優しいおとな

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著者 : 桐野夏生
  • 中央公論新社 (2010年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041501

優しいおとなの感想・レビュー・書評

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  •  15歳でホームレスのイオン。おとなを信じず、誰とも群れず、ただその日を生きる彼。優しくしてくれるおとなであるモガミを避け、自ら地上を捨ててアンダーグラウンドにもぐり、夜光集団の一員になろうとする。

     そして、そのイオンが最後に求めたものは、本当に単純なものだった。究極の平等とは、親の愛からの離脱・光の回避と言っているおとながいたけれど、そうなのだろうかと思った。

     イオンが最後に求めたもの、それは、おとうさんとおかあさん。

     人間は、何かにすがっていないとだめなんだと思う。そして、その姿は決して弱いものの姿ではないと思う。記憶をなくした鉄が、イオンを頼って、そしてイオンもそんな鉄を全力で守ろうとする。そこがよかった。

  • ストリートチルドレンのイオンが「優しいおとな」に出会い存在を認めるまで。世の中には「優しいおとな・優しくないおとな・どっちつかずなおとな」の3種類のおとながいて、どっちつかずのおとながいっちゃん多く、タチが悪い、なるほどなあ。なにかしら助けてあげたいという気持ちは持っていても、中途半端になってしまうことは多いわけで、ある意味それはとても残酷なことなんだろう。ほんとうに、だれかに寄り添うことができたら、寄り添ってもらえたら。けっきょくのところ、ひとはひとりで生きていくにはなにか心みたいなものを捨てるしかないのか。でもそれじゃ、人間にはならないんだろう。
    最後はきちんとしたハッピーエンドじゃないけど、それでもいいと思えた。

    (306P)

  • 15歳のイオンには両親がいない。
    数年前、施設を飛び出し都会の路上暮らしをしている。
    彼には両親の記憶はなく、あるのは施設で知り合い、リスペクトしていた双子の兄弟の記憶だけ。
    彼らはイオンにこう言った。
    「世の中には「優しくないおとな」と「優しいおとな」と「どっちつかずのおとな」しかいない。この中で一番やっかいなのは「どっちつかずのおとな」だ」と。
    イオンはその言葉を胸に刻んで、一人都会をさすらう。
    そんな彼に優しくしてくれる人が現れた。
    それはモナミという大学生で、彼と接する内にイオンはモナミが「優しいおとな」だと思うようになる。
    モナミによって優しさを知ったイオン。
    やがてモナミに見捨てられたと感じた時、イオンは地下に住むアンダーグランドの組織「闇人」になる決心をする・・・。

    今日ラジオの人生相談を聞いていると、「中学生の子供から暴力を受ける」という悩みの女性が相談をしていました。
    話を聞いていると、彼女に暴力をふるうのは子供だけじゃなく、父親もそうだし、義理の父母もそうで、子供が暴力をふるう時、彼らは止めるどころか笑っているという。
    それで「自分のどこが悪いのか知りたい」というのが相談の内容でした。

    父親のふるう暴力は警察を呼ぶほどひどいものだといいます。
    それでも彼女は自分が悪いのでは・・・と言う。
    嫁いだ上は離婚する気もないと言う。
    この人はとても心優しくていい人だと思いました。

    そういう人は「優しくない」大人の標的になってしまう。
    人をいじめたり、子供を虐待する人間は本質的に弱いので、自分よりも弱い立場の人、優しいけれど弱い人、自分に自信がない人を標的にする。

    だから優しいひとは強くないといけない。
    優しいだけではいずれ疲れてしまい、自分も誰かに優しくする事ができなくなるから。

    イオンの言う「優しいおとな」とは、優しいだけでなく強い人なのだと思う。
    モナミは小説の最後で自分の弱さやずるさを認める。
    それも強さのひとつ。
    優しさとは強さとセットだと私は思う。

  • 正直な感想を言うと、らしくない感じ。
    桐野夏生らしさというものが、あまり感じられなくて残念。
    全体的に非常に軽い為、読みやすいのだけれども、ある程度のリアリティも感じられる。
    娯楽小説として及第点の作品なのだけれども、満足できないのは、筆者が桐野夏生であるからに他ならない。
    もっと、苦しくてドロドロした作品が読みたかった。
    けれど、今までの桐野夏生作品にはなかった、ワクワクする気持ちが、優しい大人を読むことで湧いてきたことは特筆しておくべきだと思う。

  • 新聞連載だったそうだが、添えられた絵(スカイエマ)と文章に妙に想像力をかきたてられる。
    ちょっと先の未来なのだろうか、大人をまったく信じなくなった子どもたちがさまざまな集団で模索し放浪して漂っているこの世界。
    それは、大人たちもまた理想のコミュニティを追求するあまり、何かを見失ってしまった結果なのだろうか。
    主人公イオンが、澄んだ眼差しで、それが何なのかもわからないままに「家族」を求める姿が痛々しく哀しい。

  • 優しく在るコトは本当の強さ
    優しく在りたい

  • まあ、救いがなかった。錫や鉄と会えたあたりは良かったですが、主人公のイオンは結局拠り所のない生活で。私は最後は植物状態のまま死んでしまったと感じました。

  • 桐野夏生さんの本は2冊目。1冊目もなんとなくピンとこなかったが…。あさのあつこさんの「№6」を思い浮かべながら読んだ。なんとなく…SFっぽい感じがして。でも、最後まで読んで、参考文献を見たら!なるほど、そういうテーマだったのか!と…。(自分の読解力の無さにがっくりきた。かなり難しい話だったのね。)でも、最後の終わり方は好きだった。イオン、お父さんとお母さんが迎えに来てくれて良かったね。これで安心して眠れるね…。

  • 「優しいおとな」に、自分はなれるのかな。おとなを好きになれなかった過去の自分と、おとなになりたくない今の自分が、読み進めながら考えていました。

    感情って一回解放してしまうと恐ろしいね。感受性が豊かなことなのも大切だけど、気を強く生きていかなきゃいけない時は、どうなんだろう。

  • 桐野夏生さんが共同体の破壊の危機をテーマに読売新聞での連載に挑戦した「やさしい大人」を読了。まず舞台が渋谷から代々木公園辺りに設定されているが、スラム化した渋谷の街が妙に生々しい。オリンピックでリオのスラム街が取り上げられたが、日本もこのまま国が借金の額を際限なく増やし続け、格差が拡大して行くような政治が続いて行けばこの国のどこかにスラム街が広がってしまう恐れだってないとも限らないなあなどとちょっと暗い想像までさせられてしまう内容だ。新聞小説として書かれた小説なのでテンポ良く話が進み暗い話ではあるのだが桐野流の力でかすかな希望を随所でちゃんと感じさせてくれるので落ち込まずに読み進む事が出来る小説だ。たまに天童荒太さんの小説のように読みながらあまりに話が暗く自分を鼓舞し続けないと先に進めない物もあるが、そう意味では桐野夏生さんの小説では愛の欠乏についての警笛がならされていて反省はさせられるが、著者が絶望はしていない感じが伝わるので心が折れずに読みめられる。どの作品も安心して勧められるすぐれた作家ですね。

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家族をもたず、信じることを知らない少年イオンの孤独な魂はどこへ行くのか-。

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