- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120041501
感想・レビュー・書評
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桐野夏生さんが共同体の破壊の危機をテーマに読売新聞での連載に挑戦した「やさしい大人」を読了。まず舞台が渋谷から代々木公園辺りに設定されているが、スラム化した渋谷の街が妙に生々しい。オリンピックでリオのスラム街が取り上げられたが、日本もこのまま国が借金の額を際限なく増やし続け、格差が拡大して行くような政治が続いて行けばこの国のどこかにスラム街が広がってしまう恐れだってないとも限らないなあなどとちょっと暗い想像までさせられてしまう内容だ。新聞小説として書かれた小説なのでテンポ良く話が進み暗い話ではあるのだが桐野流の力でかすかな希望を随所でちゃんと感じさせてくれるので落ち込まずに読み進む事が出来る小説だ。たまに天童荒太さんの小説のように読みながらあまりに話が暗く自分を鼓舞し続けないと先に進めない物もあるが、そう意味では桐野夏生さんの小説では愛の欠乏についての警笛がならされていて反省はさせられるが、著者が絶望はしていない感じが伝わるので心が折れずに読みめられる。どの作品も安心して勧められるすぐれた作家ですね。
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2011/8
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読んだことがあったような気がしたけどなかったのかも。優しいおとなとは。
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114
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わぁホームレスの少年の話かぁ、きついなぁ。と思いながら読み進めていくと状況がどんどんエスカレートしていって、現代の東京がまるでマッドマックスの世界に。最近のこの作者の諸作は、結末にいくに従い、登場人物が平凡化していく感じのものが多いが、本作では、主人公の置かれた状態が状態だけにそのまま行ってしまった感が残っていて好ましく感じた。
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桐野夏生はどこに行くんだ。
近未来SF設定の渋谷で、過酷な状況を生き抜く児童ホームレスを描く。と思ったら、左翼的な共同体の実験の末路か。
主人公も含めたキャラに救いがない。
それでも桐野夏生なので面白いんですが。 -
公共制度や福祉が破綻した近未来が舞台であるが、妙にリアルなのは実在の名称が随所に書かれているからであろう。 こんな世の中にならないようにしていかなくては。
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深刻なテーマにしてはあっさりしてる感じ。
少年をターゲットにした小説っぽいかな。
でも現実にこういう子供たちいない事を願います。 -
日本の福祉システムが破綻し、スラム化したかつての繁華街〈シブヤ〉で生きる少年・イオン。希望なき世界のその先には何があるのか。〈解説〉雨宮処凛
家族をもたず、信じることを知らない少年イオンの孤独な魂はどこへ行くのか―。
孤独で他人に無関心だったイオンが、
鉄やモナミのおかげで
だんだん温かさや他人と関わることの尊さを徐々に芽生えさせていく…
イオンが死んじゃうのが悲しいけど内容としてはとてもよかった。
実際にあったのを元に書いてると知って驚いた