エリザベス: 華麗なる孤独

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (612ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120040290

作品紹介・あらすじ

英国国教会の確立、弱小国の防衛戦略、臣下の活用といった統治の実際から、人文主義への深い造詣や、数多の求婚を退け独身を貫いた私生活の詳細まで-父王により生母を断頭台に送られた幼女が、やがて時を味方につけ、十六世紀ヨーロッパに威風を行き渡らせる宿命の足どりを、丹念にたどる。

感想・レビュー・書評

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  • [図書館]
    読始:2011/11/28
    読了:2011/12/2

    分かりにくい…1544年に王位継承権が復活されたんでしょ?
    でも、1542年のキャサリン・ハワード処刑時にはエリザベス「王女」と書いている。称号だけ先に復活したってこと?

    「女性の王位継承は認められていたが、それまでに女王は一人も存在しなかったため、ヘンリー8世は男児をもうけて王位を継がせねばと焦った」という記述について。ヘンリー1世の娘マティルダは即位していないから正式な女王ではないと見なしているということか。注記があったらよかったのに。

    容姿の描写が多いが、人物の肖像画も一緒につけてくれたらいいのに。

    歴代王妃は紋章とモットーを持つのか。

    メアリーとエリザベスの王としての資質の差は、教育にあった。
    エリザベスの教育カリキュラムは男性と変わらず、雄弁術なども含んでいた。教育係アスカムは「勉強は楽しんですべきもの」との信念を持っていた。
    対してメアリーの教育係ビベスは、女性は寡黙で従順であるべきで、人を導くべきではない、という伝統的キリスト教価値観に基づき、メアリーに講義中の質問は禁じ、彼女が祖母イザベルと母キャサリンから受け継いだ弁論の素質を押さえ込んでしまった。

    分かりにくい…キャサリン・パーが逮捕されそうになるくだりが何度読んでも分かりにくい。なぜ逮捕されないといけないのかが、もやもやなまま、やたら長い引用が繰り返し行われる。「信仰」という日本人には実感しづらい理由なので、もう少し字数を割いて説明がほしいと思った。

    間違い。「レディ・ジェーン・グレイの処刑」の作者はドラクロワじゃないぞー。ドラローシュ。

    フェリペはスペイン提督である妹フアナと頻繁に書簡をやりとりし、スペインを遠隔統治。父とも通信を怠らなかった。

    エリザベスがメアリーの死と自身の王位継承を伝えられたとき「この瞬間をどれほど待ち望んだか」とあるが、今までそんな描写なかったのに急に出てきた。

    エリザベスのセシルに対する任命の辞がすばらしい。セシルがエリザベスの並ぶ者なき最側近としてその死まで仕え続けた事実と考え合わせると。

    p.219「わたくしはあなたを、枢密院委員及び国務長官に任命します。わたくしとこの国のために骨折ってください。あなたに関して、わたくしはこのように判断しています。あなたは、贈り物のために汚職にまみれることなく、国家に忠誠を尽くすと信じています。あなたはわたくしの意思に逆らってでも、国家のために最上と思う助言をするでしょう。わたくしが内密に知るべきことがあれば、わたくしだけに知らせるでしょうし、わたくしもそれをわが胸に秘めることを約束します。」

    事実はたくさん並べられているけれど、それに対する解釈(So What?)が少なすぎる…例えばp. 265、フェリペ2世が空っぽの国庫のため破産宣言し、そのために借入金の金利がはね上がり、金利を払うためのさらなる借金というスパイラル…というくだりなのだが、「1557年、1560年、1575年、1596年にも破産宣言をした」で終わっている。それがその後のフェリペの運命にどうつながっていったのか、が分からず、結局この記述は何なの?ということになる。

    文章も分かりにくい。p.236 「ヘンリー8世の姉マーガレットの孫にあたるスコットランド女王メアリー・スチュアートのイギリス王位継承権には一点の曇りもなく、1558年4月にフランス皇太子と結婚してからまもなく、フランス王アンリ2世に強要されてローマ教皇に圧力をかけ、エリザベスが庶子であることを全世界に宣言するよう懇願し、イギリスの王位を要求した」
    …主語なしのままこれだけダラダラ文を続けるのもすごいし、「圧力をかけて懇願」という意味不明な文もすごい。

    p.276 スコットランドの反乱貴族がいきなり出てくる。誰に対して?なにを理由に?反乱してるのかさっぱり分からない。そのため後に出てくる「マリー・ド・ギーズが反乱貴族たち一人ひとりを病室に招き…」というくだりの意味合いが分かりにくい。

    大使なんて単なるメッセンジャーだと思っていたが、偏った(誤った)状況認識と報告のために両国の関係を修復不可能なまでに悪化させることもあるのだなぁ…。デ・スペ…。

    躊躇しているうちに噂話はあっという間に広まる。ノーフォーク公爵とメアリー・スチュアートの結婚話。

    時代が下るにつれ、事実の羅列になってゆき、エリザベスがその中でなにを思っていたのかが分かりづらい。タイトルは「華麗なる孤独」なのに中身はエリザベスからぶれている。

    p.362 「一人の女性が多数の男性の強要にもかかわらず自分の信念を貫いたことは、16世紀という時代を考えると、ほとんど奇跡に近い」と書くが、なぜそれが可能だったのか?エリザベスの強さ?政治力?統率力?といった分析がない。

