- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120041501
感想・レビュー・書評
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ストリートチルドレンのイオンが「優しいおとな」に出会い存在を認めるまで。世の中には「優しいおとな・優しくないおとな・どっちつかずなおとな」の3種類のおとながいて、どっちつかずのおとながいっちゃん多く、タチが悪い、なるほどなあ。なにかしら助けてあげたいという気持ちは持っていても、中途半端になってしまうことは多いわけで、ある意味それはとても残酷なことなんだろう。ほんとうに、だれかに寄り添うことができたら、寄り添ってもらえたら。けっきょくのところ、ひとはひとりで生きていくにはなにか心みたいなものを捨てるしかないのか。でもそれじゃ、人間にはならないんだろう。
最後はきちんとしたハッピーエンドじゃないけど、それでもいいと思えた。
(306P) -
近未来のお話❓こんな時代がやがて来るのかな?
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こんな小さなころからストリートチルドレンになり大人を信じられず生きてきたイオン。
彼が良い大人を信じられるまでには、つらい経験も人の死も最後には自分自身への苦しみを背負って生きてこなければならなかった。もちろん親がいないことや親からのネグレクト、虐待も大いにあるし、どこの国に行っても地球のどこかでこういう状況になっている子供はいる。それを自分たち大人が最低限に食いとどめること。そしてなにより、彼らに親がいなくても自分たちの経験と人とのつながりで、どこにだって誰にだってイオンのようになれるということを、今生きている子供たちに語り掛けているのかなぁと思う作品だった。 -
「優しいおとな」に、自分はなれるのかな。おとなを好きになれなかった過去の自分と、おとなになりたくない今の自分が、読み進めながら考えていました。
感情って一回解放してしまうと恐ろしいね。感受性が豊かなことなのも大切だけど、気を強く生きていかなきゃいけない時は、どうなんだろう。 -
桐野夏生さんが共同体の破壊の危機をテーマに読売新聞での連載に挑戦した「やさしい大人」を読了。まず舞台が渋谷から代々木公園辺りに設定されているが、スラム化した渋谷の街が妙に生々しい。オリンピックでリオのスラム街が取り上げられたが、日本もこのまま国が借金の額を際限なく増やし続け、格差が拡大して行くような政治が続いて行けばこの国のどこかにスラム街が広がってしまう恐れだってないとも限らないなあなどとちょっと暗い想像までさせられてしまう内容だ。新聞小説として書かれた小説なのでテンポ良く話が進み暗い話ではあるのだが桐野流の力でかすかな希望を随所でちゃんと感じさせてくれるので落ち込まずに読み進む事が出来る小説だ。たまに天童荒太さんの小説のように読みながらあまりに話が暗く自分を鼓舞し続けないと先に進めない物もあるが、そう意味では桐野夏生さんの小説では愛の欠乏についての警笛がならされていて反省はさせられるが、著者が絶望はしていない感じが伝わるので心が折れずに読みめられる。どの作品も安心して勧められるすぐれた作家ですね。
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桐野夏生はどこに行くんだ。
近未来SF設定の渋谷で、過酷な状況を生き抜く児童ホームレスを描く。と思ったら、左翼的な共同体の実験の末路か。
主人公も含めたキャラに救いがない。
それでも桐野夏生なので面白いんですが。 -
公共制度や福祉が破綻した近未来が舞台であるが、妙にリアルなのは実在の名称が随所に書かれているからであろう。 こんな世の中にならないようにしていかなくては。