のような装丁も挿絵も、とても好み。

  • カバに乗って通学する小学生ってインパクト大だわ〜
    他にも心をくすぐられるアイテムの数々。

    学生の頃の濃密な一年間は大人になっても忘れられない大切な思い出。

    小川さんの作品の中では好きな感じでした♪

    途中カラフルな挿し絵が素敵です☆

  • ヌレッシーのごとく爽やか

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