    分かりにくい…p.392 「イギリスは反乱軍を助けたかったのにカシミール将軍は争いをかえって悪化させた」とあるのに、その次の段落では「イギリスにとって幸いなことに、ファルネーゼが総督としてネーデルラント入りして反乱軍を次々鎮圧した」とある。
    反乱軍を助けたかったイギリスにとって、反乱軍が次々鎮圧されるのが「幸い」なの? 前もって知識がない人間にはさっぱり分からん。

    ドレイクの世界一周スペイン略奪によって1ポンドの投資が47ポンドになってかえってきた。
    セシルが、ドレイクからの贈り物を、「盗品をもらうわけにはゆかない」という理由で辞退したのが彼らしい。

    女王の寵によって高位に上りながら、女王を女と侮り増長したエセックス伯は破滅する。
    上の人間の言葉を無視して侮蔑の目を向けたりしたらダメだぁね…。自分も不愉快に思った相手に感情がまんま出てしまうから気をつけよ。

    アイルランドでさんざん女王の命令を無視したうえに何一つ功をなさず、女王の寝室に侵入し…ここまでやらかしても国民人気は高く、ロバート・セシルが黒幕だ、とセシルが叩かれちゃうんだなぁ。「人気」が政治的有能無能とは無関係ということを改めて感じる。


    伝記としては、あたった資料の膨大さ、記述の詳細さ、ともに素晴らしいと思う。
    もう少し、整然とした記述がされていて、図版も多く載せられていれば、書棚に常備するのだけどなぁ。表紙もきれいだし。

  • 一次資料を駆使したからといって、いい歴史が書けるとはかぎりません。その例が本書に該当すると思われます。基本的に、美樹子はエリザベスをどのように総括し、どう評価すべきなのか、自分でもわかっていなかったのではないでしょうか。エリザベスへの愛情は、いやというほどたっぷり伝わってきます。そういところは好感をもてます。ただ、読んでいて歯痒いのは、書き手の(かすかな?)混乱と迷いが、そのまま読み手に伝わってしまうことです。

    読者としては、エリザベスに振り回されるのはけっこうですが、著者にまでそうされると、ただ困惑するばかりです…。もちろん、書きながら考えるのがうまい人もいます。じっくり考えてから書く人もいます。どっちがいいとはいいませんし、それぞれの性格の問題でもあります。ただ、本書に関していうならば、私は落ち着いて読めず、予想より時間をとられました。

    あと気になったのは、エリザベスに関係する近いところの資料にばかり気をとられ、英国史全体、あるいは欧州史全体がほとんど視野にはいっていないのではと感じたことです。低地独立の推移など、かなり複雑ですが、ほとんどフォローしていないように感じます。こういうことは本文で言及せずとも、言外に伝わってくるものです。フェリペ二世に関しても、あまり考察されているとは思えません。そうすると、エリザベスの伝記としてはものたりなくなります。外交史の教養が、ストレートにでるのがエリザベスの治世です。美樹子はきっと、外交史には疎いのでしょう。

    と、ひどいものいいをしました…。が、ある読者がもしもこの本を手にとって熱心に読んではみたものの、頭のなかが混乱したとしましょう。そのばあい、読者の心がまえとか知性に問題があるのならまあ仕方ありませんが、書き手が混乱しているとすれば、読者も混乱してとうぜんです。その可能性を感じたので書いたまでのことです。他意はありません。。

    もっとも、そーかいの頭がメダパニにかかっていただけではないのか? という説もあります。有力説ではないことを祈っています…。

  • もともと興味のある時代ですが~
    ヘンリー8世のドラマを見ているので、特に興味が湧いてきました。
    ややこしい家系図も少しでも理解したいし。
    ヘンリーの6人もの妻もそれぞれに個性があったんだなあ。
    多感な時期のエリザベスは大変でしたね。
    ヘンリー8世の6人目の妻は結婚歴がある穏やかな大人の女性で、エリザベスにとっていい母だったそう。
    その義母もけっこうしたたか?ヘンリーの死後まもなく大貴族と再婚したのにはビックリ。彼女の没後にその相手はエリザベスと結婚しようとしたかどで大逆罪で処刑とは。
    ヘンリーとアン・ブリンはやはり強烈な個性がありますが、回りもけっこう負けていない。
    寵臣の権力争い、宗教の絡んだ対外戦争、つぎつぎに組んだり敵対したり反乱を支援したり…
    処刑された大貴族の多さに驚きます。血で血を洗う時代だったのですね。
    のらりくらりと縁談を引き延ばす工作も面白い。
    スペイン王フェリペは晩年の陰険そうなイメージが強いけど、若い頃には姉メアリ女王の愛する風采のいい年下の夫だったんですね。
    エリザベスは結婚はついにしませんでしたが、恋愛は意外に華やか。独身の女王が寵臣を持つと、相手が思い上がるのでこれも危険だったようです。
    エリザベスを破門した教皇が実は「女の身で、あんなちっぽけな国の君主が各国に畏れられるとは」とその政治力に舌を巻いていたという。
    育ち方の大変さも教訓になったのでしょうけれど、聡明さと使命感に感嘆。

  • まだ途中だけど、これ調べた人すっごい!
    すっごい詳しい。
    けど同じこと何度も書いてあるのに辟易してしまうかな。
    でも楽しいことは楽しい。
    エリザベスが一番好き。

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著者プロフィール

英国ケンブリッジ大学で中世英文学・演劇を研究。文学博士。神奈川大学名誉教授。著素に『マリー・アントワネットの宮廷画家』『図説ヨーロッパの王妃』『図説イギリスの王室』『エリザベス』など多数。

「2014年 『マリー・アントワネット ファッションで世界を変えた女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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