数えずの井戸

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著者 : 京極夏彦
  • 中央公論新社 (2010年1月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (771ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120040900

数えずの井戸の感想・レビュー・書評

  • [再読] 2012年07月11日

    [再々読] 2013年4月17日


    なぜうらめしやとお菊さんがお皿を数え続けると言う怪談のお話になってしまったのか、そこを現実の出来事として怪異などとしてではなく書き綴られていて、すごくすごく切ないけどとってもステキなお話。

    「数え」「数えず」の交互の繰り替えしが催眠のようにじわりじわりとココロに深く重く、静かにどんどんと深い井戸に潜っていくような静かな狂気に時にぞっとしたり、時にココロを乱されたり。最初から最後までしっかりと京極さんの用意した仕掛けが施されていて、内容はもちろんだけど、京極さんの構成のすごさに改めて感動した1冊。

    人間の心の崩壊を切なく美しく昇華はさせない。死は死。罪は罪。崩壊は崩壊。一見殺伐としていて冷たいような思える事柄も、ちゃんとしたブレない論点で間違った正義をかざすことなく、しっかりと真理とたくさんのことを教えてくれたり、コトバにできなかった整理のつかない気持ちの収まりどころがみつかるというか。

    それぞれに抱える闇はそれぞれのカタチで。執着する、執着しない、数える、数えない。それぞれにまったく違う思考だけど。虚無感や焦燥感、恐怖を感じているその書き表しが少しずつ少しずつ沸点を上げていくような、じわじわと吹き零れていく展開が絶妙でラストは読んでいるというよりその場にいる、という感覚。

    映画の「ジョゼと虎と魚たち」で衝撃を受けたように、文章で初めてガラガラと音を立ててすべてが壊れていく有様を見てしまったというような、とても痛くするどく刺さるラストへの疾走。

    とてもとても切なくて苦しくて深く重い現実と、でもやっぱり人の業や愚かさ、残酷さとともにあったかさが存在していて、とても好きな1冊に。裏返しの空の星は3人にとって満ちた世界だといいな。

  • 読んだか読んでなかったか分からなくなって読んでみたら読んでた。
    何が悪いということもないのだけれども、結末は惨劇へ。
    ままならないな~
    吉羅のツンデレっぽいキャラと主膳のやり過ぎな執着っぷりが素敵でした。

  • このストーリーも“欠けている”けど、そこがいい 

  • 厚い本ですが、行間が広くテンポよく読めます。

    番町皿屋敷の物語。
    夜ごと数を数える声のする屋敷では何が起こったのか。憶測ばかりが飛び交う中、一つの真実を提示する。

    しかし、主膳はなにがそんなに気に食わなかったのだろう?自分の身分に対してか?上手くいかない現実に対してか?そこに謎が残る。最後多くの人間を斬り殺す彼の中の闇は深い。

    そして、どこか足りない菊。
    彼女がもっとしっかりして、真実を語っていたならこんな悲劇は起きなかった気がする。返す返す残念でならない。

  • 番町皿屋敷に住む人と、それを取り巻く人々と過去。
    いつも何がが足りない、十全ではないと感じて生きてきた当主。
    褒められるために生きてきた家来。
    考えすぎるがゆえに愚鈍にみえ、自分でも馬鹿だと思って生きてきた下働きの菊。
    己の才覚で手に入るものは必ず手に入れる出世頭大久保の娘。
    米をつくこと、数を数えることが生きる全てと思って生きてきた菊の幼なじみの男。
    生い立ちに不満がくすぶる当主の友。

    おもしろかった!
    額を真っ二つに斬られた吉羅はどっちに殺されたのだろう。

  • なんといってもページ数がかなりあるから読み始めるまでは時間がかかる。でもそこは京極ワールド、読み始めたら一気でした。何回数えても足りない。数えるから足りなくなる。そもそも数えられない。限界を知りたくないから数えない。私も数えるのやめようかな。

