ジョージ四世の夢のあと - ヴィクトリア朝を準備した「芸術の庇護者」

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120040825

作品紹介・あらすじ

一九世紀前半、イギリスで摂政時代と呼ばれる時期があった。病で執務不能になった国王ジョージ三世に代わって、皇太子(のちのジョージ四世)が摂政だったためである。彼は、ナポレオン戦争後の国力疲弊の折でも、莫大な費用を惜しまずロンドン市街を改造、バッキンガム宮殿を現在の規模に造営し直し、大英博物館やナショナル・ギャラリーなどを整備した。そして、自ら選び抜いた美術品でそれらを飾っていった。ヴィクトリア朝でイギリスが真に世界の覇者となった背景には、この時代の基礎固めがある。放蕩三昧で評価の低い国王の事績を積極的に見直し、「ダンディの時代」の魅力を伝える一冊。

感想・レビュー・書評

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  • もっぱら稀代の放蕩者として言及されてきたジョージ四世の、都市整備・外交(栄典利用による)・文化芸術の庇護といった功績に光を当て、崩御の際には「タイムズ」にボロクソ書かれたという彼の再評価をめざした書。
    今までが今までだからということか、例のハチャメチャな一面にはほとんど触れずに「なかったこと」の勢いであり、下世話な話が大好きな身としては、特に前半「翼賛報道…?」と錯覚するような無味乾燥さを覚えた。清も濁も併せ呑んでの「公正な伝記」だとは思うが、そのあたりは「濁」一辺倒の既存作をどうぞということだと解釈すれば、潔いと言えなくもない。
    個人的な興味もあって、話題が建築(宮殿・都市・美術館)に振れがちだった前半は正直やや退屈だったが、勲章を(あえて言うなら)濫発しての平和外交に話が及ぶと、俄然面白くなってきた。これぞ「従来誤解されがちだった功績」であろう。
    さらに——「ジョージ四世の伝記」という主題からは、いささか外れるのかもしれないが——次代のヴィクトリア女王と王配アルバート、その子で生育環境がジョージと似ているエドワード七世、ヴィクトリアのごとく夫婦円満だったジョージ六世と、即位の経緯がヴィクトリアを思わせる現エリザベス二世陛下、さらにはまたまたバーディと同じ育ちを髣髴させるチャールズ王太子殿下…と生まれも育ちもそれぞれの後継者たちの、栄光あふれる仕事の陰にジョージの影響を読み取る終章は圧巻だった。
    次は「キャロライン王妃事件」を読む予定。かのお騒がせ選帝侯ゲオルク・ルートヴィヒから来たるべきウィリアム五世(予定)まで、まったくもって興味尽きない一族である。

    2011/5/13〜5/16読了

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著者プロフィール

君塚 直隆(きみづか・なおたか):1967年、東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。現在、関東学院大学国際文化学部教授。著書に『ヴィクトリア女王』『立憲君主制の現在』『ヨーロッパ近代史』『エリザベス女王』『女王陛下の影法師』『貴族とは何か』など多数。

「2024年 『君主制とはなんだろうか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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