告解者

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041495

感想・レビュー・書評

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  • 主人公は犯罪者の更生施設で働く若い女性、さくら。
    彼女のいる施設に、二人の男性を殺したという男、久保島が入る。
    二人の人間を殺した凶悪な人間かと思いきや、久保島は静かで理知的な人間で、さくらは彼の誠実な人柄に惹かれていく。
    一方、話の冒頭で一人の男が殺され、その男を殺害したという疑惑が更正施設のある男性にかかる。
    事件を通し、さくらと事件を追う刑事は出会う。
    事件の真相を探る内、疑惑は久保島に向けられてー。

    犯罪者の更生について、人を許すという事について考えさせられる話。
    ストーリー自体は設定の甘さが感じられるし、真相や結末もそれほど・・・というものだけど、物語の中で描かれる登場人物の心情とか、テーマについてはちゃんと読ませてくれる話だった。

    自分や自分の大切な人を傷つけられたり殺されたりした被害者の人にとって、加害者を許せ、なんて血を吐くほどの苦しみでないかと思う。
    それをテーマにした話はいくつも読んだけれど、答は出ない。
    だけど、この話は被害者が許すというよりも、加害者が許す、という形でそこをすんなりとこちらに問いかけ、自然に被害者に立場を置き換えて考えるという事をさせている。
    人を許さないという人生はこういう末路になる事もあるのだと見せてくれたという気がする。
    人を許すのは相手のためでなく、自分のためにするのだというのはよく聞く言葉だけど、それを物語を通して無理なく語りかけている。

    それと同時に加害者の現状や現実についても問いかけている。
    被害者にとってはいついかなる時も懺悔の気持ちをもっていて当たり前、と思うものだと思うけど、困窮して今日の住まいや食べるものを何とか確保しなくては・・・という状況ではその事で精いっぱいでそこまで思いが至らない。
    現実、人は生きていかなきゃいけない。
    それは犯罪を犯した人間も一緒で、その最低限の事が保障され、初めて被害者に思いをはせる事ができるのだ・・・というのは悲しいけれど確かにそうだろうと思った。

    この話は被害者、加害者、両方の立場からも描かれていて、中立な印象を受けた。
    過去にどんなつらい事があってもどこかで区切りをつけて、未来に向けて歩いてほしい、生きてほしいというメッセージがこめられた本だと感じた。

  • 犯罪者の更生とは。刑期を終えて罪を償うことで、それは赦されたことになるのか。何をもって更生と定義されるのか。復讐は歪んだ正義でただの自己満足にしか過ぎないのか。犯した罪の重さは見た目だけではわからない奥の深いものであること。難しい問題がさらに重くのしかかる。面白った。

  • 人の内面を中心にどんでん返しがあり、面白かった。更生とは、をメインテーマに、人間のあるべき生き方を考えさせられる。

  • 金沢が意外とガラが悪い土地柄というのを知った。
    息子達のしたことを察していながら、彼らをスペースシャトルに喩えた父親。悪い人ではないんだが、この父親にして、この息子や娘が出来上がったんだろう。
    久保島の亡くなった恋人の名前が深雪、彼を待つと決めたヒロインがさくら。冬から春。この命名に作者は希望を託したのだろうか。

  • 978-4-12-004149-5 277p 2010・9・25 初版

  • 構成保護施設の元受刑者と保護司の物語。暴走族の犯罪をクローズアップしている。
    犯罪者を物語の中心に置くのが大門の流儀。今回は殺人事件を巡って、過去の暴走族による婦女暴行事件で軋轢が生じ犯罪に至るケース。
    無期懲役刑ながらも仮釈放で施設に入ってきた久保島がキーパーソンだが、彼の裁判で真相が判明出来なかったのが疑問に残る。
    キリスト教の信奉者の物語でも有るので贖罪と大罪の告解が出てくるが、殺人についての生命軽視はまのがれ無い!
    作者の思い入れが深い作品と言えるだろうが、物語としてはもう一つか?

  • 何とレビュー数の少ないことか。あんまり人気のない人なのかな。薬丸岳と似たテーマだと思うんだけど。今作は更正保護施設の職員さんが主役。この人が頼りないわ、その割に自分で何とかしなきゃ、と勝手に動くわ、で全然好きじゃない。気持ちは分からなくはないけど。しかし、強姦ってほんと罪だよなぁ。殺人にも値するということをやってる側は全然意識してないってとこが問題だと思う。被害者と加害者で罪の重さが乖離しすぎているのだ。しかし、更正って何だろうとほんとに思う。罪を悔い改め、がんばろうとしている人もいる。そうじゃない人もいる。しかし、その罪がほんとに罪なのか。復讐でも人を殺めてはいけない。道理は分かる。牧野社長の怒りを肯定的にみるか、否定的にみるか、というのは考えさせられる。

  • 犯罪者の更生と被害者遺族の思い。更生施設近隣住民の気持ちも理解できるし…とても重いテーマなのだけど、物語としては読みやすかった。
    ただ冒頭の殺人事件の犯人が…なんか本筋からずれている気がする。ミステリーとしてはイマイチ。

  • 読み始めたのは今日じゃなかったか?あっという間に読み終わった一冊。この作者さんの話の登場人物、否犯人は、凶悪事件を起こしているにも拘らず何故か優しさを感じてしまう。紙一重ってことなのかな。

  • 津市芸濃図書館。

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著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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