  • まあ、私、あの畳み掛けるように丁寧に丁寧に構築されるワールドの虜、とびきりの雰囲気を持つ厳選された語感の羅列がもう法悦・・・・ってな固定ファンの一人なんで。

    しかしまあ、いやあ、もう。これは。
    直球ど真ん中、京極節の正統派では。

    番町皿屋敷の焼き直し、なんですが。人物造詣がよくって。

    何でも持ってるのに強欲で得ても得ても足りないお姫様。
    罪人の娘で愚図で鈍間で莫迦で何も持たないお菊。
    前者が後者を妬み嫉み。
    後者が前者を哀れむ。

    京極初めての方でも、シリーズものより展開がシンプルなので、比較的読み易いかもしれません。

  • 欲しがりな登場人物たちが、足りない足りないと嘆き呻く話。「皆が足りないと怒るのは、馬鹿なあたしのせい」周囲の不平不満を一身に抱え込んで逝った菊。皿屋敷の怪談は「足りないと弱音を吐いていいんだよ/つらい時は人のせいにして良いんだよ」という、菊への慰めだったのかな。さすが京極さんの本。心の軋む、厭な音がする(^^;;。

  • 怪談再構成シリーズ3、番町更屋敷の話。長い。話がなかなか展開しなくて途中飽きる。

  • お皿が一枚、二枚・・・でおなじみお菊さんのお話。
    京極さんの本は久しぶりに読んだけど、やっぱりあの徹底した説明はすごい。物語のカタルシスに向けて、登場人物のその一つ一つの行動が意味を持っていると感じさせる。
    でも肝心のカタルシスの部分は生き残った徳次郎から語られるのみ。それすらも全てではなく、何があったかは読者の想像に委ねられるのだ。
    こういうの嫌いじゃない。宮部みゆきの火車読んだときみたいだ。でも!でもでもやっぱり読みたかったなぁ~知りたかったなぁ~と思う。
    京極さんの怪談解釈は嗤う伊右衛門が好き。

  • いやー流石の厚さ。ちょっと手にとるのを躊躇するも、
    久々にいってみるか、京極ワールド!と思い手にとる。

    しっかし、ホント、厚い。
    私は寝る前にベッドで寝っ転がりながら読むのが好きなんだが、京極さんのは絶対にそれはできない。
    腕が疲れるし、もしできたとしても、眠たくなって
    ひょいと手から落ちたときにかんっぜんに凶器になる。
    つーわけで、テーブルの上でがっつり読む。
    そして読み始めると、止まんないだわなあ、これが。
    厚いわりに、メインの登場人物ごとに、細かく区切りが
    ついていくので、長々しい感じがせず、どんどん読んでいける。それに、よくみると1ページの文字数はそれほどでもないのかも。なんといっても、この、語り口。
    いやあ、相変わらず、立て板に水のごとく。
    なんか、こう描かれている心情は気持ち悪い、とゆーか、どうも落ち着かない、とゆーか、うーん、なんといえばいいのか分かんないが、だが、その語り口は、非常に気持ちいいんだよなあ。さすが、上手いっ。とゆーわけで一気読みでした。

    で、作品内容ですが、番町皿屋敷、ですね。
    あの、有名な。いーちまい、にーまい、とゆーやつ。
    その怪談の奥になにがあったのか、世間に広がるいくつもの”お話”、その中のいろんな要素を全て入れ込んで、
    全く違うお話が語られていく様は、ほんっと気持ちがいいほど。
    しっかし、あれだけの地獄絵図になってしまったのは、
    やっぱ主膳だろ、と思う。お前が出張ってこなければ、
    それなりに、1つの虚を抱えつつも、青山家は
    やっていけたのではないか?うーん、それともやがてはくる破滅だったのか?
    まあ、最悪のキャスティングだったのは確か。

    そして、肝心の最悪の結末の部分はどうも霧がかっている。結局あれから菊はどうなったのだ?
    あのあとなにがどうなったら、菊を播磨が斬ることになるのだ??
    まあ、吉羅はよい、それはきっと主膳の仕業だろう、と想像はつく、が、菊は?
    どーも、座りがわるい、が、それがまた、魅力だともいえる。なにもかも、すっきりしっかり理解できないからこその、この、地獄絵図か。

