彫残二人

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著者 : 植松三十里
  • 中央公論新社 (2008年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120039768

彫残二人の感想・レビュー・書評

  • 林子平とは実在した人物なのだろうか、と思いながら最後まで読み通す。どうやら、実在したようである。
    創作と史実の区別はつかないが、『三国通覧図鑑』と『海国兵談』の著作は存在したのであろう。本書で描かれた林子平にはそれほど特筆すべきエピソードがない。なににも引っかからなかった印象を受けた。ただ、それと対照的に著作は尖がっていて輝いていた。先見の明がありすぎる著作は幕府を恐れさせ、老中松平定信はなんとしても隠したがった。そして、いざ彼の予言が起こると、多くの人々が彼の著作を求めた。その最中、子平はなにも知らず、失意のまま座敷牢の中で五十六年の生涯を閉じる。
    いまにも通じるエピソードに思えた。いたずらに危機感を煽るべきでないと口をつぐむメディアと幕府の立場が重なって見えた。『海国兵談』の訴える危機は今の日本にも通じるものだと思った。また、どのような発言も価値があり伏せるべきではないと感じた。

  • 2017/3/21
    日本の歴史の中には、こんな立派なことを成し遂げたのに理解されず、無念のまま死んでいった人がどれほどいたのだろう。
    その人たちの偉業が今の世の中の礎となったことは間違いことだ。やはり私たちは先人を敬い生きていかなければならない。
    私も最後、無念の涙がでました

  • 林子平の自伝的小説はこれが始めてでは。作者も「風雲児たち」は参考にされたのかな。

  •  江戸中期、ロシア南下の脅威と海防の必要性を説いた『海国兵談』の著者・林子平。それを不穏文書として弾圧しようとする幕府。版木を抱えて女版木彫師・お槇と二人、逃避行に出る。命にかえても『海国兵談』を世に送り出すために。林子平の思想と波乱万丈の生涯を描いた力作。実に面白かった。兄との確執、出版元、彫師たちとの交流。仕事に対する矜持、職人気質。女彫師との愛。さらっとした平易な文章で綴られた彼らの姿に何度も胸を打たれた。現在の日本の危機管理意識にも疑問を投げかけるような作品だと感じた。「彫残」とは「いたみやぶれる」という意味。

  • お昼にそばやに行こうと思い立ったのですが「読み本」が手元にない!
    図書館に行って、美人の司書さんに
    「いいところ入ってます?」
    と聞いたら、本書が差し出されました・・・今、登録したばかりの本です
    その後あわてて、蔵書印を押していた(笑)
    林子平が書き表した「海国兵談」出版時の迫害と彫師のお槇との愛の話
    お槇・・・思わず惚れますいい女(名前がいいですね)

    都合の悪い事を書き表す事で、民衆を惑わすと出版差し止め
    それを、郷里の仙台まで逃げ隠れて作成し、自主出版した子平
    その「版木」を守るために自ら喉を彫刻刀で突いて自害したお槇
    兄の下で座敷牢で生涯を終えた子平の正しさは、その後のロシアの南下や


    ペリーが小笠原諸島の領有を主張したとき(すでに移住し始めていた)
    フランス語に翻訳された書物を幕府が提示
    そこには、延宝三年の小笠原調査と「此島大日本之内也」と祠を建てた
    記事があり、この事実にはペリーも諦めざるを得なかった
    この書物が「林子平著:三国通覧図説」であり、その後「林子平」の名前が
    知られ始め、「海国兵談」の復刻版も出されて、60年後の幕末諸大名や
    勤皇の志士達に大きな影響を与えた

    うーん、学校でこんな習い方しなかったな

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彫残二人の作品紹介

林子平は女彫師のお槇とともに、老中・松平定信の追っ手から逃れ隠れて『海国兵談』の版木を彫り続けるが、お槇を連れた逃避行は日ごと過酷なものに…。二人の魂が彫り込まれた版木の行方は。気鋭が贈る感動の書き下ろし歴史小説。

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