怪力乱神

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120038570

作品紹介・あらすじ

怪異、暴力、乱倫、神秘…中国古典に封じ込められた奔放な想像力と世界観を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  •  必ずしも妖怪や怪談の本ではない(出て来ないわけではないが)。人体、医学、動物、性と復活、宇宙を扱う章に分け、主に古代中国の文献からエピソードを拾い上げ、時には日本や西洋とも対比させる。
     著者はあとがきで「怪異譚に通底する世界観や思考法を取り上げた本」というが、本書を通読しても一貫した思考法というようなものはあまり伝わってこない。貶しているつもりはない。文中、性に禁欲的な中世キリスト教と割と寛大な古代儒教、また生物の存在の連鎖について人間を頂点に下方に伸びるキリスト教的思考と上下を付けず水平に繋がる東洋の思考、をそれぞれ対比させる。一貫した原則のないふわっとした思考、それこそが古代中国の怪異譚の思考ということなのかもしれない。

  •  中国の明清時代に「小説」というスタイルの文学が流行る。小説というのは現代日本でいう「小説」とは意味がすこしずれている。明清期の「小説」とは、「大説」(=孔子の大切なお言葉)の対概念であり、平たくいえば、孔子が言わないような「つまらないお話」ということである。ちなみに清代には『子不語』(「孔子が語らないこと」の意)というタイトルの書物が出ている。

     では、孔子が語らないこととは何か。それは論語のこの一節を読めばわかる。

      子、怪力乱神を語らず。

     孔子はホラー、オカルト、バイオレンス、エログロのような話はしない、というのがこの一節の意味。(神仙思想のようなことなど、実際には語っていると思うが。)

     加藤氏の本書は、中国古典文学を紐解き、魅力的な怪力乱神のお話を紹介していくというものである。
     出だしはかなり面白かったが、途中から類書のごとく雑念ととりとめのない話をしているような気がしてきて、最後には飽きてしまった。

    魅力的なお話もたくさんあります。漢籍について雑多な知識を蓄えたい人はご一読を。

  • 怪異、暴力、乱倫、神秘…。孔子が正面きって語ることを避けた「怪力乱神」の世界も、見方を変えれば、豊かな発想の宝庫である。中国古典に封じ込められた奔放な想像力と世界観を読み解く。(TRC MARCより)

  • 中国古代の孔子が語らないといった怪力乱神について語ったもの。
    こういうものにありがちな上辺だけを掬って適当に纏めたものとは違い、その根底にあるものまで考察されていて素晴らしい。
    漢字の字源で藤堂明保説と白川静説の二つを併記してあるのも好感が持てる。

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著者プロフィール

1963年生まれ。明治大学法学部教授。専攻は中国文学。主な著書に『京劇――「政治の国」の俳優群像』(中央公論新社)、『西太后――大清帝国最後の光芒』(中公新書)、『貝と羊の中国人』(新潮新書)、『漢文力』(中公文庫)など。

「2023年 『西太后に侍して 紫禁城の二年間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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