    いやーにしても、やっぱ京極ワールド、おもしろすぎだわ。ちょいと、つかれるが、やっぱ好きだー。

    あ、それから、一番気になったのは、又一のことば。
    人は関わった人の数だけ己が増える。
    けだし、名言である。

  • 京極夏彦氏の作品久しぶりに読みました。この作品には妖怪、お化けは出てきそうで実はでてきません。出てくるのは、欲が突っ張っている訳ではなく、過不足ない家で育ったにも関わらずに、なにか足りない、全部あるのに足りないと思ってしまい、その気持ちを収めたくてすべてに興味をなくしつつある家を継いだ武士、彼の親が存命時からその家に仕えてきた忠義心のみで生きているようなまじめ一筋の男、主人公がぐれていた頃、町中で暴れていた頃に知り合ったごろつき、主人公に輿入れの話がある名家の娘などなど一癖ある引っ立ちが、家宝をめぐって引き起こすドタバタを描いた作品。無い物ねだりをする人間という生き物が引き起こす不毛な争い、今の時代にもあるだろうなあ。江戸時代から既に消費をすることで世の中を動かす形になってたんだろうなあ。
    ウルグアイの大統領のスピーチを思い出した。
    欲が世の中を動かす時代は危ういというお話でした。

  • 辞書並みの分厚さに一瞬怯んだが、文字大きめ&行間広め&余白広め(笑)意外と時間かからずに読めた。
    京極夏彦氏の解釈だと番町皿屋敷もこんな話になるのねといった感じかな。
    又市さんの登場も嬉しい(笑)

  • 〝番町皿屋敷〟をモチーフにした小説です。とはいっても、オドロオドロシイ怪談などではありません。物語の大半は、登場人物それぞれの心理描写で語り進められます。
    ここに登場する誰もが、心の中の何かが欠けていると感じています。虚無的で退廃的、厭世的で自暴自棄、自虐的であるのは、なぜ自分はこの世に存在するのか?生きることの意味とはいったい何なのか?ということの答えを、無意識に求めてしまっているからではないでしょうか。生きて、暮らしているだけで満ち足りていると思っている菊でさえ、何かが欠落してしまっているような気がします。自分を莫迦で愚鈍で、取るに足りない者だと思い込んでいるのも、実はそういったことから目をそらしているだけなのかもしれません。
    生きることの意味など、いくら考えてもわかるはずはありません。それは人知を超えたものだからです。たとえ答えを見つけられたとしても、所詮それは自分の思いつきでしかないのです。生きて、暮らしているだけで満ち足りている。莫迦だ、愚鈍だといわれても、余計なことは考えず、心底そう思えるなら、そんな幸せなことはないのですが・・・。

  • 『嗤う伊右衛門』は四谷怪談のお岩さんのお話でしたが、今回は『皿屋敷』のお菊さんのお話です。
    夜な夜な井戸から現れて、一枚、二枚、三枚…一枚足りない…という、アレです。
    伊右衛門同様、通説を取り入れつつ上手い具合にオリジナルに仕立てられています。
    欠乏感を常に感じている皿屋敷の主人の播磨。先を考えすぎるが故に”何も考えない”娘・菊。
    他にも様々な思惑を持った、もしくは思惑を欠いた人間が絡み、縺れ、朽ちて逝く。
    その中心には常闇の井戸。そして皿———

    京極作品の面白さはその独特の文体と言葉の重ね方だと思っているのですが、今回もどうして中々。
    京極作品ではお馴染みの小股潜りの又市さんも出て来ます。
    個人的に伊右衛門はギリギリハッピーエンドだと思っているのですが、今回は…バッドエンドだと思うな…
    誰も幸せにならず、なれず、なりきれず。ただ物語が残った。
    凄惨なお話ですが、それでも不思議と絶望だけではないのは京極マジックかもしれません。
    本自体はやったら分厚いですが、改行が巧みなので一度読み出したら止まりませんよー。面白かったです!

