アンダスタンド・メイビー 下

著者 :
  • 中央公論新社
3.59
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本棚登録 : 953
感想 : 174
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041686

感想・レビュー・書評

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  • ナラタージュを読んだ時点で、島本理生の長い作品はくどくて苦手だと感じていて、そのこともあって読む前から少し尻込みしてた。上巻の前半はなかなか読み進められなくて、だけど話が滑り出してからはどんどん読めた。話の流れが気になるというより、ごく普通の中学生がどんどん悲しみに暮れていって、それだけで島本理生の文章が活きて、美しかったから。ただ気になったのは、主人公の長い期間というか、時間の流れを追いすぎた所為で、携帯小説みたいな印象がずっとあった。作品の核を描くために必要だったとは言え、少し残念。島本理生のこの、仄暗い表現がなければ、嫌悪感しか残らなかったかもしれない。
    例のごとく、男の人に嫌悪感を抱いていてだけど惹かれるのは男の人で、女の子はいつでもずるくて弱くて、そういうのがあって、よかった。また、わたしのなかでつかみきれなかった言葉や、思っててもだれもわかってくれないって押し留めてた言葉が散らばってて、苦しくて嬉しかった。「どうか私だけの神様になって。私を許して。」ってさいごで。わたしのほかにもこんなこと考えるひとがいたんだ、って思った。だけど同時に本の中でさえ神様になってくれなかったんだから、ここでもきっと見つからないって突き付けられた。島本理生の作品に出てくる女の子はみんなわたしの破片のような気がしてしまう。救われないほうが安心するから、ハッピーエンドだともやもやする。よくない。

  • 人は誰でも大なり小なりトラウマのようなものを抱えていて、そのことに囚われながら、時にそれと向き合い、時にそれから逃げて、それでも懸命に生きている。
    記憶から消してしまいたい過去だってある。向き合わなくていいのならずっと目を背けていたいことだってある。
    そしてみんな心のどこかで“神さま”のような存在を探しているんじゃないだろうか。黒江のように。自分をこの世界から救い出してくれる誰かを・・・。
    救いだったのは、彼女の周りにはいつも誰かがいた。黒江は一人じゃなかった。人は一人では生きていけないというけれど、本当にそうなのかもしれない。でもそれに血のつながりなんて関係ない。血以上に濃くて確かなものはきっとある。

  • 面白かった。。こんなに過去に色々あった女のこでもこんなに頑張ってるんだって思うと今の自分が情けなく感じる。。明日から頑張ろう

  • 黒江がどん底まで落ちる過程と、そこから浮上していく姿がよめるのが下巻だった。
    彼女の境遇や身に降りかかった出来事はとても重たいことなのに、黒江がどこか淡々としているおかげでさらっと読めてしまった。
    2013.6.20

  • 痛い女の子だけど、結構いると思う。母親からの愛情って、本当はもっと欲しかったのに、という思いは大人になってから湧くものだとつくづく思う。すべてに共感できるわけではないけど、母親と娘との関係はかなり入り込んで読めた。

  • 君は男の人がいないとやっていけないのか。

    似たような事を言われたことがあったな・・
    無意識のうちに拠り所みたいに思わなきゃ生きていけなくなってた

    何をしても嫌われることなんて有り得ないと思える 神様みたいな人

    家族や友達なんかとは全然ちがう
    男の人だけが与えてくれる安らぎのような感覚

    彼女のように無意志にカラダを与えたりはしないけれど
    どこか似たり寄ったりな部分を垣間見て苦しくなった・・

    女の人というのは、たぶん僕らが思っているよりもずっと多くのものから傷つけられて、生きてる。
    これを言わせた島本さんがすごい

  • ああこんな話だったんだ~って感じ。島本さんらしさが伝わった下巻だったと思う。

  • どんなに時間がかかっても、きちんと向き合う黒江の姿に感動した。
    そしてそれを傍で支えてくれていた、かけがえのない人達。仁さん、綾乃さん、彌生くん。特に、仁さん。一番の魅力は、ずっと一つ屋根にいながら黒江に手を出さなかったこと。
    性でなみなみならぬ傷をおった黒江には、触れることより包むことが大事なんだと本能でわかっていたのか、ただ単に好みじゃなかったのか。
    多分両方。でも、愛がある。
    最後、黒江が旅立つときに、それぞれの大事な人たちがそれぞれのやり方で送り出す場面がとても印象的。
    島本理生さんは、コミカルもあればシリアスもある。この作品はわりとシリアスではあったけど、希望あるラストに救われた。
    ところどころでやっぱりクスリと笑えるセリフもあり。
    この作家さん、どんどんすごくなるな!と改めて感じた。
    次の作品も楽しみ。

  • 自分を取り戻す、ことになったのだろうか。
    ホラー要素が加わっているおかげで、全体が暗く不気味な雰囲気に支配されていて。
    整っているとは思わないけど、しっかりと引きずり込まれている。パワーのある文章なんだろう、と思う。

  • 直木賞候補作で手にした本だが上巻でガックリしたが、諦めず下巻も読んで大変良かったというのが感想です。次々に明らかにされていく黒江の過去。目も当てられない出来事がトラウマとなって苦しめていた黒江に「何とか立直ってと」祈る思いで読んでました。辛い過去を経験されてる仁さんや彌生君の存在があったからこそ、守られていたのですね。「どうか私だけの神様になって」の言葉だけが、ずっと残ってる。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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