  • やっぱり文章上手。
    読みやすかった。
    悲しい話やったけど、陰惨な感じが日本の怪談って感じでよかった。

  • 発売後すぐに買った本なのに。
    なんでこんなに読むの伸ばしたんだろう。ほぼ4年前だよ!
    でも読み始めたら一気読みだった。
    こんなに厚い本なのに、すごく読みやすいんだよなぁー。
    京極さんマジック。

    いつも何かが欠けている気がする青山家当主、青山播磨。
    自他共に莫迦と思っている空を見るのが好きな娘、お菊。
    褒められたい一心の青山家側用人、十太夫。
    部屋住みの遠山主膳と青山家の中間、權六。
    お菊の幼なじみ、米搗きの三平。
    手に入る欲しい物は必ず手に入れる播磨の嫁候補、吉羅。

    6章ごとにこの順で主観が入れ替わり、話が進行していく。

    番町皿屋敷。
    面白かった!けど、お菊がいい子で最後がちょっと切なかった。

  • 少し期待しすぎたかな。覗き小平次や嗤う伊右衛門の方が好き

  • シリーズの他ニ作がとても良かったので、
    かなり期待していたのですが、イマイチだったように思います。
    まず頁数がかなり多いですが、
    数えるとか数えないとか、足りるとか足りないとか、同じような内容の繰り返しが多く、混乱しました。

    登場人物は、主人公であれ悪役であれ、どこか自分とかぶるような部分があり、親しみが持てました。

  • 番町皿屋敷をモチーフにした話で、巷説百物語の登場人物も出て来ました。
    嗤う伊衛門と同じ世界観の話です。
    番町皿屋敷ってオーソドックスな怪談なのだけど、見方一つでこんなにも変わるのかと驚きました。
    嗤う伊衛門で感じた事がそのまま蘇ってきます。

  • かの有名な怪談「番町皿屋敷」は諸説あるらしく、それを京極流にひとつの物語として構成したもの。主要な人物の性格や思いを丁寧に紡いでいく。事件の結末を知りながら、そこに至るまでのいきさつがどのように語られるのか、興味駸々であの厚さを一気に読ませてしまうのはさすがである。侍も町人もそれぞれに葛藤や思いがあったのだろうという作者の人間をみつめる目は一般的に時代小説にあまりないような気がする。

  •  数えるから、足りなくなる。それは、はかなくも美しい、もうひとつの「皿屋敷」。人口に膾炙し怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ第三作。

     かなり分厚く、片手で持つには重いほどの厚さの本です。「嗤う伊右衛門」、「覘き小平次」に続く怪談を題材にした作品の第三弾になります。

     怪談・番町皿屋敷を下敷として、「数えず」あるいは「数え」をキーワードに、各登場人物の視点で、各人の内心が描かれつつ各章が進んでゆき、京極流の番町皿屋敷が完成してゆく。

     人は何を数え、何を数えないのか、生きるうえで数えるとは何か、全きとは、足りないとは・・・等々、読み進みながら考え込んで、重くなってしまいます。が、読み進めることができなくなった頃にひとつの章が終わります。というわけで重さを引きずりつつもどうにか1週間弱で読了しました。

     「嗤う伊右衛門」では、悲しいほどに潔い生きざまを通した伊右衛門と芯の強い岩という二人の男女の純愛、悲恋に涙しました。
     唐沢と小雪主演の同名の映画も感慨深いものがありました。

     この「数えずの井戸」では、人間の内心にあるどろどろに接し、喘ぎつつ読み進みながらも、たしかにこの気持ち分かる!という場面も数多くありました。
     菊の潔さが好感です。

  • 又市達が出てくると思わなかったので、嬉しかった。きっと最後には菊達を助けてくれるに違いない、噂でけむにまいて逃がしてくれたんだろうと思っていたのにあんな最後だった・・・
    Mに借りていたんだけど、美しい装丁の本を自炊する時に心が傷んだ。

  • とっても分厚い本なのですが、わりとすぐに読めてしまいました。

    菊のようにまっすぐでありたいけれど、こういう人は、昔も今も、きっと生きづらい思いをしているんだろうなあと思います。

    本のデザインもおもしろいですね。

  • 「嗤う伊衛門」「のぞき小平次」と同じ江戸怪談シリーズの一冊なのだが、他のは少しは爽快感や仕掛けがあったのに、今回のはただ物哀しく、すっきりもしなくて一番面白くない。京極作品だから期待値が高すぎたのか。再読はしないと思う。

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数えずの井戸の作品紹介

数えるから、足りなくなる。それは、はかなくも美しい、もうしとつの「皿屋敷」。人口に膾炙し怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ第三作。

数えずの井戸のKindle版

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